• どこに何があるか、ひと目でわかる家。金谷家は、不便を見逃さず、小さな工夫を積み重ねてできたものでした。今回も、日々の暮らしを過ごしやすくする、金谷さんのアイデアを拝見します。
    (『天然生活』2015年11月号掲載)

    小さな工夫が暮らしやすさを生む

    既製品は、最大公約数の人の暮らしに合わせたサイズだったり、デザインだったりします。金谷さんは、既製品に自分を合わせるのではなく、自分の生活に既製品を合わせるよう手を加えるタイプ。

    「私ね、自分は内職向きだと思うんです。家にいることが好きで、ぼーっとしていることはほとんどない。時間があれば、あれつくってみよう、ファイルを整理しよう、って動いちゃうタイプ。大きなものはつくれないけれど、カードにパンチで穴をあけたり、シーツに小さな布を縫い付けたり、それだけで使いやすくなるから、つい、ちまちま手を動かしちゃう」

    金谷さんがいう「内職のような仕事」のひとつに封筒づくりがあります。材料は、読み終わった雑誌やパンフレット、チラシなど。気に入ったデザインのものを一枚ずつ切り取り、封筒の形に切って、折って、のりで貼り付けたものを、つくりためておくのだそう。

    「ちょっとしたプレゼントに添えたり、フリーマーケットの売り上げを入れて渡したりするときに使うんです。きれいな写真やデザインのページを再利用できるし、大げさにならず気軽に使えるのがよくて、時間があればつくっています」

    収納スペースを決めたら、そこに収まるように管理する

    どこに何があるかすぐわかるということは、つまり、使いたいときにすぐに取り出せて、しまうときにもスムーズということ。しかし、そのためには、物量の管理も大切です。ファイルはこの棚に入る分だけ、洋服はクローゼットに収まる分だけ、と決めているそう。

    あふれないよう、着なくなった洋服や使わない雑貨などはフリーマーケットで売ったり、だれかに譲ったりして調整しているのです。

    「思い切りすぎて、あれ取っておけばよかった、ということも、たまにはあります。でも、なくなったからといって、すごく困るわけじゃないからいいんですよ」

    収納スペースを決めたら、そこに収まるように管理する。手放して後悔しても、すっきりした空間のためならよしとする。気持ちの切り替え方も見事です。

    「ちょっと手を加えたり、試しに新しいものを買ってみたりと、とにかく行動してみる。失敗しても、自分の家のことだから、大きな問題じゃないですしね。うまくいけば、意外とできるじゃない! 使えるじゃない!って楽しくなるんです」

    不便を解決できれば、うれしい。うれしくなって、もっと工夫したくなる。工夫して考えることが、さらに楽しくなる。そんないい連鎖が金谷さんのなかでくるくるとめぐっているのです。

    家での役割も明確化する

    「家では、柔らかいものは私、硬いものは夫が担当なんです」。たとえば、ポールを壁に取り付けたり、S字フックの径を小さくしたり、は、ご主人だそう。金谷さんは、紙や布仕事担当。気に入った雑誌のページや包装紙を使っての封筒づくりもそのひとつです。

