(『天然生活』2016年11月号掲載)
小さな暮らしの3カ条
一 欲しいものはとりあえずつくる
何か必要となったときには、まず、つくれるかを考える。自分の手でつくった経験を大切にしたい。
二 仕事とプライベートを分けない
ふたつの間をゆらゆらと漂うように暮らす。仕事も好きなことなので、あえて意識しての気分転換は必要ない。
三 忙しい期間を分ける
子育て真っ最中のふたり。展示会の予定は重ならないように入れ、どちらかが時間に余裕をもつ。
子どもをみながら制作できる住まいに
働きながら、子どもをみる。仕事の合間に食事をとる。仕事も暮らしも、どちらも大切です。
結婚当初は、家とアトリエは別でした。アトリエに毎日出勤し、仕事を終えて家に帰る。いってみれば、メリハリのついた生活です。
けれど、心のどこかでずっと、生活空間のなかで作品づくりをしたいと考えていた飛松さん夫妻。
「照明と、アクセサリー。僕たちのつくるものは、生活のなかにあるものです。だから、毎日の暮らしという自然な時間の流れのなかに作品の制作時間も含まれていてもよいのでは? むしろそのほうが、いいものができるのでは?と、常に思っていたんです」
さらに、ふたりが考えていた将来の家族のかたち。子どもが欲しいと思ったときに思い浮かんだのは、昔ながらの商店の生活スタイルでした。
「たとえば、豆腐屋さん。1階で商売をして2階で暮らす、なんてことは当たり前でしたよね。お客さんがやってきたら、『はーい』なんていいながら、ごはんの途中みたいな様子で階段を下りてくる。イメージしたのは、そんな暮らし方でした」
昔、よく見た商店の働き者の夫婦のような
何ごとも、はっきり区別する必要はない。
飛松さん夫妻が大切にしているのは、時間や空間を区切ることではなく、流れるようにまわしていくこと。弘隆さんと眞弓さんの、ふたりのアトリエは、区切られることなくゆったりとつながっています。
息子の丞(たすく)くんのベビーベッドも、このひとつの空間のなかに。
寝ている姿を、ちらり、ちらりと見ながら、作業を進める。泣いてぐずりはじめたなら、少しでも手があいているほうが駆け寄って抱き上げ、あやす。
それでも泣きやまなければ、もうひとりと交代し、ふたたび作業に戻る。
その様子は、まるでおんぶをしながら豆腐を商っていた昔の商店の夫婦のようで、仕事が生活のなかに溶け込み、それも含めて “暮らし” なのだと、懐かしい思いに駆られます。
ひとつの空間に、家族の暮らしも仕事の場もコンパクトにまとめる。そこには、ギュッと詰まっているからこその温かさがあるような気がしてなりません。
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「料理と台所」・職住一体の小さな暮らし。飛松弘隆さん、小駒眞弓さんの住まいとアトリエへ ⇒
「家具と照明」・職住一体の小さな暮らし。飛松弘隆さん、小駒眞弓さんの住まいとアトリエへ ⇒
<撮影・柳原久子(https://water-fish.co.jp) 取材・文/福山雅美 イラスト/須山奈津希>
飛松弘隆(とびまつ・ひろたか)
陶磁器作家「飛松陶器」として2005年から活動。「飛松灯器 tobimatsu TOKI」の屋号で磁器の鋳込みを中心とした作品を発表。
http://tobimatsu-toki.blogspot.jp
小駒眞弓(こごま・まゆみ)
陶磁器の豊かな質感を生かしたジュエリーブランド「U’U’(ウウ)」として活動
http://uu-unununium.blogspot.jp
※トップの写真について
昼ごはんは、仕事の切りがいいところで、仕事場でそろって食べる。自作の折りたたみ式のテーブルを組み立てて、食卓に
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです