• 生きづらさを抱えながら、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていた咲セリさん。不治の病を抱える1匹の猫と出会い、その人生が少しずつ、変化していきます。生きづらい世界のなかで、猫が教えてくれたこと。猫と人がともに支えあって生きる、ひとつの物語が始まります。今回は、夫の発熱をきっかけに気づいた家事のありがたさと、体調が悪い日の猫との暮らしについて綴ります。

    飼い主が体調をくずしたときのために、わが家で心がけていること

    猫のごはんは、簡単な方法を選びます

    いつもの手順にこだわらず、計量しやすいフードやパウチなど、その日の体力でできる方法にします。数日くらい「完璧ないつも通り」でなくても大丈夫です。

    水は何カ所かに多めに用意しておきます

    何度も交換に立たなくてすむよう、清潔な器を増やしておくと少し楽になります。

    猫トイレは「全部完璧に」ではなく、汚れたところを優先します

    しんどい日は最低限でも十分です。元気になってから、あらためてきれいにすればいいのです。

    遊んであげられない日は、猫にも休養日につきあってもらいます

    おもちゃで全力疾走させなくても、猫たちは勝手に運動会を開催してくれます。彼らの休憩時間になるまで、ただただ踏まれないよう耐え忍びましょう。

    元気なうちに猫用品を少しだけ備蓄しておきます

    フードや猫砂を「なくなる直前」に買わないようにします。それだけで、発熱の日の買い物をひとつ減らせます。

       

    そして一番大事なのは、世話をする側まで倒れないことです。

    この日、私はいつもの倍くらい働いた気分になり、夕方にはもうへとへとでした。

    けれど、実際には「倍働いた」のではなく、ふたりでやっていたことを、たまたまひとりでやっただけなのです。

    そう思うと、夫が毎日してくれていたことが、急にくっきり見えてきました。

    人は、元気なときには元気であることを忘れています。

    ごはんをつくれることも、猫のトイレをしゃがんで掃除できることも、「ちょっとこれお願い」といえばだれかが動いてくれることも。ぜんぶ、当たり前みたいな顔をして暮らしのなかにいます。

    その夜。夫の熱をもう一度測り、布団をかけ直しました。

    夫の横では、昼間ずっと走り回っていた猫が、今度はすっかり丸くなって眠っています。

    結局、きみも寝るんかい。そう思いながら眺めていると、なんだか少し笑えてきました。

    家族が具合を悪くした日は、家のかたちがいつもと少し変わります。

    だれかの分をだれかが引き受け、できないことは放っておき、猫は看病したり、走ったり、寝たりします。完璧ではありません。でも、それくらいでいいのだと思います。

    とりあえず今日は、夫よ、よく眠ってください。

    猫たちよ。看病はありがたいです。ただしできれば、顔だけは踏まないであげてください。

    ◇ ◇◇ ◇◇


    画像: 元気なうちに猫用品を少しだけ備蓄しておきます

    咲セリ(さき・せり)
    1979年生まれ、大阪在住。作家、家族療法カウンセラー。夫と10匹の元保護猫と暮らす。心の病や生きづらさを抱えるなか、不治の病をもつ一匹の猫との出会いをきっかけに、「命は、生きているだけで愛おしい」ということを知る。以来、生きづらさのなかにある小さな希望を、ノンフィクションや小説、エッセイに綴りつつ、NHKの福祉番組への出演、全国での講演などでも活動。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日』(KADOKAWA)など。

    ◆note:https://note.com/sakiseri

    ◆ブログ「ちいさなチカラ」

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    「ひとりきりでも、揚げたてコロッケはおいしいけれど、絶滅の前夜、恐竜たちは、誰かと何かを食べたのだろうか」

    大阪の片隅。この世界からこぼれそうな人たちが、ふっと息をつけるうらぶれた居酒屋「飛鳥」。

    ・本日のフランス料理「ちくわぶとねぎのグラタン」
    ・自動販売機の50円のカフェオレチューハイ
    ・猫も喜ぶどて焼きオムレツ
    ・裏メニュー「ぐちゃまぜ豆腐丼」

    雑であたたかなごはんと、傷を負った人々の泥臭いぬくもりを描いた、絶望のなかにあるちいさな灯りの物語(全4編)。



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