100年以上前に生まれた、スウェーデンの本
エレン・ケイ『美しさをすべての人に』
今回は、F/style(エフスタイル)のおふたりに、1冊の本をお持ちいただきました。こちらは、100年前のスウェーデンで発売され、これまで多くの方に読まれてきた、思想家エレン・ケイの著書の翻訳版。日本版として、2025年に出版された『美しさをすべての人に』です。
暮らしのなかでできる善行とは?
五十嵐恵美さん:今日、持ってきたのは『美しさをすべての人に』です。ものづくりをする立場としても、普段暮らす生活者としても、背中を押された本です。
このなかで、私がとくに心を動かされたのは「善行」について書かれた一節でした。
「住まいにはいつでもできる善行があります」
ここから始まり、家族の負担を軽くすること、何気ない言葉や態度で人を守ること、対立を和らげることなど、日々の暮らしのなかでできる行いがていねいに語られています。

本を開く、五十嵐さん
私はそうしたことを暮らしのなかでささやかに実践してきたつもりですが、改めて読むと、それが家庭から仕事場へ、そして社会へと広がっていくのだと感じました。
その考え方が、私のなかでは最も深く響いたメッセージでした。
生みだす者と、受け取る者
星野若菜さん:私たち、F/style(エフスタイル)の店は今年で25周年になります。始めたころに伝えたかったことは、年月とともに少しずつ変わってきました。

F/style(エフスタイル)が手がけた暮らしの道具たち
でも最近、強く感じているのは、この世の中で、どんなによいものが生まれても、それを受け取る人がいなければ社会はよくなっていかないということです。
暮らしのなかで受け取り、実践していく人たちがいてこそ意味がある。私たちのプロダクトも同様です。
そんなことを考えていたタイミングで、この本と出合いました。
すべての人の心に届く言葉が詰まった1冊
五十嵐さん:エレン・ケイが伝えた『美しさをすべての人に』の1冊の中には、それぞれの人に届けたいと思うメッセージがたくさんあります。
ものづくりをしている人に響く言葉もあれば、暮らしを営む人に向けられた言葉もある。
この本を手に取られた皆さんのお話を聞いていると、本当にうれしくなります。
驚いたのは、皆さんが本に書かれていることを、すでに暮らしのなかで実践されていることでした。
だからこそ、この本は新しいことを教えてくれるというよりも、皆さんの背中をもう一度押してくれる存在なのではないかと思います。

翻訳者・池上貴之氏を囲んでのお話会も
言葉の奥にあるもの
星野さん:私が心を動かされたのは、自分たちが美しさについて感じている、とても大切な部分が語られていたことでした。
表層的な言葉ではなく、本当の本当の深い部分。手に取れるものや目に見えるものではなく、その奥にあるものです。
これまでも、その周りにあるものについて語られることはたくさんありました。でも、本当に大切なのはそこではないんじゃないか。何かに触れるたびに、ずっとそんな感覚がありました。
だからこそ、『美しさをすべての人に』を読んだとき、「ああ、ここだったのか」と思ったんです。
この本は、デザインや表現に関わる人だけのものではありません。むしろ、そうした世界に関わっていない人たちの日々の暮らしにも、そのまま広がっていく力を持っていると思います。
<撮影/Kamegai Art Design Co.(お話会風景)>


エフスタイル(F/style)
新潟を拠点に活動するデザインユニット。五十嵐恵美さん、星野若菜さんにより2001年に設立。日本各地の産地やつくり手と協働し、暮らしに根ざした製品の企画・デザインを手がける。新潟市内で直営店を営み、展示会や企画展なども開催している。https://fstyle-web.net/
北欧の美しい暮らしの秘密に迫る1899年出版の累計2万部のスウェーデンの美の教え。120年前、スウェーデンの女性思想家エレン・ケイによって記された一冊を、日本語に翻訳し刊行いたします。北欧のデザインと幸福感の原点が詰まった本書は、いまだからこそ読みたい、大切な一冊です。






