朝の過ごし方が、その日一日の流れを決定づけます。暮らし上手な女性たちには、それぞれ自己流の工夫がありました。今回は、水彩画家・テキスタイルデザイナーの伊藤尚美さんに朝を楽にしてくれる工夫の色々を伺います。
(『天然生活』2016年5月号掲載)
あわてないための、小さな工夫を欠かさずに
忙しい日々を送りながらも、「朝ごはんとお弁当の食材は重ならないように」「野菜は生と火を入れたものを用意する」などを工夫して、伊藤さん家の食事は日々、豊かです。
息子の詩大(うた)くんも、幼稚園の思い出を語る発表会で「お弁当の時間に、お野菜がいっぱいでうれしかった」と話していたほど。
その食を支えるのは、日々、仕込んでおく「つくりおき」や、新鮮な地のものの野菜。おいしい豆腐や油揚げといった、「切るだけ、火を入れるだけでおいしい」食材も、その一端を担います。
「つくりおき」も凝ったものは仕込まずに、ふだんの食事の準備のついでにつくれるものがほとんど。けれど、この細やかな食まわりの「段取り」が、朝の忙しい時間帯にもあわてずにすむよう助けてくれるのです。
平日は家事に仕事にと集中する分、週末のどちらかは「お母さん業」をひと休み。「明日の朝は、お母さん、ごはんをつくりませーん。お父さんと僕とでお願いします」と宣言して寝ると、翌朝は父子ふたりで何やら楽しそうにつくっていたりして、ひと休みできつつ、「また今週もがんばろう」と新たな気持ちになるそうです。
むだな家事は省き、ときには家族に頼り、自分らしいペースを守る。伊藤さんの朝時間は、そんなふうに、続いているそうです。
朝を楽にしてくれる前日の段取り
服や持ち物をあらかじめ準備
打ち合わせなどで出かけるときは、前の晩のうちに着る服などをコーディネートしておき、ハンガーにかけて整えておく。その際、持っていく荷物も、同じ場所に置くように。「朝は、どうしてもあわただしくなってしまうので、こうしておくと安心です」
時間のあるときに、つくりおき
箸休めになる甘酢漬け、塩もみした野菜など、食事の支度のついでに仕込める「ストック」を、常に何種類か冷蔵庫に。お弁当用のおかずは、小分けにして冷凍庫にも。ハンバーグなどは、お弁当用と夕食用の2サイズをつくって冷凍保存しておくと便利。
素材自体がおいしい食材を
余計な味つけや調理をしなくても、切っただけ、ゆでただけでも「おいしい」と感じられる素材を常にストックしておく。伊藤さんが暮らす伊賀は周りに農家も多く、新鮮な産直野菜が手軽に手に入るのがうれしく、「常に野菜たちに助けられている」そう。
「つけるだけ」の水だしを活用
平日の朝ごはんはほぼ米食なので、お味噌汁用のだしまでは前の晩に準備。「鍋に昆布と干ししいたけを入れて、水だしにしておくだけ。煮出してこす必要もないし、時間の短縮にもなります」。朝は切った野菜を入れて、味噌を溶くだけなので気楽。
日々を豊かにする小さなこと
<撮影/ヨシダダイスケ 取材・文/田中のり子>
伊藤尚美(いとう・なおみ)
書籍・広告・絵本などで幅広く活躍中。テキスタイルブランド「nani IRO」も20年目。作品の源となる暮らしを綴ったフォトダイアリー『詩を描くPOETRY TEXTILE』(ITSURA BOOKS)が好評発売中。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです