<座談会メンバー>
川添大輔 団地と鉱物をこよなく愛する天然生活編集部員。音楽に目覚めたのは大学生になってからで、昭和歌謡を「発見」して楽しんでいる。昭和歌謡以外で最近よく聴いているのはTom Misch、toe、Spangle call Lilli line、ハイスイノナサ、中村弘二など。
笠原みなみ 天然生活webの編集部員。古い音楽や映画のほか、歴史的建造物や喫茶店、町中華、銭湯など「昭和」の香り漂う文化がとにかく好き。音楽は大滝詠一やムーンライダーズなど古い日本ロックからジャズ、ヒップホップにハロプロまで幅広く雑多に好む。
山西裕美 web制作会社所属の編集・ライター。幼い頃から音楽に親しみ、「YMOの誰かに会いたい」という理由で編集者を志す。大学卒業後、出版社に入社しティーン雑誌の編集に携わる。現在は雑誌、書籍、webなどの企業取材、音楽、映画などの編集・ライティングを担当。好きな音楽のジャンルはハードロック、ヘヴィメタル、プログレッシブ・ロック、パンクロックなど。初めて買ったレコードはピンク・レディーの『渚のシンドバッド』。
川添のいちおし曲
ツッパリ路線よりも“攻めて”いた、中森明菜のデビュー曲『スローモーション』
山西 それで今回、川添さんが名曲として推しているのが中森明菜さんのデビューシングル『スローモーション』なわけですね。 ということを聞いて、今回持ってきたのは私が1982年、小学生のときに買ったシングルです。

川添 リアルタイムで聴いていたんですね!
山西 そうですね。私は子どものころからアイドルに夢中になったことはなくて、RCサクセションやTHE ALFEE、浜田省吾さん、YMO、オフコース、洋楽はTOTOやビリー・ジョエルなどを聴いてきたんですが、なぜか中森明菜さんと松田聖子さんにはピンときたんですよ。かわいいし、歌もうまいし、なんといっても曲がいい。
川添 実は僕がこの曲を知ったのはごくごく最近なんです。定食屋さんでごはんを食べていたら、これが流れてきて「めちゃめちゃいい曲じゃん」って。iPhoneに音を聞かせてなんの曲か調べてみると、中森明菜さんの『スローモーション』と出て。ツッパリ路線以降の曲しか知らなかったので、「えっ? iPhoneが間違ってるかも」と3回ぐらいやってみたんだけど、毎回やはり同じ答え。それで「スローモーション」でweb検索したら、いま流れている歌詞と同じ歌詞が出てきたんで、こんなしっとりした曲も歌ってたんだと驚きまして。調べてみて、来生たかおさんっていい曲書くなぁと、しみじみ感じちゃいました。
中森明菜「スローモーション(from『はじめまして』)」/ワーナー・ミュージックジャパン
youtu.be山西 この曲の作詞は来生たかおさんのお姉さんの来生えつこさんで、このコンビでは3枚目のシングル『セカンド・ラブ』もリリースしていて、この曲のほうが売れましたよね。
川添 『セカンド・ラブ』もいい曲ですよね。実は今回、『スローモーション』とどちらにするか、最後まで迷ってました。
山西 なんだが、川添さんの好みがわかってきました。中森明菜さんは2枚目のシングル『少女A』でだいぶ人気が出てきていたので『セカンド・ラブ』は売れたんです。中森明菜さんがオーディションに合格した『スター誕生!』はクラスのみんなも観ていて、たくさんのスカウトの札があがった明菜ちゃんを見て「すごいな」「あの子、人気でそうだね」みたいな話を翌日学校でしてたんです。でもデビュー曲『スローモーション』は、子どもには地道な曲に聴こえたし、話題にはならなかったですね。
川添 本当だ。オリコンチャート週間30位と出ていますね。それに対して『セカンド・ラブ』は1位だ……。
山西 中森明菜さんにはデビュー当時「ちょっとエッチなミルキーっ子」というキャッチフレーズが付いてたんですよね。子どもはそういうのには反応するから、「何? エッチ?」みたいな(笑)。私は『スローモーション』が気に入ってシングルを買って、このシングルはB面の『条件反射』、あと1stアルバム『プロローグ〈序幕〉』も聴き込みましたね。どの曲もいいんですが、ちょっとオマセな大人っぽい歌詞が多くて、友だちには強くおすすめできなかったのを覚えています。
川添 確かにアイドルっぽくないですよね。
笠原 このジャケットの写真も大人っぽくて、すごくかわいい。アイドルっぽい笑顔ではないし。
山西 この曲、ラストのスローになるところが最高なんですよね。表現力も抜群です。
川添 デビュー曲で、来生たかおさんの「この歌で勝負した」っていうのが、ツッパリ路線よりも逆に攻めてるように僕は感じます。なにかの雑誌で『少女A』のツッパリ路線に世の中が度肝を抜かれて、そこでブレイクみたいなことを読んでそれを信じていたので、その前にこんないい曲を出していたのかとびっくりしました。編曲をしている船山基紀さんを調べていくと、渡辺真知子さんの『迷い道』とか、自分が「この曲いいな」と思った昭和歌謡をたくさん手がけていて、そういうふうにつながっていく楽しみを感じています。
山西 船山さんは数々の名曲の作曲や編曲を手がけていますよね。私が初めてお名前を知ったのは、中島みゆきさんの『悪女』のシングルを買ったとき、編曲に名前がクレジットされていたから。その後、円広志さんの『夢想花』やクリスタルキングの『大都会』など、『ザ・ベストテン』で観て知っていた曲をたくさん担当されていてびっくりしましたね。




