(『天然生活』2014年11月号掲載)
羅臼昆布とは
羅臼周辺(知床半島の国後島側)の沿岸の海に生息。正式名はエナガオニコンブ。だしのおいしさから、「だしの王様」とも呼ばれる。採取後、40を超える工程を経てつくられる。そこには羅臼の昆布漁師の愛情と技が詰まっている。
羅臼は昆布が育つ最高の環境
松田美智子さんが羅臼を訪れたのは、7月末。その町は昆布漁一色に染まっていました。
昆布漁が始まるのは、朝6時。開始のアナウンスとともに、一斉に始まります。この日、昆布漁を見せてもらうために向かったのは、井田一昭さんの舟。その道40年以上という昆布採り名人です。
井田さんが選んだスポットは、よい昆布が育つといわれる、川の水が流れ込む地点。箱メガネで海底をのぞき、2年ものの昆布のありかを探り、昆布竿を巧みに操り、根に差し込んで巻き付け、いとも簡単にはがし取ります。
大きいもので幅25cm、長さ3m近くにまで生長する羅臼昆布を、水深に合わせて4mから10mの昆布竿を使い分けて採る作業は、相当な重労働。それに加え、熟練の技も必要です。
井田さんはそれを難なくこなし、小舟は、あっという間に昆布でいっぱいに。漁が許されるお昼までに、800から1000枚の昆布を収穫します。
「今年は、いい昆布が育っている。当たり年だよ」と井田さん。
羅臼昆布を育む知床の海は、世界自然遺産そのものです。知床連山からは38本もの川が流れ込み、原始の森が育んだミネラル豊富な水を運んできます。
さらに、極寒の冬に流れ着く流氷が運ぶ豊富なプランクトンや、沖合でわく海洋深層水など、昆布が育つ最高の環境が整っているのです。
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<撮影/川村 隆 取材・文/野上郁子(オフィスhana)>
松田美智子(まつだ・みちこ)
料理研究家、テーブルコーディネーター、日本雑穀協会理事、女子美術大学講師。季節感と素材の味そのものの味、風味を大切に、つくりやすい料理を心がける。保存食の本『季節の仕事』が扶桑社より復刊予定。
※トップの写真について
昆布を収穫する井田一昭さん。竿は長くて重く、さらに潮流の影響を受けるため、素人にはまっすぐ下ろすことすら難しい
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです