• 体の不調は、まず食で整える。韓国に息づくのは、食の知恵を大切にした家庭料理の数々。韓国出身の料理家のキム・ナレさんが祖父母や母から受け継ぎ、育んできた韓国薬膳のある暮らしを紹介します。
    (『天然生活』2025年11月号掲載)

    キム・ナレさんの家庭に根づく、韓国薬膳の知恵

    「韓国では、体調が優れないときに、まずは食べ物で整える、という考え方があります。食事で補って、それでも回復しないときは漢方、それから西洋医学へ、という順番です。だから私も、不調を感じたら、まずは口にするもので体調を立て直すようにしています」

    そう話してくれたのは、料理家のキム・ナレさん。母や祖母の家庭料理や、北朝鮮出身の祖父が営んでいた店の素朴な味を受け継ぎながら、季節に寄り添ったナレさん流の韓国料理をつくっています。

    「私は専門的に薬膳を学んだことはないんです。でも薬膳の本を読んだら、祖父母や母の料理はその考え方に沿ったものでした。韓国の家庭料理には、薬膳の知恵が自然と根づいています」

    ナレさんが、食で体をいたわることをより一層意識したのは、自身が体調を崩して、料理教室を一時中断したときでした。

    「『飾り気はないけれど、自分や周りを元気にする韓国料理』を目指すようになりました。とはいっても特別なことをするわけではなく、旬の野菜を取り入れること。味つけを過度にしないこと。このふたつを大切にしています」

    画像: 「潤す」作用の乾燥白きくらげと松の実、「血を補う」作用のなつめは、中国由来の食材だが、日本と同様、韓国薬膳にも使われる。えごま粉は栄養価が高い韓国の定番食材

    「潤す」作用の乾燥白きくらげと松の実、「血を補う」作用のなつめは、中国由来の食材だが、日本と同様、韓国薬膳にも使われる。えごま粉は栄養価が高い韓国の定番食材

    画像: 季節の野菜を多く取り入れて

    季節の野菜を多く取り入れて

    画像: 種子を炒ったケツメイシ茶は、目の健康によいとされ、また、体の余分な熱を冷ます作用も

    種子を炒ったケツメイシ茶は、目の健康によいとされ、また、体の余分な熱を冷ます作用も

    旬の野菜を採ることは、無理なく続けられる食養生に

    旬の野菜は、その時季に必要な栄養を含み、滋養を与えてくれます。負担のない味つけは、無理なく続けられる食養生となります。

    「体に何を入れるかは、とても大切です。私は『今日おいしいし、明日もおいしい』料理を心がけています。食事は毎日のことです。そのときはおいしくても、内臓に負担のかかる内容ではいずれ体が疲れてしまいます。いまだけではなく未来もずっと『おいしい』といえる体調、料理がいいですよね」

    さらに、ナレさんが毎日の料理で忘れないようにしていることは、自分への思いやりです。

    「食事と同じく料理も毎日のこと。だからこそ、つくることがストレスにならないように、料理をしたら『私、えらい!』と自分を褒めてあげてください。心と体の声を聞き、楽しみながら料理をすることが、すこやかな毎日への第一歩だと思います」

    画像: 白菜の外葉と里いもは天日干し。「白菜は甘味が増し、里いもは栄養素を残しつつ、ぬめりが抑えられて扱いやすくなります」

    白菜の外葉と里いもは天日干し。「白菜は甘味が増し、里いもは栄養素を残しつつ、ぬめりが抑えられて扱いやすくなります」

    季節のお茶を飲む習慣

    画像: 旬の野菜で整える「韓国薬膳」の知恵。すこやかな体は“毎日の食”から。韓国の家庭に伝わる、無理なく続く食養生/キム・ナレさん(料理家)

    「韓国では水よりもお茶を飲む習慣があります。アマドコロ茶はクセがあまりなく、麦茶を濃くしたような味わいで、とても飲みやすいです」

    ユリ科の多年草であるアマドコロの根を乾燥させてつくられたお茶は、中国薬膳では「玉竹」と呼ばれます。体を潤す効果があり、季節の乾燥や更年期の乾き、のぼせのケアにも最適です。



    〈撮影/川村 隆 取材・文/飯作紫乃〉

    キム・ナレ(きむ・なれ)
    韓国、仁川出身。日本の家庭で再現しやすい韓国の家庭料理や薬膳を取り入れたレシピ、教室が人気。プライベートでは5歳の息子の子育て中。著書に『一汁一飯 韓定食』(グラフィック社)など。

    ※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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