写真について:過去にデザインしたグッズなどは、「シボネ」で購入したパルプボックスに収納。板を渡し、上段にはデザインを手がけた雑誌か資料を並べ、下段には子どもの絵本を
(『暮らしのまんなか』vol.30掲載)
いまの暮らしに向き合いながら、小さな更新を繰り返す
滞りのない毎日のために、状況に合わせて、物と時間をコントロールしておきたい。
「ちょうどいま、持ち物の整理の真っ最中なんですよ」
そう話す榎木里奈さんは、ご主人と、もうすぐ2歳になる長男の櫂くんとの3人暮らし。3LDKのマンションは、どの部屋もすっきりと片づき、デザイナーならではのセンスで選んだ家具や小物が映えます。
「子どもが生まれたら、一気に物が増えてびっくり! 新生児期は、少々散らかっても見て見ぬふりでやり過ごしていましたが、ハイハイするようになったころから床の汚れが気になって。掃除しやすくするために片づけ熱が再燃しました」
新生児用のベビーカーや歩行器、小さくなった子ども服は、リサイクル店に買い取ってもらったり、知人に譲ったり。くたびれた肌着や普段着は、小さく切ってウエスに。数日前までリビングダイニングの中央に陣取っていたベビーサークルも、たたまれて、行き先が決まるのを待っています。
「もともと少ない物で暮らすほうが好き」という榎木さん。ひとり暮らしをしていたころから、機会があれば住まいにある物の量や収納方法を見直し、その都度、より快適になるよう知恵を絞ってきました。
「使いたい物が見つからずに、間に合わせで済ませるのが嫌。物を減らして、家の動線を工夫すると、フットワークが軽くなって、精神的にも楽になります」
しかし、榎木さんのご主人は、多くのファッション誌のディレクションを手がけるデザイン事務所に所属するデザイナー。物へのこだわりも強く、結婚してからは物を捨てるスピードは減速傾向なのだとか。そのぶん、買い物をするときは慎重になったのだそう。
「欲しいものがあると、家族会議を開きます。一生懸命、相手にプレゼンするんですよ。ふたりの好みが微妙に違うので、お互いに気に入りそうなデザインのものを探すのもひと苦労」と笑います。
洋服や器は、希少性の高いものを意識して旅先で購入。何でも増えたら処分、という考え方から、次第に一生つきあえるかどうか、を基準にして物を選ぶようにもなりました。
徹夜も苦にならないほど好き、というデザインの仕事は妊娠してから徐々に減らし、「いまはできるだけ子どもと向き合う時期」と決めて、フル稼働だったころの半分程度にまでセーブ。それでも家事や子育てとの両立は大変ですが、櫂くんの登園準備や夕飯の支度にあわてないよう、小さな習慣をつなげて、一日がスムーズに流れる仕組みをつくりました。
忙しいからこそ、滞りなく軽やかに。榎木さんの小さな工夫の数々が、それをかなえています。
朝夕のドタバタを手放す → 少し先回りして、使う場所に使う分だけ
1歳児の世話を楽にする工夫
“子ども感” を手放す → さっと片づけられる仕組みづくり
「欲しい!」の衝動を手放す → 大切な物と一生つきあう覚悟で
機能優先を手放す → アイデアを生かして飾るようにしまう
_FLOOR PLAN
_PROFILE
榎木里奈(えのき・りな)さん
デザイン事務所勤務を経て2007年に独立。REINA NICOとして、雑誌やカタログ、フリーペーパー、イベント、店舗などのアートディレクション、グラフィックデザインを手がけている。同業のご主人と、もうすぐ2歳になる長男との3人家族。
インスタグラム @reina_nico
<撮影/飯貝拓司 平面図/長岡伸行 取材・文/村山京子>