※写真について:手際よく朝食の準備をする石田さん。手しごとの展示会などで、みずから料理をふるまうほどの腕前。こざっぱりとした台所には、さまざまな形のかごや、仲のよい陶芸家の作品、さらには石田さん自身が手づくりした日用品などが並ぶ
(『天然生活』2016年5月号掲載)
里山で始まる、気持ちのいい一日
国内外のさまざまな手しごとを、展示会やワークショップ、書籍などを通じて紹介している石田紀佳さん。ふだんは東京に暮らしていますが、10年ほど前から、神奈川県にある里山に小さな家を借り、週1回のペースで過ごすようになりました。
「ここに来ると、自然と朝型になるの。朝、起きたら、一刻も早く外に出て、植物に会いたいって思う。葉っぱに朝露がついている姿や、太陽が昇って、植物がいまから光合成を始める、という生き生きした姿が、本当にきれいなのよ」
そういって、家の隣につくった菜園や茶畑、さらには裏山へ案内してくれました。「ほら、朝露が光っているでしょ」「この葉っぱ、おいしいんだよ」など、行く先々で立ち止まっては、笑顔で説明してくれます。手しごとの素材である「植物」に向き合ううち、気づけば、庭づくりなど、自然に関わる仕事も増えてきました。
「ここで元気をもらっているので、東京にも自然と触れ合える場所や機会を増やして、たくさんの人に元気を届けたいんです」
朝の散歩を満喫したあとは、家の隣にある味噌小屋の前で、朝ごはん。ほどよく動かした体に、自家製味噌でつくった味噌汁がやさしく染みわたります。家の周りはとても静かで、風の音と鳥の声しか聞こえません。
「早起きさえすれば、朝はたくさん時間がある。すごく得した気分になるのよね」
そう話す石田さん。玄関の前をほうきで掃いたり、花を飾ったり。ていねいに手を動かし、家を整えながら、少しずつ、新しい一日を始めていきます。
「朝の過ごし方次第で、日々、新しく生まれ変われる。そんな感覚を、これからも味わっていけたらと思いますね」
ある春の朝時間
6:30 起床
6:45 朝の散策
7:00 身支度などの一日の準備
7:30 お茶の時間
8:00 庭しごと
11:00 朝食
<撮影/砂原 文 取材・文/嶌 陽子>
石田紀佳(いしだ・のりか)
展覧会や執筆、ワークショップなどを通じて、手しごとや植物について紹介している。著書に『魔女入門 暮らしを楽しくする七十二候の手仕事』(すばる舎)。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです