怖がりの猫と暮らす方法
逃げ場所をなくさない
怖がりの猫にとって、隠れられる場所は「甘やかし」ではなく「安心の土台」です。ソファの下、棚の奥、猫ベッド、ケージなど、その子が落ち着ける場所を無理にふさがないようにします。
追いかけない
逃げた猫を追いかけると、「人間=追ってくるもの」になってしまいます。逃げたら、そっとしておく。こちらから距離を詰めるより、猫が戻ってくるのを待つほうが、信頼は育ちやすいです。
触る前に、まず存在に慣れてもらう
来たばかりの怖がりの猫は、なでる以前に、人間が同じ空間にいるだけで緊張していることがあります。そばで静かに本を読む、スマホを見る、家事をする。何もしない人間を見せる時間も大切です。
急な動きと大きな声を減らす
怖がりの猫は、人間が思う以上に音や動きに敏感です。立ち上がるとき、手を伸ばすとき、声を出すときは少しだけゆっくり。もちろん人間なので、お笑いの賞レースで「ああー!」といってしまう日もあります。そのときは、心の中で全力で謝ります。
なでる時間は短めから
のどを鳴らしていても、体に力が入っていることがあります。最初は数秒なでて終わり、くらいで十分です。「もっとなでたい」は人間の都合。猫が「もう少しならいいよ」と思えるところでやめるのがコツです。
正面から手を出さない
怖がりの猫にとって、真正面から伸びてくる手は怖いものです。手を低くして、横からそっと。いきなり頭をなでるより、猫の見える場所に手を置き、においをかいでもらうところから始めます。
目をじっと見つめすぎない
猫にとって、真正面からじっと見られるのは緊張することがあります。目が合ったら、ゆっくりまばたきをする。少し視線を外す。それだけで「敵意はありません」という合図になります。
ごはんやおやつを信頼のきっかけにする
怖がりの猫には、いきなり触るより、「この人が来るといいことがある」と覚えてもらうほうが自然です。おやつをそっと置く、ごはんの時間にやさしく声をかける。手から食べられなくても大丈夫です。
猫同士の先生に頼る
人間が苦手な猫でも、ほかの猫の行動を見て学ぶことがあります。人慣れしている先住猫がいる場合、その子が安心して人間のそばにいる姿は、怖がりの猫にとって大きなお手本になります。
「慣れた/慣れていない」で決めつけない
抱っこできないから慣れていない、膝に乗らないから心を開いていない、とは限りません。近くで眠る。目の前でごはんを食べる。なでるとのどを鳴らす。怖がりの猫にとっては、それだけでも大きな進歩です。
昨日より今日、ではなく、去年より今年を見る
怖がりの猫の変化は、とてもゆっくりです。昨日逃げたからだめ、今日隠れたから失敗、と思わなくていい。1年前より近くにいる。半年前より表情がやわらかい。そんな長い目で見ると、ちゃんと変化していることに気づきます。
怖がりのまま、愛されていいと伝える
人間にべったり甘えられる猫だけが、いい猫ではありません。怖がりでも、おどおどしていても、逃げ足が速くても、その子はその子のままで十分かわいい。まず人間のほうがそう思って暮らすことが、一番の安心になる気がします。
ユキはいまも、私が急に動くと逃げます。コウも、なでられながら体に少し力が入っています。
でも、ごろごろとのどは鳴る。
その音を聞くたびに思います。
怖いままでも、近くにいてくれる。それはもう、十分すぎるほどの信頼なのだと。
◇ ◇◇ ◇◇

咲セリ(さき・せり)
1979年生まれ。大阪在住。家族療法カウンセラー。生きづらさを抱えながら生き、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていたところを、不治の病を抱える猫と出会い、「命は生きているだけで愛おしい」というメッセージを受け取る。以来、NHK福祉番組に出演したり、全国で講演活動をしたり、新聞やNHK福祉サイトでコラムを連載したり、生きづらさと猫のノンフィクションを出版する。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日」(KADOKAWA)、精神科医・岡田尊司との共著『絆の病──境界性パーソナリティ障害の克服』(ポプラ社)、『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました──妻と夫、この世界を生きてゆく』(ミネルヴァ書房、解説・林直樹)、『息を吸うたび、希望を吐くように──猫がつないだ命の物語』(青土社)など多数ある。
ブログ「ちいさなチカラ」
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