2018年1月、台湾・台北にベジタリアン台湾研修旅行、兼、正月お疲れさま旅行に行ってきました。
「こまきしょくどう」には年末休みがなく、世の中が仕事始めの頃に毎年少し休みをいただきます。台湾は日本から近く、料理の味付けも好きで、冬に行ってもそんなに寒くなく、年に1回は行きたい大好きな国です。
そして、台湾は仏教徒が多く精進が好きな国。人口の30%くらいの方が精進料理を食べていると聞いています。そのため、飲食店もベジタリアン向けが多いので勉強になるのです。
この時は、以前出版した中国語版の書籍『こまき食堂』を発行している出版社にご挨拶がてらお邪魔したり、現地でおいしいベジタリアンの店を教わって滞在中ひたすら食べたり、お腹がへこむひまがないくらい食べて歩いての研修でした。
たまたま入ったビーガンカフェにて衝撃的な出合いがありました。食べ歩き中のふくれたおなかを抱え、ひと休みするべくドリンクを頼むとストローがステンレス製! 日本でもおしゃれ系の雑誌や環境系の情報で見たことはありましたが、それを体験するのは初めてでした。
以前、ビーガンカフェ・レストランの仲間内と環境にやさしい勉強会をしていたときに、プラスチック製のストローやショッピングバッグなどが環境に与える影響の話を聞きました。
「こまきしょくどう」でも段階的に削減に取り組んでいますが、ビニール袋は紙に変えることはできても、なかなかストローの代替え品が見つかりません。
SNSなどに上がっているような、ワラを使う提案もありましたが、断面の切口はどうか?食品衛生的にどうか?など、あまり店舗として使えるものではなさそうだなと判断。
「ストローなしで提供します」と告知してストローなしで提供してみても、「ストローください」といわれてしまいます。恐るべし「冷たいドリンクにはストローが付いてくるもの」という長年のすり込み。そんななか、たまたま出合ったのは本当に驚きでした。
台湾のビーガンカフェで使っていたステンレス製のストローは、プラスチックストローを削減するためのお店の取り組みとしてではもちろんあるのでしょうが、台湾では、環境保護省が2019年7月1日以降、官公庁・公私立学校・百貨店及びショッピングセンター・チェーン展開するファストフード店の4分野を対象に、店内で飲食する際に使い捨てプラスチックストローの提供を禁じているということを後から知りました。
さて、店員さんがドリンクが運んできてくれました。
さあ、恐る恐るストローを口にするとすでにヒヤリとする。なるほど、温度を伝えやすいステンレスだから、冷たい飲み物を吸う前から冷たい……。
うちで使っている透明のプラスチックストローは透明だから、吸えばドリンクが下から上がってくるのが見えて飲み物が口に入りますが、こちらは全くの不透明。ふむふむ。当たり前なのになんだか新しい。もちろん、プラスチックストローと比べてなんの遜色もありません。
では、お店として衛生管理・洗浄はどうするのか? 聞けば専用のブラシがあるとのこと! まあ確かに、うちの店でも食洗機で食器や箸を洗っていて使い捨てにしていないわけだから、特別なことはではないのだなと、そんな当たり前に衝撃を受けたこともあり、店を出た時にはステンレス製ストローで頭がいっぱい。欲しくてしょうがない! 悶々と市場を歩けば、日用品を扱う雑貨店では大体販売をしていました。
大興奮して甘酒シェイクに使えるタピオカ用の口径が大きいものを3本、りんごジュースやジンジャーエールなどに使える曲がっているものを4本購入。壊れることなく今もしっかり使っています。始めはお客さまも驚いていましたが、「こまきしょくどう」ではすっかり市民権を得ているのです。
こんなことがきっかけになり、その旅に同行してくれていたビーガンカフェの方が、仲間たちに「サステイナブルマップをつくろう!」と、声がけをしてくれました。さて、その話はまた今度。
藤井小牧(ふじい・こまき)
東京・秋葉原にある「カフェ風精進料理 こまきしょくどう」店主。臨済宗僧侶であり、精進料理家としても知られる藤井宗哲氏と、精進料理家の藤井まり氏との間に生まれ、幼いころより精進料理とともに育つ。現在はお店に立つかたわら、東京の生産者・加工業者を応援する活動「メイドイン東京の会」にも参加している。著書『こまき食堂』(扶桑社)が発売中。