• 生活研究家の阿部絢子さんのドタバタな日常の失敗談を綴るエッセイの連載です。奇数月22日更新。今回は、ホームステイ先のイタリアでのお話。

    30年ほど前から、ライフワークをホームステイと決め、毎年出かける。日本以外での人々の暮らし観察を通し、「暮らしとは何だろう?」を追い続けているからだ。2019年、選んだ国はイタリア。私との相性のいい国である。

    ステイ先はビサ・ローサ。ローマから車で2時間(バスで4時間)、アドリア海に面した小さな村。夏には芋の子を洗うほどの避暑地と変貌する。

    ホスト家族は、夫婦二人。元ミュージシャンの夫と高校教師の妻。期間は1週間。

    到着翌日から、マザーの働く高校を訪問し、生徒たちに、「日本では主に妻が家事を引き受けているが、みんなの家庭ではどうか?」と質問。反対に、「現在、日本と韓国の仲が悪いが今後どうなると思うか?」との質問に刺激された。

    近くの小観光地ではマザーの親友たちとジェラートを堪能。一人での海辺散歩など楽しい日々を過ごし、いよいよ明日は帰国という前日の午前7時過ぎのことだ。

    隣町の大きなマーケット見学のため、私は向かった。到着後、「さてトイレを」と、横断歩道を渡っていた時、脇見をすると清掃員が、ごみを収集する姿が。うん、ゴミ収集か?と数秒、立ち止まった。

    と、その瞬間。ドーン! 衝撃が。

    「え、死ぬの? 明日、日本に帰れるの?」まだ走馬灯は見えてこない。

    画像: イタリアで救急車|阿部絢子の七転び八起き

    身体にドーンと衝撃が伝わった途端、私は亀がひっくり返ったように、路上に転がっていた。人の手を借りなければ、立ち上がれない。

    やがて意識がハッキリ。脇の自動車から、慌てて女性が駆け寄ってくる。同時に清掃員が「動かないで、今、救急車を呼んだ」と制止する。自動車が身体にぶつかったのだ。

    急に左腕が痛い。ほどなく到着した救急車に乗せられ、アッという言う間に、車内で脈拍、血液検査、心電図検査が的確に行われていく。転んでもただでは起きない私。人生初の救急車。すかさず救急隊員に携帯電話を渡し、検査中の自分を撮影してもらうのだから、我ながらなかなかだ。

    病院に到着し、病院処置室に運ばれ、医師2人の話し合い、レントゲン、MRIなど検査の他、ワクチン接種推奨、それは断固拒否。

    あ、そうだった。我に返ってトイレに行きたいことを思い出し、「トイレ!」と訴えるが、却下。しぶしぶ検査を。だがここはイタリア病院、検査技師同士は手より口ばかりを動かす始末。たかが3種類の検査なのに少しも進まない。トイレは限界状態。

    2時間後、ようやく終了。もう膀胱は破裂寸前、「限界!トイレ」と叫ぶ。「ではスリープ用ね」とオムツ対応となった。ホッとしたのも束の間、イタリア製オムツは脇ゴムが緩く、漏れ出し、濡れて散々だ。

    一方、身体のほうは「パーフェクト」と医師の結論をもらい、翌日、無事に日本へ帰国した。


    <文/阿部絢子 イラスト/北村人>

    阿部絢子(あべ・あやこ)
    生活研究家。消費生活アドバイザー。「万人が家事を科学的に効率よくスムーズにこなすには?」を研究、提唱し続ける。『老親の家を片づける ついでにわが家も片づける』『老いのシンプル節約生活』(ともに大和書房)、『ひとり暮らしのシンプル家事』(海竜社)など多数。


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