• 1974年6月25日。当時、上智大学フランス語学科の3年生だった堀井和子さんは、約30人のクラスメイトと一緒に、ヨーロッパへの研修旅行に旅立ちました。堀井さんにとっては、初めての海外旅行。フランス・パリを起点に、スイス、ドイツ、チェコ、オーストリア、イタリアなどをめぐる、約2カ月半の長い旅でした。堀井和子さんが、初めて旅した異国の地で、夢中で描いた料理の数々。びっしりと埋めつくされたページには、あのときのワクワクした気持ちが詰まっています。今回は、ホームステイをしたブルターニュや、プラハ、イタリアでの日記を見せていただきました。
    (『天然生活』2017年2月号掲載)
    画像: ホームステイ先の絶品トマトファルシ ブルターニュでは、夫婦と幼い子どもふたりの家庭にホームステイ。マダムの家事を手伝いながら、料理を教わった。「昼には、お父さんが焼きたてのバゲットを抱えて帰ってくるんです。1時間以上かけて食事してから、また仕事に戻っていきました」

    ホームステイ先の絶品トマトファルシ
    ブルターニュでは、夫婦と幼い子どもふたりの家庭にホームステイ。マダムの家事を手伝いながら、料理を教わった。「昼には、お父さんが焼きたてのバゲットを抱えて帰ってくるんです。1時間以上かけて食事してから、また仕事に戻っていきました」

    ページをめくるたび、あのときの興奮や喜びがよみがえる

    画像: ブラウンソースが印象的だったプラハ 「褐色の街」という印象だったチェコスロバキア。「当時は銃を持った兵隊が街を歩いていて、他国とは違う雰囲気でした」。料理は煮込み料理など、こってりした味のものが多かったそう。「デザートにはチョコレートケーキ(左下)がよく出てきました」

    ブラウンソースが印象的だったプラハ
    「褐色の街」という印象だったチェコスロバキア。「当時は銃を持った兵隊が街を歩いていて、他国とは違う雰囲気でした」。料理は煮込み料理など、こってりした味のものが多かったそう。「デザートにはチョコレートケーキ(左下)がよく出てきました」

    食への飽くなき好奇心は、食事以外のときにも発揮されました。少しでも自由時間があると、その町の市場を探し、集合時間ぎりぎりまで散策。また、持参したお小遣いをやりくりして、カフェで友達とケーキを分け合って食べることもありました。そのひとつひとつも、ノートに描かれています。

    「当時、日本はチーズケーキが流行っていたので、本場のものをいろいろと試してみたり。クラスメイトのなかには、せっかくヨーロッパに来たのだからと、ファッションの有名ブランド店へ行く人もいましたが、私は興味がなくて。単独行動も多かったですね」

    画像: もちろん、旅の間に撮った写真も保管してある。「人の写真はほとんどなくて、もっぱらマルシェやパン屋など、食べ物ばかり」

    もちろん、旅の間に撮った写真も保管してある。「人の写真はほとんどなくて、もっぱらマルシェやパン屋など、食べ物ばかり」

    帰国する飛行機での機内食までノートに描いた堀井さん。社会人になってからも、旅に出るたびに、絵日記をつけました。スタイリスト時代は、食べ物以外に、器やテーブルコーディネートも。最近では、印象的だった美術館の作品や、気になった建築のディテールなども描いています。

    「絵としては、最近のほうがこなれているけれど、自分としては、この学生時代の旅日記にとりわけ愛着があります。稚拙な絵から、必死さが伝わってくるんです」

    40年以上たっても、まったく新鮮さを失わないノート。いまでもページをめくるたび、異国の地で次々と新しいものを吸収しようとしていた、あのときの興奮や喜びがよみがえってきます。

    画像: イタリアで出合ったローストビーフ イタリアに入ると、フルーツの「マチェドニア」やアイスクリームなどを食べる機会が増え、友人と大喜び。「忘れられないのは、シエナやアッシジのレストランで食べた冷製ローストビーフとツナソース(左中央)。いまも、ときどき、つくります」

    イタリアで出合ったローストビーフ
    イタリアに入ると、フルーツの「マチェドニア」やアイスクリームなどを食べる機会が増え、友人と大喜び。「忘れられないのは、シエナやアッシジのレストランで食べた冷製ローストビーフとツナソース(左中央)。いまも、ときどき、つくります」



    <撮影/公文美和 取材・文/嶌 陽子>

    堀井和子(ほりい・かずこ)
    センスあふれるスタイリングや審美眼が人気で、著書も多数。料理スタイリスト、粉料理研究家を経て、2010年に「1丁目ほりい事務所」を設立。日用品のデザインに取り組んでいる。

    ※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです


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