小川糸さんの5つのルール
1 予定をつめこまない
仕事も家事も人間関係も自分の許容範囲を超える量は抱え込まないようにしているという小川さん。そのために意識しているのは、時間に余白を残す、ということ。
「これまでは、欲張ってあれもこれもと予定をつめこんで、結果的に自分が疲れてしまうということがたくさんありました。今は、予定は1日ひとつで十分だし、前もって約束を入れるのは必要最小限にしています。その日の気分でフリーに動けるような余白をつくっておくことが、健やかでいるためにはとても大切だと実感しています。ちなみに、私が愛用している手帳はマンスリータイプのもの。このよさは、なんといっても、書くスペースが小さいこと。1日1件くらいしか書き込めないので、おのずと予定をつめこまずにすみ、ゆとりをつくるのに効果的なんです」
2 家事はひとりで抱え込まない
「丁寧な暮らし」を送っているイメージのある小川さんですが、暮らしにおいては、「無理をしない」のがモットー。便利なものは積極的に取り入れるようにしています。
「私は料理をするのは好きなのですが、食器洗いは苦手。食事をしたあとの器は躊躇せず食洗機におまかせしています。立て込んでいるときは、料理そのものをしないことも。近所においしいお弁当屋さんがあるので、わが家のセカンドキッチンとして頼っています。毎日、ご飯をつくれたら、それに越したことはないけれど、自分を苦しめてまでやる必要はないですよね。ひとりで抱え込まず、頼れるものには頼って、自分自身もご機嫌でいたいと思っています」
3 年齢に抗なわい
美容については「あるがままに、何もしない」主義という小川さん。年相応のサインには抗わず、グレーヘアを受け入れ、エイジングケアも手放したそう。
「昔は流行を追って若さを楽しんでいた時期もありましたが、今は、若い頃に戻りたいという気持ちはありません。私には70代や90代の友人がいますが、みんな年齢に縛られない、魅力的な人ばかり。だから、歳を重ねることに恐怖はなく、むしろ歳をとることは素敵なことだなと思うようになりました。私の今の憧れはシルバーヘア。白髪が見つかると、憧れの友人たちに一歩近づけるようで、うれしくなってしまいます。エイジングケアをしない代わりに、元気なおばあちゃんでいられるように、体力や健康を保つためのメンテナンスを大切にしています」
4 週1回は、何も買わない「ノーバイデー」
「つい、“お金がないと幸せになれない”と思い込んでしまうことがありますが、必ずしも“消費=幸せ”ではないと思うんです」
小川さんは、お金に縛られないために、週1回、何も買わない「ノーバイデー」を設けています。
「ぜひ実践してみてほしいのですが、お財布を持たずに1日過ごすのは、思いのほか解放感があって心地いいものです。家にあるものでごはんをつくって、公園でピクニックをするのだって、十分楽しい。今あるものでなにができるか、お金を使わずに幸せになれる方法をたくさん見つけることができます。自分自身で幸せはつくれると知ることで、自信がつきますし、気持ちがラクになりますよ」
5 自分の定番を決めておく
小川さんは、服やインテリアなどに「これ」という自分の定番をもっています。
「“飽きずにずっと使えるかどうか、自分が心地いいかどうか”を基準にして、定番を決めています。例えば、衣類は、夏は涼しく着られる麻、冬は軽くて温かいカシミヤ。どちらも快適に過ごせるうえ、丈夫で長く着られます。色はネイビーやグレー。また、インテリアは鳥モチーフのものを選ぶようにしています。どことなくシックな印象があって、おばあさんになっても違和感なく持っていられそう、というのが理由です」
「これが私の定番」といえるものをもつことで、選択の幅が狭まってあれこれ悩まずにすむし、浪費も抑えられ、身軽な暮らしにつながります。
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無理をしない、自分の定番を決める、ありのままを受け入れる…。軽やかに暮らすためにはそういった潔い選択も大切です。小川糸さんの新刊『育てて、紡ぐ。暮らしの根っこ』では、小川さんが試行錯誤してたどりついた、ものの選び方や時間の使い方、健康管理の工夫、家事や仕事のルールを紹介。心地いい毎日をおくる暮らしのヒントが満載です。
<撮影/矢郷 桃>