    封筒のつくり方

    画像: 1 定規を使い、ふたになる部分を鉄筆(※)でなぞり、折り線をつける

    1 定規を使い、ふたになる部分を鉄筆(※)でなぞり、折り線をつける

    画像: 2 1の折り線から4mm下の位置に紙の端がくるように折り上げる

    2 1の折り線から4mm下の位置に紙の端がくるように折り上げる

    画像: 3 一度広げ、左右各1.5cmを、定規を使い鉄筆で折り線をつけてから折る

    3 一度広げ、左右各1.5cmを、定規を使い鉄筆で折り線をつけてから折る

    画像: 4 両端だけ、のりしろを残し、下の写真を参考に折り線に沿って切る

    4 両端だけ、のりしろを残し、下の写真を参考に折り線に沿って切る

    画像: 5 すべて切ったところ。のりしろやふたの端は、写真のように斜めに

    5 すべて切ったところ。のりしろやふたの端は、写真のように斜めに

    画像: 6 のりしろ左右2カ所を折り返し、下に不用な紙を敷き、のりを塗る

    6 のりしろ左右2カ所を折り返し、下に不用な紙を敷き、のりを塗る

    画像: 7 線に合わせて下部分を折り上げ、貼り付ける。はみ出したのりは、ふく

    7 線に合わせて下部分を折り上げ、貼り付ける。はみ出したのりは、ふく

    画像: 8 ふたの端をピンキングばさみで切る。金谷さんは3㎜ピッチを使用

    8 ふたの端をピンキングばさみで切る。金谷さんは3㎜ピッチを使用

    ※ 鉄筆がなければ、シャープペンシルなど先がとがったもので代用可。ただし、線を引かないよう、芯は抜いて使うこと。

    飾るものには使いみちがある

    キッチンの壁にあるのは、材質も色も違う4枚の木の板。木工作家・山本起生さんの作品で、2枚を組み合わせると鍋敷きになる。「壁にかけたくて頼んでつくってもらいました。しまわずに飾っておけるきれいな造形なので、目にもうれしいし、手に取りやすいんです」

    画像: 打ちっぱなしの壁の穴に、箸を利用したねじを自作して、かけている

    打ちっぱなしの壁の穴に、箸を利用したねじを自作して、かけている

    画像: 「気分で色の組み合わせが変えられて、使うたびに楽しいんです」

    「気分で色の組み合わせが変えられて、使うたびに楽しいんです」

    フライパンや鍋は重ねず、取りやすく

    キッチンは、シンクや調理台の下がオープンになっているタイプ。フライパンや鍋は手持ちのサイズや数を書き出し、重ねずに入る棚をつくってもらったそう。「ワンアクションで出し入れできるのがポイント」。キャスター付きだから、引き出せて掃除もしやすく。

    画像: 「重なっている道具をどかす手間が省けるだけでも、料理をしやすくなります」

    「重なっている道具をどかす手間が省けるだけでも、料理をしやすくなります」

    よく使うものほど、分ける

    洋服のボタンを付け替えたり、バッグの持ち手を取り替えたりと、既製品を自分好みにアレンジするのが得意な金谷さん。ボタンや糸はたくさんあるので、整理整頓が必須です。「しまってある箱や缶のふたを開ければ、すぐに何があるかわかるようにしています」

    画像: 刺しゅう糸は台紙に巻き、絡まりにくく。商品名を書けば買い足すときも便利

    刺しゅう糸は台紙に巻き、絡まりにくく。商品名を書けば買い足すときも便利

    画像: ボタンは、素材別、サイズ別に分け、透明の袋に入れて見えるように収納

    ボタンは、素材別、サイズ別に分け、透明の袋に入れて見えるように収納

    気に入ったものは、多めに買っておく

    同じ型のバケツが7つ。密閉容器が20個。「よさそうだと思ったら、まず3つくらい買って使ってみるんです。使い勝手がよければ、買い足しています」。これだ、と思ったものは思いきって数をそろえるのが金谷さん流。「廃番になったら悲しいから」

    画像: お風呂の水を庭や床掃除に使うための「ラバーメイド社」のバケツ

    お風呂の水を庭や床掃除に使うための「ラバーメイド社」のバケツ

    画像: 冷蔵庫の奥行きに合う長い密閉容器は販売終了のもの

    冷蔵庫の奥行きに合う長い密閉容器は販売終了のもの

    どこに何があるか、ひと目でわかる「一目瞭然の家」へ ⇒
    「暮らしに自分らしさを加えるアイデア」・どこに何があるか、ひと目でわかる「一目瞭然の家」へ ⇒

    <撮影/石黒美穂子 取材・文/晴山香織>

    金谷 操(かなや・みさお)
    20代は医療関係の雑誌編集を経験。結婚後はジャズ喫茶経営を経て、再び商業関係の機関誌編集に。5年前に仕事を辞め、現在は自宅の一角でフリーマーケットや手づくり展などを開催している。

    石黒美穂子(いしぐろ・みほこ)/撮影
    フォトグラファー。料理、インテリア、旅行などライフスタイル系をメインに活動中。2016年より東京・目黒区のセレクトショップ:MIGO LABO ディレクターも務める
    インスタグラム
    https://www.instagram.com/ishiguromihoko/
    MIGO LABO
    http://www.migolabo.com

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです

    This article is a sponsored article by
    ''.