ゆらぎ、不安になる春。自分との向き合い方
春になると、空気がやわらぎ、光も少しだけやさしくなります。道を歩けば花が咲き、どこかへ出かけたくなるような、そんな季節です。けれど、私にとって春は、少しだけ難しい季節でもあります。
お花見やGWの外出など、楽しい予定が続く時期。その最中は、ちゃんと楽しいのです。笑って、食べて、季節を感じて。けれど、ひとつひとつが終わったあと、不思議と気持ちが落ちてしまいます。
理由は、うまく言葉にできません。
ただ、楽しかったぶんだけ、反動のように、静かに沈んでいく感覚。「こんなに気持ちのいい季節なのに」と、自分で自分を責めてしまうこともあります。

猫はいつでもマイペース
寒暖差で心身のバランスがとりにくいときにも、猫がいる
さらに春は、日によって気温が大きく変わります。暖かいと思えば、急に冷え込む日もある。体がついていかないまま、心だけが置いていかれるような、そんな感覚になることもありました。
足元では、猫たちが元気に過ごしています。走り回ったり、甘えてきたり。その姿を見ながら、今日はあまりかまってあげられない自分に、少しだけ申し訳なさを感じます。
それでも猫たちは、気にする様子もなく、日々を過ごしています。暖かい日は、廊下に伸びて、光をあびながらごろごろ。
少し肌寒い日は、いつのまにか集まって、丸くなって眠っています。
機嫌のいい日は、急にスイッチが入ったように走り回り、またふっと静かになる。

春になると、床暖房からソファに移動する猫兄弟
その姿を見ていると、思うのです。
ああ、毎日同じでなくてもいいのだな、と。春だからといって、いつも元気でいなくてもいい。
気持ちが揺れる日があっても、少し動けない日があっても、それも季節の一部なのかもしれません。猫たちは、変わることを受け入れているように見えます。
暖かければ伸びて、寒ければ寄り添う。ただそれだけのことを、迷いなく選んでいる。私も、少しずつでいいから、そうなれたらと思います。
今日の自分に合う場所を見つけて、無理をせずに過ごすこと。春の光の中で、猫たちの寝息を聞きながら、そんなふうに、静かに整えていくのです。

遊びたい! おもちゃ箱の上で待機する2匹
猫に教わる、ちいさな暮らしのヒント
・元気でなくてもいい日をつくる
調子が出ない日は、そのままで大丈夫。無理に引き上げようとせず、静かな一日を選んでみます。
・予定のあとに、余白を残す
楽しい予定のあとこそ、何もしない時間を少しだけ。反動をやわらかく受け止める余裕になります。
・気温に合わせて、暮らしも変える
寒い日は温かい飲み物を、暖かい日は窓を開けて。体に合わせて動くと、心も少し楽になります。
・できないことより、できたことを見る
今日は少し休めた、猫に一度は触れられた。そんな小さなことを、そっと拾い上げてみます。
・比べる前に、深呼吸
まわりの明るさに引きずられそうなときは、一度立ち止まって呼吸を整えます。自分のリズムに戻るきっかけに。
・短い“好き”を重ねる
お茶を一杯、好きな音楽を一曲。それだけでも、一日の中にやさしい支えが生まれます。
・触れて、今を感じる
猫の体温や、カップのぬくもり。手で感じるものは、心を現実に引き戻してくれます。
・揺れる季節だと知っておく
春は変化の多い季節。揺れるのは自然なことだと、あらかじめ知っておくだけで、少し楽になります。
いい季節だからといって、いい調子でいなくてもいい。
猫たちがそうしているように、その日の心に合う場所でそっと過ごせばいいのだと、今日という日をやさしくなでるのです。

寒い日はお日様の下で丸くなる
◇ ◇◇ ◇◇

咲セリ(さき・せり)
1979年生まれ。大阪在住。家族療法カウンセラー。生きづらさを抱えながら生き、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていたところを、不治の病を抱える猫と出会い、「命は生きているだけで愛おしい」というメッセージを受け取る。以来、NHK福祉番組に出演したり、全国で講演活動をしたり、新聞やNHK福祉サイトでコラムを連載したり、生きづらさと猫のノンフィクションを出版する。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日」(KADOKAWA)、精神科医・岡田尊司との共著『絆の病──境界性パーソナリティ障害の克服』(ポプラ社)、『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました──妻と夫、この世界を生きてゆく』(ミネルヴァ書房、解説・林直樹)、『息を吸うたび、希望を吐くように──猫がつないだ命の物語』(青土社)など多数ある。
ブログ「ちいさなチカラ」






