(『天然生活』2015年7月号掲載)
肉、魚のおかず
—献立の主役となる肉、魚を使ったおかずについて教えてください。
金・山 : タナカさんの豚のグリルはインパクトがありますね。真っ先に目がいっちゃいます。
タ : これは友人を家に呼ぶときの定番おもてなしメニューです。塩をすり込んだ豚のかたまり肉に、オレガノ、イタリアンパセリ、ローズマリーなど、スーパーで手に入りやすいハーブを数種類巻きつけて、オーブンで焼くだけなんです。焼いている間は、ほかの料理をつくれて便利ですよ。この肉を、ばーんとテーブルに置くだけで特別な食卓を演出できるので、ホームパーティでは喜ばれます。
金 : ジューシーでおいしい。温度は、どのくらいで焼くんですか?
タ : 140℃で、じっくり焼きます。時間は肉の大きさに合わせて調節します。今回は1kgなので約1時間焼きました。家庭で食べるなら300g程度がおすすめ。そのくらいのサイズなら20~30分焼けばちょうどいいと思います。マスタードをつけて味に変化をつけて楽しむことも多いです。
山 : シンプルな味つけだから、小さく切ってサラダに入れたり、チャーハンに混ぜたりしてもおいしそうですね。金子さんの、コロッケを春巻きの皮で揚げるアイデアはどこから思いついたんですか?
金 : うちは、余ったおかずを春巻きの皮で揚げることが多いんです。これも、余ったポテトサラダを揚げて思いつきました。塩麴と酒、みりんにひと晩、漬け込んだとり肉をひと口大にして、粗みじん切りにした玉ねぎと一緒に焼きつけます。そして、ゆでたじゃがいもを粗くつぶして春巻きの皮で巻きます。クリームチーズやスモークチーズを入れてもおいしいですよ。
山 : 衣をつけて揚げるのと違って、これだと手も汚れないし、手軽でいいですね。さわやかなタルタルソースもクセになります。
金 : マヨネーズとゆで卵に、ピクルスの代わりに、きざんだみょうがとしそを入れて、和風に仕上げました。
タ : 残りものを春巻きの皮で包むという発想はなかったなぁ。山㟢さんのカジキはスパイシーな香りが食欲をそそりますね。
山 : うちは、朝ごはんに出したおかずをお弁当にも入れることが多いので、傷まないようにスパイスを利かせるようにしています。毎日、お弁当をつくっているので、いかにふだんのおかずをお弁当に流用するかということを考えて料理しています。
金 : にんにくではなく、スパイスだと、食後のにおいが気にならなくていいですね。ふわふわの食感に仕上げるコツはありますか?
山 : タイムを入れたオリーブオイルに1時間漬けたカジキに米粉とクミンをまぶして、フライパンで焼きました。米粉だと、時間がたっても、べちょっとしないんです。あと、ふたをしてじっくり焼くのもポイント。カジキでなくても、アジや鯛など水分が出にくい魚なら何でも大丈夫です。あまりスパイスの味が強いと子どもが食べてくれないので、クミンはホールタイプではなくパウダータイプを使っています。今回はアスパラと合わせました。
タ : 時間がたって冷めると、味と食感が絶妙に変化するんです。味がしみ込んで、しっとりするというか。これだったら朝と同じおかずでも飽きなくて、うれしいです。
小鉢のおかず
—主菜を引き立ててくれる名脇役、小鉢のおかずは、皆さん、どんなものをつくっていらっしゃいますか?
金 : これからの季節、ぼくはトマトとアボカドを組み合わせることが多いですね。
タ : 金子さんのトマトとアボカドにかかっているたれは、ごまと何を合わせているんですか? ほどよい酸味がすごい好みです。
金 : これは、湯むきしたトマトの種を取り除いてすりおろしたものに、味噌、しょうゆ、ごまを合わせているんです。具材とソースにトマトをダブル使いしています。
山 : へぇー! たれにもトマトを使ってるんですか。トマトをすりおろしちゃうなんて、すごいアイデア。
金 : 夏、そう麵を食べるときに麵つゆに何を加えて食べたらおいしいかな、と考えていて、思いついたんです。麵つゆ単体だと、子どもはすぐに飽きちゃうし、野菜不足になってしまうので。暑い日は、凍らせたトマトをすりおろすと、シャリシャリした食感が面白いですよ。
山 : うちの子も喜びそう。試してみます。
金 : ぼくはアボカドが好きなので少し大きめに切りましたが、具材のサイズは好みに合わせて調整してくださいね。
タ : 金子さんの料理って、ごまの魅力を生かしたものが多いですね。口の中に、ふわっとごまの香りが広がります。私の定番は、さっと塩ゆでした青菜と菊の花を少量のしょうゆでのばしたゆずこしょうであえたもの。今回は水前寺菜を使いました。水前寺菜と菊って、少し土っぽい香りが似ているような気がして。似た香りのものを合わせるのが好きなんです。
山 : さっぱりとしているから、どんな料理にも合いそうです。菊の黄色もかわいい。
タ : ゆずこしょうは味が強いので、ほんの少し、香りづけ程度の量を入れるだけで十分。私は自家製のものを使っていますが、売っているものでも大丈夫です。刺激が欲しいときは少し多めに、ゆずこしょうを入れてみてください。菊を入れると食感にも違いが出て、いいアクセントになるんですよ。
金 : ほかには、どんな野菜でつくることが多いですか?
タ : 季節に合わせて、小松菜やつるむらさきなどを使いますね。夏は、おくらなどでもおいしいです。青菜は、ゆでるとかさが減って、たくさんの量を手軽に食べられるので、最近、野菜不足かも、と感じるときにつくるようにしています。定食のように、ごはんと味噌汁と合わせていますね。朝昼晩と、食べるタイミングを問わないので大活躍してくれるおかずです。
金 : 山㟢さんの湯葉ののりあえは磯の香りがいいですね。こののりのたれは、どうやってつくっているんですか?
山 : これ、味のりをしょうゆにひたしただけなんですよ。料理家さんに紹介するなんて、恥ずかしいくらい簡単なんです。味のりに味がしっかりとついているので、味つけなどは一切していません。少しわさびを加えてあげると、より、湯葉と相性がよくなると思います。うちでは、おくらを加えて、のりだれが全体にからむように混ぜてから食べています。
金 : のりって子どもにも人気があるから、このたれは、ほかの料理にも応用できそう。
タ : 私、料理家になる前、実は化学の研究をしていたんですが、のりって、いろんな種類のうま味成分が含まれているから、ちょっと加えるだけで料理をおいしくしてくれるみたいですよ。
<撮影/有賀 傑 取材・文/高田真莉絵>
つむぎや 金子健一(かねこ・けんいち)さん
マツーラユタカさんとフードユニット「つむぎや」として活動中。和食ベースのオリジナル料理に定評あり。新刊に『らくらく!和食パスタ100』(主婦と生活社)など。
ヒバリ タナカセイコ(たなか・せいこ)さん
旬の野菜や、体にやさしい食材を使ってつくる料理を提供する東京・世田谷の「ヒバリ」店主。ケータリング業や、雑誌などでも活躍中。
http://hibarigohan.com
お米農家やまざき 山㟢瑞弥(やまさき・みずや)さん
夫の宏さんと茨城で無農薬のお米づくりを行う2児の母。ごはんと合うおかずのレシピ集『お米やま家のまんぷくごはん』(主婦と生活社)が発売されたばかり。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです