藤井小牧・著『カフェ風精進料理 こまき食堂』より
けんちん汁のつくり方
ひと晩おくことで、野菜自身からうま味がしみ出ます。アクの強い素材から炒めるのが、おいしくつくるポイント。
![画像: けんちん汁のつくり方](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2020/03/26/36936baae30e7120fa9f9fe0658fd026a92029c7.jpg)
材料 (4人分)
● 大根、ごぼう、にんじん | 各200g |
● 干ししいたけ(水でもどす) | 3枚 |
● こんにゃく | 1枚 |
● 木綿豆腐 | 1丁 |
● 小松菜 | 1束 |
● 昆布 | 5cm角2枚 |
● 精進だし(*) | 1リットル |
● ごま油 | 大さじ2 |
● しょうゆ | 大さじ3 |
つくり方
1 大根などの根菜類は、よく洗って皮つきのまま乱切りにする。干ししいたけは石突きを取って6等分に切り、こんにゃくはちぎる。
![画像1: つくり方](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2019/11/14/e96ff76ebf01898919dfccf1437572b8d2056ce4.jpg)
2 大鍋にごま油を熱する。干ししいたけを入れ、3分ほど炒める。香りが立ったら、ごぼうとこんにゃくを加えてよく炒める。ふたをして弱火にし、蒸らしながら3分ほどしっかりと炒める。
![画像2: つくり方](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2019/11/14/41213be3a738d1cfa5e0b45b6993bdbc221008a6.jpg)
3 中火に戻し、大根、にんじんを加え、さらに2~3分ほど炒める。しょうゆを入れてふたをし、ごく弱火にして5分ほど蒸らしながら炒める。野菜から水分が出てくる。
![画像3: つくり方](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2019/11/14/22803aea43dfb05a14ae5f58d8fc0a15717e13c6.jpg)
4 昆布、精進だしを加え、中火にする。野菜がやわらかくなるまで火をとおし、ふたをしてひと晩おく。
![画像4: つくり方](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2019/11/14/fe648949f4c4ab0e355299856360e24c74e6ffb0.jpg)
5 ひと晩おいて味が薄いようなら、塩少々(分量外)、うま味が欲しいなら、酒少々(分量外)を加え、火にかける。煮立ったら、手で握りつぶした豆腐、3cm長さに切った小松菜を入れ、ふたをして火を止める。豆腐が余熱で温まったら器によそう。
![画像5: つくり方](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2019/11/14/68aff29289b5f44edc58585678a8bfb1b132d484.jpg)
![画像6: つくり方](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2019/11/14/af4ed7f82ae290f7d4a391428d0596eea79428cb.jpg)
*精進だしのとり方
だしを加えると、どの料理も味わいがしっかりと決まります。肉や魚の強いうま味に慣れた舌には、野菜中心の料理は物足りなく感じがち。しかし、だしを加えることで満足感が生まれます。だしは、昆布としいたけが基本ですが、しいたけの香りを使いたくないときには、昆布だけでだしをとります。
![画像: *精進だしのとり方](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2019/11/14/66bfac281882fee42605a8dabbb21c6cf4625a0c.jpg)
干ししいたけ小3個と、昆布5cm角3枚を、水2リットルを入れた容器に入れ、3時間、できればひと晩つけ込む。
冷蔵庫で保存し、冬は3~4日、夏は2~3日で使い切る。
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精進料理の汁もの
たとえ、忙しくて家族にごはんをつくる時間が取れなくても、野菜がたくさん入っている汁ものとごはんさえあれば、なんとかなるものです。
だしは、時間があるときにまとめてとっておいてもよいかもしれません。
味噌汁なら、冷蔵庫にある野菜をだしでさっと煮て、味噌を手早く溶き入れれば完成。味噌を溶き入れずにミキサーにかければ、それは季節野菜のポタージュにもなります。
精進料理の考え方
1 五味・五色・五法
五味は、「甘・塩・酸・辛・苦」、五色は「黒・白・赤・黄・青(緑)」、五法は「生・煮る・蒸す・揚げる・炒める」を表します。この、五味・五色・五法を効果的に組み合わせることによって、栄養がととのい、バランスのよい食事をつくることができるのです。また、見た目も美しく、食べる側も楽しい気分になります。
2 「身土不二(しんどふじ)」
人間は自然の中の一部であり、自然環境の中で生かされています。その土地に生きる生物は、その土地で得られる食物を食べることで、その地で生きるための適応力を身につけているという法則が、この「身土不二」です。また、住んでいる土地、地域に身近な産物を大切にするという、「地産地消」を勧める言葉でもあります。
3 「旬」のものを食べる
旬の野菜や山菜にはパワーがあります。旬の時季にはどの野菜も最もエネルギーを蓄えているので、その季節に人間が一番必要とする栄養素や元気をもらうことができるのです。たとえば冬の根菜類は体を温め、夏の瓜類は熱を冷ます効果が。また、旬の野菜はその季節だけでなく、次の季節に合う体をつくります。
4 「一物全体(いちもつぜんたい)」
精進料理の調味料は控えめです。天地の恵みである農産物を大切にし、その素材の持ち味を十分に生かすことが、調理の基本だからです。また、野菜などは丸ごとすべてを使い切ります。命あったものを大事にして粗末にしない考えの根本は、殺生しないことと関連しており、何ひとつ、むだにしないことにつながります。
5 追いかけて逃げるものは食べない
精進料理では、魚も肉も口にしません。何を食べ、何を食べないのか。その簡単な見分け方のひとつが、「追いかけて逃げるものは食べない」です。動物不殺生は、精進料理の基本中の基本。そのこともあり、精進料理のだしにはかつお節が使われることはなく、昆布としいたけなどのきのこが使われているのです。
<料理/藤井小牧 撮影/川村 隆 取材・文/福山雅美>
藤井小牧(ふじい・こまき)
東京・秋葉原にある「カフェ風精進料理 こまきしょくどう」店主。臨済宗僧侶であり、精進料理家としても知られる藤井宗哲氏と、精進料理家の藤井まり氏との間に生まれ、幼いころより精進料理とともに育つ。現在はお店に立つかたわら、東京の生産者・加工業者を応援する活動「メイドイン東京の会」にも参加している。2020年3月に『こまき食堂』(扶桑社)が発売。
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こまきしょくどう
東京都千代田区神田練塀町8-2
TEL.03-5577-5358