
メキシコシティ中心部のメデジン市場(Mercado Medellín)にて。目に焼き付いて離れない、多様で鮮やかな色、色、色! けれど不思議なほどに、そこにあるべきという調和を感じます
はじめまして、玉木美企子です。いまから5年前に東京を離れ、家族4人で⻑野県の南の小さな村での暮らしをはじめました。
とはいえ、仕事も実家もある東京とのご縁は途切れることなく、高速バスを使いながらあちらこちらへ行ったり来たり。村で暮らし、まちを歩く日々をすごしています。
ここではそんな私の日常を、思いつくまま少しずつお伝えしていけたらと思っています。
第一回目は、東京でもなく村でもない、メキシコの旅のことから。1月末から約10日間、古い友人を訪ねて、メキシコに出かけてきました。

メキシコシティの大通りで、ひときわの賑わいをみせていた、屋台のタコス屋さん。流れるような手さばき、手際のよさに見惚れてしまいます
なぜメキシコへ? 理由はいろいろあるけれど、目的のひとつはメキシコ料理を食べること。
タコスにエンチラーダス、チラキレス? チチャロンプレパラード? みなさん、どれくらいご存じでしょう。
私はまったくの素人ながら、友人のくらみさこさん(以下、くらちゃん)と、 娘のレナちゃんのナビゲートのおかげで、その奥深い世界に少しだけ触れることができました。
ご存知のとおりタコスとは、 “トルティーヤ” と呼ばれる皮にさまざまな具を包み、サルサと呼ばれるソースをかけたりライムを絞っていただくメキシコ料理のこと。はじめて本場のタコスを目にして一番驚いたのは、このトルティーヤのサイズ感でした。
ボリュームたっぷりの大きなものかな......という想像に反して、メキシコシティで「タコス」と頼んで出てくるのはちょうど、餃子の皮ぐらいの小ぶりなもの。このサイズ感がなんとも絶妙で......!
サルサやライムのさわやかさも相まって、まるでお寿司のようについ幾つも食べてしまう、魅惑的なソウルフードなのでした。

今回の旅で一番おいしかったタコスがこちら。「パストール」と呼ばれる焼いた豚肉にサルサをかけたら、手でつかんでガブッといただきます。お値段は5つで35ペソ(約210円)!

左から豚肉、豚肉にチーズを乗せて焼いたもの、そして牛肉のタコス。瓶に入ったサルサとライムが惜しげも無くたっぷりと添えられました
そしてメキシコシティを離れ、南部の街サン・クリストバル・デ・ラス・カサス(以下、サンクリ)に向かったあとも、さまざまな生地と味わいの「タコス的なもの」を堪能しました。

これはタコスではなく、サンクリの市場で食べた「ケサディーヤ」。トウモロコシでできた生地に、チーズと炒めたキノコが挟まれています。できたての生地の、香り高い味わいに感動!

メキシコ南部の小さな村、サン・フアン・チャムラでは「ワラーチェ」と呼ばれる軽食を。ワラーチェとは革サンダルのこと、名前のとおりサンダルのような形をしたメキシコのB級グルメなのだそう

こちらは、揚げたトルティーヤにソースをかけていただく「チラキレス」。メキシコの家庭では、余ったトルティーヤをおいしくいただくためによく作られるとか
「野菜も入っているからヘルシーに感じるけど、カロリーはたっぷりだよ!」と笑うくらちゃん。
それでも具の違い、サルサの違い、生地の違いなどお店ごとに二つとして同じものはなく、ついあちこちで試してみたくなります。
このほかスープもおいしかったし、メキシコ南部では人々のトウモロコシへのこだわりに驚かされるなど、食の話題はほかにもたくさんあったのですが、話は尽きないので第一回目はこのあたりでお開きに......!

玉木美企子(たまき・みきこ)
農、食、暮らし、子どもを主なテーマに活動するフリーライター。現在の暮らしの拠点である南信州で、日本ミツバチの養蜂を行う「養蜂女子部」の一面も
<撮影/佐々木健太(プロフィール写真)>