秋葉原にも春の訪れと塩煮いちご
節分も過ぎ、暦の上では春が来ました。世界の電気街、秋葉原にも少しずつ春がやってきます。
「こまきしょくどう」の建物の外に出ると向かいの道路には木蓮の木があり、落花生くらいの小さい花芽が少しずつ膨らみ、2月の末から開花が始まっています。
高層ビルや街いっぱいの電飾が賑やかな街にも、白い大きな花を眺めてうっとりとし、風はまだ寒いですが、春を迎えることにウキウキしてきます。
そんな頃、スーパーの店頭に並ぶのが小さい粒のいちごです。4パック1,000円!そんないちごに出合ったら自転車の荷台に載るだけ買って帰ります。
子どもが保育園に通う頃から、特売のいちごを見つけては部屋中にいちごの甘い香りで充満させ、いちごを加工してきました。
最近では、長女が私の「旬の農作物をたくさん買って調理・加工したいオタク」を引き継いでくれているので、私は買っておくまで。楽になったもんです。
安いこともあり、パックの上の段のきちんと並んだきれいな粒だけでなく、下の段には少し黒くなっているものもあるので、多少は悪い部分を削っていくのですが、「精進料理屋の娘なんだから必要以上に捨ててはいけないよ」という教えを守って調理してくれています。
2パックはジャム、1パックは冷凍、残りは砂糖なしでレモンと塩で煮ておく。この3種類がわが家では定番のいちごの加工です。2箱買えばこれが倍量になります。
甘い・しょっぱい・冷凍があればしばらく食卓が豊かになります。この様な手づくりの加工品があれば、忙しく仕事をしていて心が荒れ野原になっても、潤ってくるから不思議です。
わが家のジャムは、私が甘いものがあまり得意ではないこともあり、甘さ控えめです。
洗ってヘタをとったいちごを計量して、30%から40%くらいの少なめの砂糖に半日漬けます。
上がってきた水分とともに厚手の鍋に入れ、粒こしょう2粒、シナモンスティック1本、レモン汁50mlを入れて弱火であくを取りながらクツクツ煮ていきます。
いちごの鮮やかな色が抜け、また煮ていくうちにいちごに色が戻ってきたら火を止め、一晩置きます。シナモンの香りがジャムに移り、こしょうが味を引き締めて、大人味のいちごジャムなります。
瓶の消毒はしません。どうせすぐ食べきるので良し!としています。ふたつの瓶に入れてひとつは近所の仲良し宅へ。
冷凍いちごは洗って水けをふき、へたを取り冷凍用の袋へ。
豆乳や甘酒をミキサーに入れ、凍ったまま攪拌してスムージーへ。少し暖かい日に飲みたくなります。
よく驚かれるのですが塩で煮るいちごがわが家では重宝します。
いちごを洗ってへたを取り、半分に切ります。ひとパック分に対して塩を小さじ1ふり入れ1時間おき、汁ごと小鍋に入れたらレモン汁大さじ2入れてさっと煮ます。これは、いちごがしんなりとしたらでき上がり。
オリーブオイル、酢、塩、こしょう、刻んだディル、塩煮いちごを入れドレッシングにしたり、すし酢、塩煮いちごをミキサーにかけ、温かいごはんに混ぜたらピンクの酢飯になります。
友人宅の食事会にお土産にしたら、アジの刺し身とサラダを合わせカルパッチョソースにしてくれました。まあ、冷たい白ワインが合うことは言うまでもありません。
あー、いちごの終わりかけの季節と加工マニア最高。
藤井小牧(ふじい・こまき)
東京・秋葉原にある「カフェ風精進料理 こまきしょくどう」店主。臨済宗僧侶であり、精進料理家としても知られる藤井宗哲氏と、精進料理家の藤井まり氏との間に生まれ、幼いころより精進料理とともに育つ。現在はお店に立つかたわら、東京の生産者・加工業者を応援する活動「メイドイン東京の会」にも参加している。2020年3月に『こまき食堂』(扶桑社)が発売。