• 「この人のつくる料理はとびきりおいしい」と評判の3人に、自分も家族も大好きないつものおかずを持ち寄っていただき、おかずづくりに対する熱い思いをとことん語り合ってもらいました。今回は、「野菜のおかず」と「乾物おかず」について。
    (『天然生活』2015年7月号掲載)

    野菜のおかず

    画像: 左から、山㟢さんのポテトサラダ、タナカさんのスチーム野菜にオイルとディップ、金子さんの大和いものお好み焼き

    左から、山㟢さんのポテトサラダ、タナカさんのスチーム野菜にオイルとディップ、金子さんの大和いものお好み焼き

    —野菜が主役のおかずを教えてください。調理方法も、焼いたり、蒸したりと、皆さん、こだわりがありそうです。

    金 : ぼくは、小麦粉や卵などのつなぎを一切使わないお好み焼きが定番です。すりおろした大和いもに塩・こしょうをして、あとは好きな具材を入れるだけ。どんな具材を入れても失敗しないので、「フリースタイルお好み焼き」とも呼んでいます。桜えびを入れてもよし、カレー風味に炒めたひき肉を入れてもよしなので、冷蔵庫の在庫整理をしてくれますよ。

    タ : 金子さんがつくるところをちょっと見ていたのですが、大和いもだけでこんなに丸くきれいに焼けるなんて驚きでした。初めてでも上手につくれるものですか?

    金 : 大和いもは強い粘りけがあって、まとまりやすいので、フライパンに流し入れてスプーンで形をつくってあげれば、くずれることはありません。フライパンを、円を描くように動かしながら焼けば、きれいな形になります

    山 : もちもちの生地とぷちぷちのとうもろこしの食感が面白いですね。生地も弾力があってぎっしりとしているから、メインのおかずとしてもよさそうです。

    金 : お好み焼きなので、ソースでもいいんですが、わさびしょうゆでさっぱりいただくのがおすすめです。試してみてください。

    タ : 私の定番は、野菜を蒸しただけのシンプルなもの。食感を残したいので、野菜は通常よりちょっと短めの時間で蒸しています

    山 : 野菜本来のもつ甘味を堪能できるおかずですね。オリーブオイルをかけているのには、理由はありますか?

    タ : 単純に、オリーブオイルが好きなんです。なので、たっぷりとかけました。香り高くなって、より食べやすくなる気もします。それにコチュジャン、ひよこ豆の味噌とクリームチーズのディップをつけて食べるのが私流です。

    画像: 野菜ごとに蒸し時間を変えています

    野菜ごとに蒸し時間を変えています

    金 : 味噌とチーズって発酵物同士だから、相性もいいですよね。

    山 : そのまま食べてもおいしいのに、2種類のディップを交互につけながら食べ進めると止まらなくなっちゃいますね。

    タ : 今回は、うるい、アスパラ、菜の花と緑の野菜でそろえましたが、家にある野菜でつくってもいいと思いますよ。

    金 : 山㟢さんのポテトサラダ、すごい豪華。半熟卵とじゃがいもの組み合わせ、大好きです。

    山 : マッシュしたじゃがいもに、細かく切ったりんごとセロリの葉と茎、玉ねぎ、それにディル、塩ケッパー、塩レモンを加えています。最後にマヨネーズを少し混ぜ合わせて完成です。

    タ : いろいろ入っているんですね。嚙むたびにいろんな要素が口の中に広がります。たくさん発見があるから、食べ飽きない。

    金 : りんごの甘味がセロリのクセをカバーしてくれますよね。

    山 : そんなにおほめいただいて、うれしいです。もともと父親が大のポテトサラダ好きで、いつもつくってくれていたんです。その味を引き継ぐのもいいんですけど、やっぱり自分流をつくりたくて。いろいろ試した結果、たどり着いたのがこれです。失敗して家族のだれも食べてくれなかったものを、泣く泣く、お焼きにして食べたかいがありました。

    タ : これには、そんな歴史があるんですね。

    山 : ポテトサラダって、少量つくるより一気につくるほうがおいしいと思っているので、保存できて、なおかつ時間がたつとさらにおいしくなるようにしてあります。お弁当おかずとしても使えますよ。

