• 19世紀、必要最低限のものだけで自給自足の日々を送っていたシェーカー教徒。そんなシンプルな暮らしのなかで生まれた、美しいシェーカー家具の魅力を探りに、「UNOH家具工房」の宇納正幸さんを訪ねました。今回は、シェーカー教徒たちの精神を受け継ぐ、簡素な美と使い勝手に富んだ家具や小物の数々を紹介します。
    (『天然生活』2016年7月号掲載)

    アリスファームからシェーカー家具の制作を引き継いで20年、やっと自分のものになってきた、と感慨深げに語る宇納さん。

    画像: 展示室には、アリスファームから譲り受けた昔の旋盤が鎮座。「丸棒を加工するためのものです。鋳鉄の質感がいいですよね」

    展示室には、アリスファームから譲り受けた昔の旋盤が鎮座。「丸棒を加工するためのものです。鋳鉄の質感がいいですよね」

    「正面からきちんと向き合えるようになったのは、ここ最近のこと。2年前にあらためて、いまは博物館になっているアメリカのコミュニティを訪れたんです。かつて、シェーカー教徒が暮らした土地の空気をじかに感じることで、自分のイメージは間違っていなかった、と思えました」

    画像: 収納力抜群の、背の高いカップボード。現在、お弟子さんの寮として使っている建物のキッチンで活躍している

    収納力抜群の、背の高いカップボード。現在、お弟子さんの寮として使っている建物のキッチンで活躍している

    画像: 鏡やキーボックスなどの小物も制作。ペグボードと呼ばれるフック付きの板も、シェーカーらしいアイテムのひとつ

    鏡やキーボックスなどの小物も制作。ペグボードと呼ばれるフック付きの板も、シェーカーらしいアイテムのひとつ

    純粋な手仕事が生んだシェーカー家具の魅力を、直接、お客さんに伝えたいという気持ちから、宇納さんは自作の家具や小物を流通には乗せず、主に展示会や工房で販売しています。

    「軽くて丈夫で日本の暮らしにもなじみやすいので、長く使っていただけると思いますよ」

    宇納さんの自宅で使い込まれ、飴色になった椅子やテーブルの佇まいは、そのことを何よりも雄弁に物語っていました。

    画像: シンプルな暮らしを整えるシェーカー教徒の家具|シェーカーの精神が息づく椅子や収納家具たち

    シェーカーの精神が息づく椅子や収納家具たち

    シェーカーの勤勉な手仕事を受け継ぐ家具や小物は、見飽きない簡素な美と使い勝手に富んだものばかり。無垢の木ならではの経年変化も楽しめます。

    オーバルキャリア

    コミュニティ内で物を手軽に持ち運び

    画像: オーバルキャリア

    オーバルボックスのふたの代わりにハンドルが付いているので持ち運びに便利。シェーカー教徒は編み物道具入れとして使うことが多かったそうだが、お茶やコーヒーセットなどに幅広く活用したい

    「オーバルキャリア」(W31×D20×H25cm)/UNOH家具工房 TEL.075-854-0231(以下同)

    オーバルボックス

    こまごました日用品をしまうシェーカー教徒の道具箱

    画像: オーバルボックス

    本体はメープル材、ふたと底はマツ材、ジョイントは銅のビスなど、シェーカーのオリジナルと同じ素材を使用。スワローテイルと呼ばれる独特の継ぎ目は、木の伸縮による割れ目を防ぐための機能

    「オーバルボックス」上から、(W16×D10×H6cm)、(W19×D13×H7cm)、(W22×D16×H8cm)、(W25×D18×H10cm)、(W29×D21×H11cm)

    ペグボード/コートハンガー

    椅子も衣類もひっかけた壁掛けフックハンガー

    画像: ペグボード/コートハンガー

    壁に付けたペグボードに、シェーカー教徒は、洋服や帽子をはじめ、身のまわりのものをかけて、床をすっきりさせていた。フレキシブルな長さでオーダー可能。ハンガーも当時のデザインを復刻

    ペグボード(W90×D9.5×H8cm)、コートハンガー(W45×H10cm)

    ソーイングチェスト

    布を裁断したり、測ったり、針仕事で活躍した作業台

    画像: ソーイングチェスト

    シスターたちの針仕事に使われたチェストは、布を広げて裁断できるよう、天板が折りたたみ式。コンパクトなチェストとしても、さまざまな作業用テーブルとしても使える、多機能な家具

    「ソーイングチェスト」(W90×D40〈広げた時60〉×H70cm)

    カウンターチェスト

    キッチンにも置かれた作業台兼、収納ボード

    画像: カウンターチェスト

    工房や台所をはじめ、多様な労働の場に置かれ、作業台として重宝された。収納も充実しているので、リビングの主役としても活躍しそう。脚はメープル材、そのほかはアメリカンチェリー材を使用

    「カウンターチェスト」(W230×D48×H95cm)

