ミルク酵母に欠かせない、理想の牛乳に出合うまで
店主の白井幸子さんがミルク酵母に出合い、その味わいにほれ込んだのは20年以上前のこと。お友だちのパン屋さんが試しにつくった酵母パンを手渡され、なんの酵母かわからず食べてみると、「硬いけど、味わいがね、すごくよかった」といいます。
それがミルク酵母のパンとの出合い。そのおいしさに感動し、ミルク酵母でパンを焼きたいと考えた白井さんですが、大きな壁にぶつかります。
「果物とかで酵母を起こしている人はいたけれど、牛乳を使う人はいなかった。当時は牛乳はからだによくないという風潮もあって、相手にされていなくて。こんなにおいしいのにどうしていけないのかと思いましたね」
「牛乳のことをもっと知りたい」という一心で、必死に調べ続けた白井さんが辿り着いたのは、東毛酪農の「みんなの牛乳」でした。
「みんなの牛乳」は、「搾りたての生乳に近いおいしくて安全な牛乳」にこだわり、組合、生産者、消費者が話し合いながら生産しているもの。牧草など安全な飼料を食べて育つ健康な乳牛の生乳を使い、「63℃で30分間の低温殺菌」という、成分や風味、栄養、有用菌をできるだけ損なわない殺菌方法でつくられています。
この牛乳なら、おいしくて安全で栄養をたっぷり含んだミルク酵母を起こせると考えた白井さん。3年をかけて納得のいくミルク酵母を完成させ、店をオープンさせました。
栄養ぎっしり!“天然の生クリーム”からミルク酵母はつくられる
「みんなの牛乳」にはもうひとつの特徴があります。それは“クリームライン”ができること。
「牛乳をそのまま置いておくと、クリームラインと呼ばれる線ができるの。ラインより上の部分は牛乳の中の脂肪分が浮いてできた天然の生クリームの層。栄養がたっぷり詰まっていて、ここだけでミルク酵母をつくるのよ」
牛乳ビンを横からよく見てみると、上から5cmほどのところに、線ができているのがわかります。
ミルク酵母はパンの風味をよくするだけでなく、食べる人のからだを大切にする酵母でもありました。研究を重ねて生み出されたミルク酵母で、日々ていねいに焼き上げられるマールツァイトのパンは、どこまでも味わい深くほっとなごめる味なのです。
<撮影/八杉和興 取材・文/諸根文奈>
マールツァイト
03-5976-9886
11:00~19:00
日・木・祝日休み
東京都文京区大塚3-15-7
最寄り駅:丸ノ内線「茗荷谷」
http://www.mahlzeit.jp