• 生きづらさを抱えながら、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていた咲セリさん。不治の病を抱える1匹の猫と出会い、その人生が少しずつ、変化していきます。生きづらい世界のなかで、猫が教えてくれたこと。猫と人がともに支えあって生きる、ひとつの物語が始まります。猫の爪切りについて。

    猫の爪とぎ、どうしていますか?

    猫と楽しく暮らすために欠かせないことのひとつが、爪との付き合い方です。

    どれだけ言い聞かせても、猫は爪を研ぐ生きもの。壁や家具でガリガリと始まった音に、思わずため息をついてしまうこともありますよね。

    我が家では、保護したばかりの第1段階のケージに、必ず爪研ぎを置くようにしています。

    ごはん、トイレ、爪研ぎをセットにして覚えてもらう

    ごはんがあり、トイレがあり、そして爪研ぎがある。その環境を当たり前にすることで、「爪はここで研ぐもの」ということを、自然と覚えてくれました。

    おかげで、家具がボロボロになるようなトラブルは、ほとんどありません。

    それでも、爪は日々伸びていきます。

    先日、2歳になる男の子「コウ」が、首元が痒かったのか、後ろ足で強く掻きすぎてしまい、気づけば小さなおハゲができていました。

    爪切りの必要性を、改めて実感した出来事です。

    とはいえ、この2歳の三兄妹「コウ・ユキ・サチ」。

    自由奔放に育てた結果、以前のように夫と二人がかりで抱っこして、ゆっくり爪を切るという方法が通用しなくなっていました。

    画像: 首におハゲができてしまったコウ

    首におハゲができてしまったコウ

    爪切りは寝ている間に……

    そこで試してみたのが、「寝ている隙に切る」作戦です。

    眠っているところを起こさないよう、そっと手を取ります。

    寝ぼけている間に、パチン、パチンと数本。

    大切なのは、決して焦らないこと。一本切って目が覚めてしまったら、深追いはしません。また眠るのを待つだけです。

    それを繰り返しているうちに、気がつけば全ての爪を切り終えていました。

    これまでは、「二人じゃないと爪が切れない」「もし夫がいなくなったらどうしよう」などと、少し大げさな不安まで抱えていたのですが、この方法を知ってから気持ちがずいぶん楽になりました。

    最近では、二人がかりで神妙に構えるよりも、そばに来たタイミングで軽い雰囲気のまま一人でさっと切ってしまうほうが、猫にとっても気楽で、あっという間に終わるのだと感じています。

    「爪切りは、戦いではなく、日常の延長線上にあるもの」

    そう思えるようになってから、猫との距離が、また少し近づいた気がします。

    画像: 嫌そうな顔……!こうなったら今日はここまで。無理やり続けません

    嫌そうな顔……!こうなったら今日はここまで。無理やり続けません

    猫の爪を切るための、やさしいコミュニケーションのヒント

    ・無理に押さえつけず、猫のリラックスしたタイミングを待つ

    ・寝ているときや、うとうとしているときを狙う

    ・一本切れたら十分、欲張らない

    ・途中で嫌がったら、その日はそこで終わりにする

    ・「爪切り=怖いこと」にならないよう、淡々と軽い雰囲気で

    ・普段から手や足先にそっと触れる習慣をつくっておく

    画像: 寝ているときに切る

    寝ているときに切る

    爪切りは、何かを完璧にこなすための時間ではなく、猫と同じ空気をゆっくり味わうための、ほんのひとときなのかもしれません。

    寝息を立てる小さな体にそっと触れながら、今日も元気でいてくれてありがとう、と心の中でつぶやく。

    そんな静かな時間があるだけで、暮らしは十分に満たされていきます。

    爪を切り終えたあと、また丸くなって眠り続ける後ろ姿を見ながら、「まあ、これでいいよね」と微笑んで一日が終わる。

    猫との暮らしは、そんな小さな「まあいいか」をいくつも積み重ねていく日々なのだと、しみじみ噛みしめる毎日なのです。

    画像: 不満げだけど切らせてくれる全

    不満げだけど切らせてくれる全

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    画像: 猫の爪を切るための、やさしいコミュニケーションのヒント

    咲セリ(さき・せり)
    1979年生まれ。大阪在住。家族療法カウンセラー。生きづらさを抱えながら生き、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていたところを、不治の病を抱える猫と出会い、「命は生きているだけで愛おしい」というメッセージを受け取る。以来、NHK福祉番組に出演したり、全国で講演活動をしたり、新聞やNHK福祉サイトでコラムを連載したり、生きづらさと猫のノンフィクションを出版する。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日」(KADOKAWA)、精神科医・岡田尊司との共著『絆の病──境界性パーソナリティ障害の克服』(ポプラ社)、『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました──妻と夫、この世界を生きてゆく』(ミネルヴァ書房、解説・林直樹)、『息を吸うたび、希望を吐くように──猫がつないだ命の物語』(青土社)など多数ある。

    ブログ「ちいさなチカラ」



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