ごはんを残せるのは、明日も食べられると信じているから
猫も、満たされた生活に慣れてくると、だんだん食にわがままになります。
保護したばかりのころは、出したごはんを夢中で食べ、空になったお皿までていねいになめていた子が、いつの間にか平然とごはんを残すようになる。
大好きだったはずのウェットフードを出しても、ひと口だけ食べて、「今日は、これじゃない」とでもいうように、そっぽを向きます。

ウェットフードの食いつきは抜群
あのころ、お皿に残った小さなかけらまで探していた猫は、いったいどこへ行ったのでしょう。
元気で、安心して暮らせるようになった証拠だと思えば、喜ばしいことです。
毎日きちんと食べられるとわかっているからこそ、猫は選べるようになったのでしょう。
それでも、ごはんを用意する側としては、どこまでそのわがままを許すべきか、悩んでしまいます。
ふだんのごはんには、なるべく体のことを考えたフードを選んでいます。
だけど、きっと猫だって、人間と同じです。栄養の整った食事より、少し味や香りの強い、いわゆるジャンクなもののほうが魅力的なのでしょう。
わが家でも、ときどき、お菓子のようなカリカリをあげます。こちらは、大人気です。袋を開ける音がしただけで、それまで寝ていた猫まで起きてきます。
ふだんのフードを残している子も、なぜか最前列に並びます。

「あのおいしいカリカリをください!」
「さっきのごはん、まだ残っていますけど」
そういいたくなりますが、猫は聞こえないふり。
困るのは、普通のフードを食べずに、おいしいカリカリが出てくるのを待つようになることです。食べなければ、もっとおいしいものが出てくる。どうやら猫たちは、その仕組みをすぐに覚えてしまったようです。
猫と人間、どちらが先に根負けするか。食卓を挟まない、静かな戦いです。
残したごはんを、いつ新しいものに替えるかも悩みます。
置いてから時間がたつほど、猫は食べなくなります。こちらには同じカリカリに見えても、猫には香りがすっかり抜けたものに感じるのでしょう。

それぞれに距離をとったごはんスペース
たしかに、万が一カリカリが傷んでしまってはいけません。だから一定以上時間のたったものは破棄するのですが、ついさっき入れたばかりのものだった場合は、残ったフードに、袋から出したばかりの新しいフードを少し混ぜることがあります。すると、新しい香りにつられて、また食べ始めたり。
「全部新しいごはんですよー」という顔で差し出しますが、たぶん猫には見抜かれている......。それでも、食べてくれればこちらの勝ちです。

新しいカリカリを足すと大人気
そして意外なのが、私たちが起きている間は頑として食べなかったごはんを、夜中にこっそり食べていることです。
朝になると、空っぽになったお皿が置かれています。
もっとおいしいものが出てくるのではないかと待っていたけれど、人間が寝てしまった。だれも新しい袋を開けてくれない。
それでとうとう、あきらめて食べたのでしょう。
お皿を見ながら、ついいってしまいます。
「食べられるんやん」(笑)
けれど、ごはんを選り好みできるようになった猫を見ると、私は少しうれしくもなります。
次の食事があるかわからなかった猫が、いまでは、「これは、昨日も食べた」と不満をいっている。それは、明日もごはんが出てくると信じているから。
そう考えると、残されたカリカリも、少しだけいとおしく見えてくるのです。

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