一年で最も大事な仏教行事「降誕会」
こまきしょくどうは精進料理屋なので仏教行事を大切にしています。
ハロウィーン、クリスマス、バレンタイン、ホワイトデーと様々なカタカナ系行事は、街中で祝い、飾り盛り上がるのでとても華やか。それと比べたら仏教行事は大変地味です。節分、涅槃会、春のお彼岸、お盆、秋のお彼岸と聞いたことがある行事もあると思いますが、あまり耳にしない行事が多いかもしれません。
その中でも一番大事な日は、4月8日のお釈迦様のお誕生日となる「降誕会」です。
仏教系幼稚園出身の友人が、小さいお釈迦様に手を合わせながら、小さい柄杓で甘茶をかけた記憶があると話してくれました。私自身お寺の生まれではないのですが、小学生の時、学校の近所にあるお寺で甘茶をかけさせていただいた記憶があります。
こまきしょくどうでは、曹洞宗の若いお坊さんにご協力いただき仏教行事のイベントを開いております。宗教のすばらしさを広げようというよりは、華やかなカタカナ系行事の心はずむイベントとは違った、忙しい生活を立ち止り、少し落ち着いて振り返る機会として、丁度良いかもしれないなと思っているからです。
昔とはライフスタイルも変わりました。「この日に行事食を意識してつくり食べること!」としてしまうと、その日を逃してしまったらできないので、前後5日間くらいは行事食OKにしています。心を豊かに保つというのが私の中での位置づけですから、あまりこまかいことを気にしないのも現代での行事継続のコツかと思うのです。
さて、わが家の降誕会は、精進ちらし寿司やお清汁などをつくったりしていますが、定番なのが、簡単につくれる豆乳プリンです。
乳製品・卵不使用かつ寒天・葛粉で固める「プリンもどき」ですね。上にかけるソースや味付けによって変化が楽しめますし、抹茶やココアを混ぜても素敵です。また、白醤油を入れると茶碗蒸しもどきにもなります。
娘たちが小さい頃に誕生日会を開いたところ、アレルギーがあるお友達の保護者さんから事前に連絡がありました。私もアレルギーの経験があり、みんなと同じものを食べれなかった寂しさがあります。
誕生日会ではお精進のご馳走を並べました。「みんなと同じものを食べられる」ということがうれしかったようで、その子の笑顔を今でも思い出します。
豆乳プリンのつくり方
材料(つくりやすい分量)
● 水 | 50cc |
● 粉寒天 | 5g |
● 豆乳 | 650g |
● てんさい糖 | 30g |
● 葛粉 | 10g |
つくり方
1 鍋に水と粉寒天を入れ、5分おく。
2 1の鍋に豆乳、てんさい糖、葛粉を入れ、火にかけないまま混ぜ合わせる。このとき、ざるでこすとよりなめらかになる。
3 2を弱火にかけ、混ぜる。人肌まで温まってきたら、強火にして木べらで鍋底からしっかりと混ぜ、沸騰してきたら中火にして2分ほどさらに混ぜる。型に流し入れ粗熱が取れたら、冷蔵庫で冷やしておく。
桜の塩漬けソースのつくり方
材料(つくりやすい分量)
● 桜の塩漬け | ひとり1個 |
● てんさい糖 | 80g |
● 水 | 150ml |
● 葛粉 | 5g(20mlの水で溶いておく) |
つくり方
1 桜の塩漬けを100mlくらいの水(分量外)に入れ、塩を落とす。20分ほどおいたらキッチンペーパーに取り、水けをおさえておく。
2 鍋に水、てんさい糖を入れて混ぜ、火にかける。てんさい糖が溶けたら水溶き葛粉を入れて混ぜ合わせ、粘度を出す。
3 2が冷めたら、冷やしておいたプリンにかけ、1の桜をのせる。
藤井小牧(ふじい・こまき)
東京・秋葉原にある「カフェ風精進料理 こまきしょくどう」店主。臨済宗僧侶であり、精進料理家としても知られる藤井宗哲氏と、精進料理家の藤井まり氏との間に生まれ、幼いころより精進料理とともに育つ。現在はお店に立つかたわら、東京の生産者・加工業者を応援する活動「メイドイン東京の会」にも参加している。著書『こまき食堂』(扶桑社)が発売中。