(『天然生活』2025年3月号掲載)
小さな時間の節約を重ねて、大きな「豊かな時間」をつくる
「節約ってダイエットと似ている気がします。意識しすぎると、かえって逆効果というか……。無意識に工夫して、結果的に『節約になっていた』というのがハッピー。私の場合はまさにそうです」
むだを省きたいのは「もの」だけにあらず。「時間の節約」こそ、田中ナオミさんが大切にしているテーマです。
本人の言葉を借りると「時間にケチ」。暮らしのあらゆるシーンで、もっと「効率的」に、「同時進行」でできないか? と考えているといいます。
そうして、小さな時間の節約を重ねて、大きな時間をつくり、自分の好きなことをする時間にあてたいのです。
美術館でアートを堪能したり、仲間とおいしいものを食べたり、旅に出て見聞を深めたり、「インプット」の時間です。その時間が自分のポテンシャルを上げ、充実した仕事につながるし、よい循環を生み出すと考えています。

動線を考えて自ら設計したキッチン。少ないアクションで料理ができるように道具や器を配置しているので、時間の節約につながっている
ケチケチの先にあるもので、みんなをハッピーに
「ケチ」の先には「豊かな時間」あり。それを知っているからこそ、日々の暮らしでは徹底的にむだを省き、ここぞというときは気前よく。時間もお金もメリハリをつけて使うことが大事と話します。

本日の収穫。献立はとれた野菜から組み立てる
「家をつくる仕事でもメリハリをとても大事にしています。明るい場所と暗い場所、狭いと広い、低いと高いなどなど、落差が大事。そういう差がドラマなんですよ。素敵なギャップをちりばめて、暮らしのストーリーをつくっていくというのが、住宅を一からつくる面白さだと思います」

ベジブロス用のくず野菜ストック。「栄養もうま味もたっぷりなので、捨てるなんてもったいない」
つましく、質素を良しとするクリスチャンの両親の元で育った田中ナオミさん。そんな倹約家の両親でしたが、好きなことにはお金を使いなさいと、建築家になりたいという田中さんの夢を応援してくれました。
そういう恵まれた環境を自覚し、自分以外の人たちのハッピーのためにも動けることが、真の豊かさだと感じる今日この頃。
「家族や友人はもちろん、近い範囲の外にいる人たちのことも思いやり、ときには手を差し伸べ、環境にも配慮できる自分でありたい」
時間やお金を節約した先に生まれた「余白」があるからこそ。そんな「余白」を、世の中のハッピーのために活用していきたい、と考えているのです。

施主さん作、田中さんの好きな人がテーマのマトリョーシカ。「『ストーリーのあるもの』が暮らしを豊かにしてくれます」
〈撮影/星 亘 取材・文/鈴木麻子〉
田中ナオミ(たなか・なおみ)
設計事務所勤務を経て、1999年「田中ナオミアトリエ一級建築士事務所」を設立。「家づくりの会」会員、住宅医協会認定住宅医。「片づく」家事と収納の知恵について綴った『60歳からの 暮らしがラクになる住まいの作り方』(主婦と生活社)などの著書がある。
インスタグラム@naomitanaka_ntlab
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです




