(横山タカ子・著『信州四季暮し』より)
思い思いの緑を身にまとっていた木々の変化が、秋深いことを知らせてくれます。
風知草(ふうちそう)は黄金色に輝き、まるで黒髪から白髪へ変わるように「年齢を重ねまして」と自信ありげ。朴葉も柏葉も茶色く、皮をなめしたかのような艶を放ち、ばさっと音を立てて風に身を任す。
楓の紅も美しい中、我が家で一番目を引く葉は山ぶどうです。
一枚の葉の中に紅や黄色を配しながら、大きく体をゆらし、焦げ茶色の太い幹に添っています。幹から伸びる枝の先では、たくさんの巻きひげをいろいろな所にからませ、次に巡る季節の準備をしています。
どの葉も皆、精いっぱいに自分色を表現し、土に返る態勢を調え、地面に落ちます。
庭一面、落ち葉だらけの美しさ。
なかなか「土になるものか」と、色を発している様に同意しながら、窓越しの対話。「雪が降るからね」と、あきらめて大きな袋に拾い集め、腐葉土になってもらう作業は私の役目。
葉の下から、気早な水仙の芽が見えると、「これからが寒いんだから」と、昨年のおいしい腐葉土をふとん代わりにかけ、たしなめます。
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<撮影/本間 寛>
横山タカ子(よこやま・たかこ)
料理研究家。長野県大町市生まれ、長野市在住。長年、保存食を中心とした長野の食文化を研究すべく各地に赴き、料理名人から教わる。長野県の特徴でもある、野菜をたっぷりと使った保存食は「適塩」で作り、季節の食材は手をかけすぎず、素材を生かしてシンプルに食べることを信条とする。地元の農作物を広める活動にも尽力。大の着物好きでもある。