15歳の飼いねこの異変
飼いねこの様子に変化があったのは2カ月前のこと。いつもは食欲旺盛なのですが、食べない日がつづき、気になったので病院へ連れて行くことにしました。診断の結果は歯内炎。高齢ねこにはよくあるということです。その日は、注射と栄養補給をして、当分、投薬で経過を見ることになりました。
注射とクスリが効いたのか翌翌日には食欲が戻りました。
その後はしばらく安定していたのですが、何週間かするとまた同じ症状が。それから何度か同じことをくり返すようになり、最終的には抜歯の手術を受けることにしました。
手術後2日は、ほとんど眠っていました。家にいるのに存在感がない。クスリを服用していましたが、ちいさな体が痛みに耐えているのがわかります。それでも、日に日に元気になり、3日目にはほんの少しごはんが食べられるようになり、1週間後にはほぼ日常が戻ってきました。

手術後は1日のほとんど寝ていました
ねこの手術、入院を経験して
ねこと暮らしはじめて15年が経ちます。その間、ねこ同士のケンカやケガなどで病院に行ったことはありますが、病気での通院・手術は、わたしもねこもはじめてのこと。歳を重ね、体が変わっていくのは、人もねこもいっしょですね。
以前は、高いところへ軽々とのぼり、たのしそうに飛び降りていました。いまはテーブルや椅子に上がるくらい。下りるときも「大丈夫かな?」と慎重に高さを確認しています。
夜ごはんをつくっていると、おいしそうな香りに「ほしいほしい」とエンドレスに鳴いていましたが、いまは「少しほしい」くらいのアピール。
瀬戸内で暮らしていたときは、外にでて1日遊び、ときにケンカをしたり、田んぼに落ち泥だらけになって帰ってきたこともあります。いまは、とてもおだやかで、当時を思うとまるで「別ねこ」のよう。

鎌倉の家で。3歳のとき
ねこの手術をきっかけに見直した2つのこと
今回の手術をきっかけに見直したことがあります。
ひとつは、食べるもの。
ねこの好み。年齢。体質。それらをいままで以上に考えるようになりました。同時に、食べるたのしみも大切にしたい。
室内で暮らすねこにとって、ごはんの時間は大きなたのしみのひとつです。健康に配慮しながらもそのためだけではなく「おいしい」と感じる時間も大事です。食べないでいると、あっという間に体は細くなります。時には、正しさよりも「食べたい」という気持ちを優先することも必要です。

年齢に合わせドライフードは15歳以上のものに。粒はちいさめ

高さをだし食べやすいように工夫
もうひとつ、あらためて感じたのは、会話です。と、言っても人とねこです。どこまで通じているのかはわかりません。でも、声をかけると、伝わっているように感じます。
つらそうなときは、少しでも楽になるように。うれしそうなときは、その時間がつづくように。そんな風に話しかけると、ねこはゴロゴロと喉を鳴らします。おたがい言葉を介さない会話をしているのかもしれません。
この家で暮らし、ねこがいない夜もはじめて経験しました。病院での一泊。その夜、ペットロスというものについて考えました。
春から通いはじめた学校で、ペットロスについて学ぶオンライン講座があることを教えてもらったので、今回のことをきっかけに受講することにしました。
いつかくるかもしれない別れを考えるのは、かなしいことですが、だからこそ、こころの準備をしておこうと思います。
高齢になり、変化したのは、ねこだけではありません。わたし自身も同じです。
食事を大切にすること。体に気遣うこと。声をかけること。機嫌よくいること。たのしみをつくること。
「ねこのため」と見直したことは、そのまま「わたしのため」でもあるのです。わたしの衣食住健に「ねこ」があらたに加わりました。

テーブルの上から外を見るのが気に入っています
【テレビ放送のお知らせ】
NHK Eテレ『ネコメンタリー 猫も、杓子も。』に広瀬裕子さんと愛猫の「あめ」が登場します。
広瀬裕子とあめ
【放送日】7/3(金)22:30~
【再放送】7/5(日)0:00~

広瀬裕子(ひろせ・ゆうこ)
エッセイスト、設計事務所共同代表、空間デザイン・ディレクター。東京、葉山、鎌倉、瀬戸内を経て、2023年から再び東京在住。現在は、執筆のほか、ホテルや店舗、住宅などの空間設計のディレクションにも携わる。近著に『50歳からはじまる、新しい暮らし』『55歳、大人のまんなか』(PHP研究所)、最新刊は『60歳からあたらしい私』(扶桑社)。インスタグラム:@yukohirose19
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50歳、55歳と年齢をテーマに執筆してきた著者が、60歳を迎えるまでの日々に考え、選択し、アップロードしている暮らしの知恵を1編ずつ丁寧に書き下ろしました。
「抗うことなく、あきらめることなく、自分に合った選択をしていく。気持ちのこと、身体のこと、家族のこと。いままでのことを振り返りながら、60代のために新しいスタートラインを『引き直したい』と思うようになりました」と広瀬さんは語ります。
60歳はあたらしいスタートラインととらえ、これからの生活小さな暮らし、グレイヘア、家族の看取りなどをていねいに一編一編綴ったエッセイ集です。







