日々の暮らしの中にある季節の移ろいを
白井明大さんの詩・文と當麻妙さんの写真で綴ります。
笑う
花をみあげながら
ひなたにいると
ああ いま ここにいるんだ
冷んやりした
少しの風とともに
そう感じられ
はらはらと
花びらのたどりついていく
地面に目をとめれば
時までもこぼれるなかを
子が
こちらをみあげながら
目をほそめて
何をみているのか
そのまなざしの先に
どんな明日を
みせてやれるのか
咲くことを
笑うといった
昔の人を思い出す
子のうえに
いっぱいの
いっぱいの花が笑っている
ぼくの目に
いっぱいの
いっぱいのきみが咲いている
季節の言葉:飛花(ひか)
風に散る花びらのことを、飛花といいます。ちらちらと飛んで、舞いおりた地面に、だんだん桜の花びらが降り積もり、辺り一面に敷き詰められると、花筵(はなむしろ)と呼ばれます。
桜の咲く季節を、七十二候*では、三月二十五日~二十九日に春分次候「桜始めて開く」の候としています。今年は暖冬でしたので、例年より早く咲くところも。ちなみに漢字の由来を見ると、「咲」のつくりは「笑」の略字で、もともと「笑」という意味があったそう。
二十四節気は、いよいよ春うららかな、春分ですね。染井吉野もきれいですが、ほのかに山野を染める山桜を眺めるのも、この季節ならではの楽しみです。
白井明大(しらい・あけひろ)
詩人。沖縄在住。詩集に『生きようと生きるほうへ』(思潮社、丸山豊賞)ほか。近著『歌声は贈りもの こどもと歌う春夏秋冬』(福音館書店)など著書多数。新刊に、静かな旧暦ブームを呼んだ30万部のベストセラー『日本の七十二候を楽しむ ー旧暦のある暮らしー 増補新装版』(KADOKAWA)。
當麻 妙(とうま・たえ)
写真家。写真誌編集プロダクションを経て、2003年よりフリー。雑誌や書籍を中心に活動。現在、沖縄を拠点に風景や芸能などを撮影。共著に『旧暦と暮らす沖縄』(文・白井明大、講談社)。写真集『Tamagawa』。
http://tomatae.com/