(『天然生活』2025年1月号掲載)
家が喜ぶことをして味方になってもらう
「家に対してはいつも“ありがとう”という気持ちをもっています」という引田かおりさん。家が喜ぶことをすることが、ひいては家を味方につけ、パワースポットにすることだというのが持論です。
「人が住んでいない家って不思議と朽ちていってしまうでしょう? なぜだろうと考えたときに、日々手をかけられたり、暮らしている人の笑い声や話し声を聞いたりしながら、家は人と一緒に呼吸しているからだと思ったんです。家族のにぎやかな声をこの家が聞いて喜んでくれたらいいなと思います。帰って来たときにだれもいなくても『ただいま!』って言っちゃう、そうやって家を大切にして喜ばせていたら、家も自分を応援してくれる気がします」

夏は白一色だった寝室のリネン類を、秋冬は好きな色に取り替えて。「黄色とグレーの組み合わせが好き。寝室が落ち着いた雰囲気になり、見るたびに新鮮な気持ちになります」

部屋の一角には孫たちが遊ぶおもちゃ。「住み継ぐことになったこの家に、子どもの笑い声などが新たに響くようになり、家も喜んでいる気がしています」
8年前、中古住宅をリノベーションしたいまの住まいに移り住んだ引田さん夫妻。家の中と外に少しずつ手を入れ、心地よく暮らすための工夫をしていくうち、だんだんと「自分たちの家」になってきたといいます。
「意識したのは、開かれた住まいにするということ。もともとあった大きな門扉や門柱を取り払い、だれもが気軽に訪ねて来られるようにしました。家の周囲の植栽も整えたので、小動物たちもよく通ります」

窓の外には常緑樹の植栽が。緑も見えつつ、向こう側も見通せる程よいバランスで
常にオープンで、かつ清々しく整った家。それは引田さん自身の佇まいにも通じている気がします。日々忙しく過ごすなかで、どうやって心を整えているのでしょう。
「何よりも体を整えることが大事だと思っているので、メンテナンスを怠らないようにしています。体がゆがんでいると、考え方もゆがんだり、悪い方向へと向かったりしてしまいそう。だから心が落ち込んでいるときは散歩に出かけてみるなど、まず容れ物である体をケアしたほうがいいと思うんです。容れ物という点では家も同じ。ゆがみやよどみがあると、心も乱れて悪いものを招き入れてしまいそうなので、常にすっきりとめぐりのいい状態にしておきたいです」
体や家をていねいに整えていれば、自然と心も整い、物事がいい方向へと動き出す。晴れやかな引田さんの表情が、そのことを証明しているようです。

タオルを洗濯機に入れる前に、シンクをさっとふき上げる
〈撮影/柳原久子 取材・文/嶌 陽子〉
引田かおり(ひきた・かおり)

2003年より東京・吉祥寺で夫とともに「毎日の暮らしが少しだけ素敵になる」ものを提案する「ギャラリーフェブ」と、パン屋「ダンディゾン」を営む。近著に『日々更新。風通しよく年を重ねていくこと』(ポプラ社)。ブログ「ふたりの光年記」で日々のいろいろを発信中。
https://hikita-feve.com/diary/
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです





