• 生きづらさを抱えながら、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていた咲セリさん。不治の病を抱える1匹の猫と出会い、その人生が少しずつ、変化していきます。生きづらい世界のなかで、猫が教えてくれたこと。猫と人がともに支えあって生きる、ひとつの物語が始まります。今回は、猫が吐くことと、わが家でとくに吐きやすい7歳の全のお話です。

    何度吐いても、あなたが大好き

    猫と暮らしていない方が、意外と知らないこと。

    それは、「猫は、吐く」ということかもしれません。

    もちろん、病気が原因で吐くこともありますし、何度も続くときや、いつもと様子が違うときには病院で診てもらうことが大切です。

    けれど一方で、猫は毛づくろいをしたときに飲み込んだ毛を毛玉として吐いたり、勢いよくごはんを食べて、そのまま「咀嚼すらしていないのでは?」という鮮度で戻したりすることがあります。

    猫と長く暮らしている人にとっては、わりとおなじみの光景。「あ、吐いた」くらいのものです。でも、保護猫を家族に迎える方には、こういうこともあらかじめ知っておいてもらえたらいいな、と思います。

    世の中には、ごくまれに「うんちをするとは思わなかった」という理由で動物を手放す人がいる、なんて信じがたい話も耳にします。

    さすがにそれは、ありえないと願っているのですが。

    猫が吐くということもまた、ただかわいい猫と暮らしたい、という人からすれば受け入れ難い場合もあるかもしれません。

    何より、初めて見ると驚くでしょうし、病気ではないかと心配になるのも当然です。

    だからこそ、「こういうこともありますよ」という猫の暮らしの知識として、迎える前から共有されていったらいいなと思うのです。

    とはいえ。同じ猫でも、本当によく吐く子と、ほとんど吐かない子がいます。

    わが家の場合、圧倒的に吐くのが、7歳の男の子、全(ぜん)です。

    画像: 小さなことで悩んでしまって吐いちゃう全

    小さなことで悩んでしまって吐いちゃう全

    全は、それはもう、吐きます。猫たちと長く暮らしてきた私でも、「全、ちょっと多くない?」と思うくらいでした。

    最初のころは心配になって、病院にも連れて行きました。診察を受け、必要なことを調べてもらいましたが、とくに異常はなし。先生からは、どうやらこの子は「吐きやすいタイプ」なのだろう、と言われました。

    画像: 吐いちゃってしょんぼり

    吐いちゃってしょんぼり

    それを聞いて、私は妙に納得しました。というのも、全はとても頭がよくて、繊細な猫なのです。
    人間が大好き。人懐っこくて、いつも私たちのそばにいたがります。かわいいです。その反面、たいへんなヤキモチ焼きでもあります。

    だれかをかわいがっていると、「全を! 全だけをかまってください!」とあわてて駆け寄ってきます。

    画像: 寝るときもかわいい姿をアピール中

    寝るときもかわいい姿をアピール中

    こちらの行動をよく見ていて、人間関係ならぬ猫間関係にも、いつも目を光らせている。

    なんというか全は、常にちょっと心配しているように見えるのです。ちゃんと愛されてるかな。あの子ばっかりかわいがられてないかな。今日もいつもどおりかな。そんなことを、小さな頭のなかでせっせと考えているような。

    人間でも、心配性だったり、緊張しやすかったりすると、「胃にくる」という人がいます。猫にも、もしかしたらそういうところがあるのかな、と私は思っています。

    画像: おなかを見せるほど人が好き

    おなかを見せるほど人が好き

    もちろん、本当のところは全に聞いてみないとわかりません。そして全は、聞いたところでたぶん、「なでてくれるの?」としか答えてくれません。

    だから私は、全が吐いたとき、けっして怒らないようにしています。

    ラグのまんなかでも。いまから出かけるぞ、というときでも。よりによって、そこですか、という寝ている私の髪の毛の上でも。

    「大丈夫、大丈夫」と言いながら片づけます。

    猫は、わざと吐いているわけではありません。困らせようとしているわけでもない。

    もしかすると本人だって、「またやってしまった」くらいに思っているかもしれない。

    だったら、吐いたものを片づけるついでに、その子の心配まで少し片づけられたらいい。大丈夫だよ。怒ってないよ。あなたのこと、ちゃんと好きだよ。私たちは、あなたを愛してるよ。

    画像: 吐いたあとは、よしよしして安心してね

    吐いたあとは、よしよしして安心してね

    全がどれだけ吐いたって、それだけは何度でも伝えていきたいのです。

    ◇ ◇◇ ◇◇


    画像: 吐いたことを叱らない

    咲セリ(さき・せり)
    1979年生まれ、大阪在住。作家、家族療法カウンセラー。夫と10匹の元保護猫と暮らす。心の病や生きづらさを抱えるなか、不治の病をもつ一匹の猫との出会いをきっかけに、「命は、生きているだけで愛おしい」ということを知る。以来、生きづらさのなかにある小さな希望を、ノンフィクションや小説、エッセイに綴りつつ、NHKの福祉番組への出演、全国での講演などでも活動。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日』(KADOKAWA)など。

    ◆note:https://note.com/sakiseri

    ◆ブログ「ちいさなチカラ」

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    「ひとりきりでも、揚げたてコロッケはおいしいけれど、絶滅の前夜、恐竜たちは、誰かと何かを食べたのだろうか」
    大阪の片隅。この世界からこぼれそうな人たちが、ふっと息をつけるうらぶれた居酒屋「飛鳥」。

    ・本日のフランス料理「ちくわぶとねぎのグラタン」
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    ・裏メニュー「ぐちゃまぜ豆腐丼」

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