春を待つ季節。猫との過ごし方
二月は、知らず知らずのうちに疲れがたまりやすい季節。寒さの底にあり、春を待つ気持ちばかりが先に立って、体が追いつかなくなることもあります。
我が家には、元保護猫が十匹います。
そして、同じ空間にいても、それぞれがまったく違う過ごし方をしています。
中でも6歳になる男の子「全(ぜん)」は、少し特別です。
私が立てば後ろをついてきて、夫が動けばその足元へ。「今は眠いはずなのに」と思う時間帯でも、甘えることを優先してしまいます。
目はとろんとしているのに、なでられる手を逃したくなくて、寝ることすら後回しにしてしまう……。
そんな全の姿を見ていると、「今、ここにいたい」という気持ちに正直でいようとする強さを感じます。

夫に撫でられて夢見心地の全
眠気よりも、安心できる時間を選ぶ。それは、無理をしているようでいて、実はとても自然な選択なのかもしれません。
十匹の猫たちは、それぞれのやり方で暮らしています。ひだまりを見つけてはよく眠る子、他の猫とそっと距離を取るマイペースな子、全のように人のそばを離れない子。誰ひとり、同じではありません。
多頭飼いの暮らしは忙しいけれど、猫たちは「こうあるべき」を押しつけてきません。
誰もが自分の調子を知り、その日の分だけを大切に生きているのが素敵です。

私の膝の上で、うっとりする全
2月は、無理をしない月に。猫に教わるヒント
甘えたい全をなでながら、私もまた、「今日はここまででいい」と、自分に言ってあげようと甘やかす日々なのです。猫と暮らして気づいた、無理をしないためのヒントを紹介します。
・すべてを一度に整えようとしない
多頭飼いでも、家事でも、完璧を目指すと息が詰まります。「今日はここまで」と区切ることで、優しい暮らしは続いていきます。
・猫それぞれのペースを、そのまま受け止める
甘える子も、距離を取る子も、それがその子の安心の形。比べないことで、気持ちがぐっと楽になります。
・「できたこと」だけを数える
全部終わらなくても、ごはんを用意できた、花に水をあげられた、湯船に浸かれた。それだけで、その日は十分です。
・眠れるときは、猫と一緒に休む
猫が丸くなる時間は、体が休みたがっている合図。無理に動かず、流れに身を任せてみます。
・甘えは、わがままではないと知る
全のように、眠気より安心を選ぶ姿は、「今、大切なもの」をちゃんと選んでいる証拠です。
・「今日も無事だった」で一日を終える
大きな成果がなくても、怪我なく、平穏に過ごせたなら大合格。それが、長くしあわせに暮らすための一番の秘訣です。

眠くて目を細めながらも、そばを離れようとしない全の背中をなでていると、「今は休んでいいんだよ」と、こちらが教えられているような気がします。
何かを成し遂げなくても、前に進めなくても、ただ一緒に過ごした今日があれば、それで満点。
二月の静かな夜、十匹の猫たちと、無理をしない暮らしを、また明日へとつないでいこうと抱きしめるのです。

うれしくてしっぽがふくらむ
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咲セリ(さき・せり)
1979年生まれ。大阪在住。家族療法カウンセラー。生きづらさを抱えながら生き、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていたところを、不治の病を抱える猫と出会い、「命は生きているだけで愛おしい」というメッセージを受け取る。以来、NHK福祉番組に出演したり、全国で講演活動をしたり、新聞やNHK福祉サイトでコラムを連載したり、生きづらさと猫のノンフィクションを出版する。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日」(KADOKAWA)、精神科医・岡田尊司との共著『絆の病──境界性パーソナリティ障害の克服』(ポプラ社)、『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました──妻と夫、この世界を生きてゆく』(ミネルヴァ書房、解説・林直樹)、『息を吸うたび、希望を吐くように──猫がつないだ命の物語』(青土社)など多数ある。
ブログ「ちいさなチカラ」