    カンタベリースタンド

    キャンドルを置くための小さくて優美なテーブル

    画像: カンタベリースタンド

    電気のない時代だったため、キャンドルを置くためにつくられた小テーブル。シンプルなアールを描く3本脚が特徴。玄関先や小さなコーナーに置いて、花やオブジェを飾っても映える

    「カンタベリースタンド」(W41×D41×H66cm)

    ハンコックテーブル

    掃除のしやすさも考慮された2本脚のダイニングテーブル

    画像: ハンコックテーブル

    2本脚のすっきりしたつくりで、掃除がしやすく椅子も置きやすい大テーブル。マツ材の天板の下に渡された幕板というパーツが、左右のメープル材の脚をつないで補強の役割を果たす

    「ハンコックテーブル」(W180×D90×H70cm)

    カンタベリー・ライティングテーブル

    コンパクトなデスクで日々の出来事を記録して

    画像: カンタベリー・ライティングテーブル

    写真のほか、宇納さんは、ひとまわり小さいもの、大きいものの3サイズを制作。脚の形も丸棒型と角型の2種類から選べる。本来の書き物用だけでなく、少人数の食事や、ちょっとした作業にも

    「カンタベリー・ライティングテーブル」(W90×D50×H70cm)

    ストレート・チェア/エンフィールド・チェア/ツースラットチェア

    簡素を極めた椅子は、シェーカーの機能美の象徴

    画像1: ストレート・チェア/エンフィールド・チェア/ツースラットチェア

    左から、デザインを時代順に。左は、シェーカー教が生まれた初期のタイプ。真ん中は時代とともに洗練された完成形といえる美しさ。後脚の先にティルター(下の写真)が付いているのは、真ん中のタイプのみ。背の低い右の椅子は、主にダイニングで使われていた。細長いそれぞれの背の先のデザインは、コミュニティによって異なっていたそう

    左から、「ストレート・チェア」(W47×D41×H105×SH44cm)、「エンフィールド・チェア」(W47×D37×H101×SH42cm)、「ツースラットチェア」(W47×D37×H67×SH42cm)

    画像2: ストレート・チェア/エンフィールド・チェア/ツースラットチェア

    レバノンスツール

    高さが変わるスツールは多様なシーンと場所に対応

    画像: レバノンスツール

    多目的に使われたこのスツール、真鍮のジョイントが付いたブーツと呼ばれるパーツを下に差し込むと高さが増してハイスツールに。より便利なものへと改良を重ねた、職人の柔軟さがうかがえる

    「レバノンスツール」小(W37×D37×H45×SH42cm)、大(W47×D37×H70×SH42cm)

    ワークチェア

    ものづくりと真摯に向き合うハイチェア

    画像: ワークチェア

    座面が高く、さっと腰かけることができるので、室内の作業用として幅広く使われていた。ちなみに、テープ編みの座面の椅子は8種類のテープから選べて、縦横で違う色の組み合わせも自由

    「ワークチェア」(W47×D37×H97×SH65cm)

    ハンコックベンチ

    機能の追求から生まれたシンプルなベンチ

    画像: ハンコックベンチ

    使わないときは解体して壁に収納できるよう、オリジナルのつくりに忠実に、接着剤を使わず組み立てられたベンチ。アールのデザインは、床と接する部分を少なくして、すっきりと見せる効果も

    「ハンコックベンチ」大(W150×D26×H43cm)、小(W52×D26×H43cm)

    アームレス・ロッキングチェア

    体を揺らしながらのんびり針仕事を

    画像: アームレス・ロッキングチェア

    シスターたちが腰かけて体を揺らしつつ針仕事に励んだといわれるロッキングチェア。アームがないので、脇のテーブルに置いた道具に手を伸ばして取ったり置いたりしやすいつくり

    「アームレス・ロッキングチェア」(W52×D71×H94×SH40cm)

    アームレス・ロッキングチェア・ウィズ・ドロワー

    引き出しが付いて便利さがさらにアップ

    画像: アームレス・ロッキングチェア・ウィズ・ドロワー

    シェーカー教徒は、より使いやすく機能を追求。裁縫がしやすいように、収納スペースをプラスしたものも。宇納さんのは蟻組み式だが、元は釘で引き出しを打ち付けた簡素なつくりだったそう

    「アームレス・ロッキングチェア・ウィズ・ドロワー」(W52×D71×H94×SH40cm)

    エンフィールド・セッティ

    祈りの場で使われていた端正な美しさのベンチ

    画像: エンフィールド・セッティ

    教会で祈りを捧げる際に皆が座ったというベンチは、連続する細身の背棒が繊細な美しさ。背棒と脚部には丈夫なメープル材、座面にはたわみの少ないマツ材と、適材適所の工夫が施されている

    「エンフィールド・セッティ」(W150×D38×H80×SH41cm)



    <撮影/ヨシダダイスケ 取材・文/高瀬由紀子>

    宇納正幸(うのう・まさゆき)
    1960年、京都市生まれ。アリスファームを経て、「UNOH家具工房」を設立。1997年から引き継いだシェーカー家具を中心に、さまざまな家具制作を手がける。

    ※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです


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