    乾物おかず

    画像: 左から、山㟢さんのかんぴょうと干ししいたけの煮もの、タナカさんのひじきサラダ、金子さんの車麩のから揚げ

    左から、山㟢さんのかんぴょうと干ししいたけの煮もの、タナカさんのひじきサラダ、金子さんの車麩のから揚げ

    —日持ちもして、常備しておくと便利な乾物を使ったおかずを紹介してください。

    金 : ぼくのは、酒、しょうゆ、みりん、すりおろしたにんにくとしょうが、それに、はちみつ、ごま油に漬け込んだ車麩を片栗粉で揚げたものです。たれに漬け込む前に車麩は水でもどしておいて、余分な水けをしぼるのがポイント

    タ : 肉のようで、お麩のもちもちっとした食感のよさも楽しめて、何個でもいけちゃいそう。

    山 : あつあつのあんをかけたり、玉子とじにしたりしてもおいしそうじゃないですか? 可能性がどんどん広がりますね。

    金 : おっ、いいですねぇ。今度、試してみます。これは、つむぎやのケータリングでもよくお出ししているメニューなんです。以前、お客さま同士が、このから揚げを食べながら「これはとり肉かな?」「いや、豚肉でしょ」と会話していたのが印象に残っています。車麩っていろいろ種類があるんですが、渦巻きが4回転している、いわゆる4回巻きという大きくて厚めのものを使うと、よりおいしく、お肉っぽく仕上がると思います。好き嫌いが多い息子も、これは「おいしい、おいしい」といってばくばく食べてくれるので、家での登場回数もかなり多め。

    タ : あまり車麩を使った料理ってつくったことがなかったので、アイデアをもらえてうれしいです。

    山 : タナカさんのひじきは、これぞ「ヒバリ」さんという味ですね。

    タ : そうですね。「ヒバリさんといえばひじきだよね」といわれることもあります(笑)。このひじきのサラダは毎日のように食べているかも。ひじきと、細かく角切りにしたゴーダチーズ、玉ねぎ、セロリを合わせたものを、バルサミコ酢、米酢、しょうゆで味つけをしています。他のおかずのじゃまをしないので、和洋中、どんな主菜のときにもおすすめです。パンにはさんでサンドイッチにしてもおいしいですよ。

    金 : この小さいチーズがときどき口の中で混ざってくるのがアクセントになりますね。

    タ : サンドイッチ以外だと、骨までやわらかく煮た魚のコンフィと混ぜてホットサラダにしたり、蒸したさつまいもと合わせて甘味をプラスしたりと、いろいろとアレンジしています。

    山 : 私のは、どこか懐かしい味がする、定番の煮ものです。田舎のおばあちゃんがつくるような、こってりとした甘い味に仕上げています。若いときはこういう味は好きではなかったのですが、最近、無性に食べたくなるときがあって、よくつくるようになりました。

    金 : かんぴょうとしいたけは別々に炊いているんですか? 

    山 : 一緒だと好みの味にならなかったので、別々です。両方とも干ししいたけのもどし汁に濃口しょうゆ、みりん、砂糖を入れて炊いて、味が統一されるようにしています。しいたけのほうをより甘めにするとバランスがとれますよ

    タ : 両方の味がぼやけることなく、より際立っていますね。

    画像: しいたけのもどし汁を有効活用します

    しいたけのもどし汁を有効活用します

    山 : 濃いめの味つけなので、ちらし寿司の具にすることも。田植えや収穫時など畑が忙しくなる前につくっておいて、忙しいときには楽をできるようにしています。

    画像: 今回、紹介したおかず全18品がずらっと並んだ食卓。「疲れたときに、この光景を思い出したら、元気が出そう」(山㟢さん)

    今回、紹介したおかず全18品がずらっと並んだ食卓。「疲れたときに、この光景を思い出したら、元気が出そう」(山㟢さん)



    <撮影/有賀 傑 取材・文/高田真莉絵>

    画像1: 乾物おかず

    つむぎや 金子健一(かねこ・けんいち)さん
    マツーラユタカさんとフードユニット「つむぎや」として活動中。和食ベースのオリジナル料理に定評あり。新刊に『らくらく!和食パスタ100』(主婦と生活社)など。

    画像2: 乾物おかず

    ヒバリ タナカセイコ(たなか・せいこ)さん
    旬の野菜や、体にやさしい食材を使ってつくる料理を提供する東京・世田谷の「ヒバリ」店主。ケータリング業や、雑誌などでも活躍中。
    http://hibarigohan.com

    画像3: 乾物おかず

    お米農家やまざき 山㟢瑞弥(やまさき・みずや)さん
    夫の宏さんと茨城で無農薬のお米づくりを行う2児の母。ごはんと合うおかずのレシピ集『お米やま家のまんぷくごはん』(主婦と生活社)が発売されたばかり。

    ※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです


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