家に馴染み始める
2020年3月下旬。引渡しの日を迎えました。
持ち主さんご夫婦は、お孫さん達の助けも借りて、沢山あった家財をきれいに片付けてくれていました。わたしもとても古そうな桐の箪笥やダイニングテーブル、椅子数脚、庭掃除の道具いろいろなど、たくさん譲っていただきました。
そして始まった新コロナ禍。開店準備の間も、何度か東京に行く予定になっていましたが全てキャンセルに。開店できるかどうか先の見えない状況ではありますが、家にこもってひたすら準備の日々が始まりました。
まずは家と土地に馴染むところから。
朝に昼に庭に出て、草をとったり、庭木の枯れた枝を切ったり、積もった落ち葉を掃き集めたり。
庭には色々な種類の植木が植わっていて、新芽がどんどん伸びて行きます。地面からはずっとそこに植えられていたであろう球根の、水仙やムスカリ、スズランなどの芽が次々に出始め、冬から春へと季節が移っているのを感じます。
こんなに広い庭の手入れをした経験がなく、これからの生活がとても楽しみになりました。
家があるところは、富山地方鉄道の沢中山の駅から歩いて数分という、富山では珍しく電車でも来ることが可能な場所にあります。
古くからある集落の中の、庭の広い昭和の古い家。近くには八幡宮もあり、周りの家々も樹齢7、80年はあろうかと思われる杉の大木の屋敷林に囲まれています。田んぼが沢山あり、北アルプスの山々と田んぼの美しいのどかな景色が広がっています。
ちょうど地域の用水路を集落の皆で掃除する、一年に一度の「江ざらい」の日が3月末にありました。我々も長靴にスコップで初参加。田んぼの用水路の清掃活動をしました。
集落の方が新しく移住してきた私たちを歓迎してくださり、受け入れてもらえて一安心。他にもご家族で移住されてきた方もいました。
4月に入り、地元の大工さん、水道屋さんと何度かの打ち合わせの後に、リノベーション工事も徐々に始まりました。
工事の内容は、ざっとこんな感じになります。
・汲み取り式だったトイレを下水に切り替え、洋式トイレに変える。
・2階にもトイレを新しくつける。
・一階の和室の一室を杉のフローリングに。
・キッチンの設備を新しくする。
・2階の畳を新調し、ミニキッチンを設置。
・1階の廊下にピアノを置くスペースを作る。
基本的には使えるものはできるだけ使う、自分でできることは自分でする、ecoリノベーションを目指しています。
しかし、昭和40年に建てられた家なので、電気の配線も、水道の配管も、老朽化している上に、いまの生活スタイルとは合わず、ほとんど一からやり直す感じになりました。自分でできることも限られてしまい、仕事部屋の壁にペンキを塗る程度に。
2階の古い畳を、畳屋さんに引き取ってもらった後の床に、古い新聞が敷き詰められていました。昭和39年9月23日の新聞でした。「東京オリンピックまであと18日」という見出しに「聖火はいよいよ富山へ」という記事も。面白いなーとじっくりみていると、日本の全ての選手の写真が。
7年前に亡くなった私の父は中学、高校、大学と器械体操をしていて、高校総体などでも活躍していましたが、オリンピック強化選手にはならず進学、就職の道を選んだという話を聞いていました。その父の友人達が、器械体操の選手のところに沢山写っていました。
なんだか父が応援してくれているようでとても嬉しかったです。
私の好きな富山のお店
総曲輪のワインバーと喫茶 alpes(アルプ)
昼は喫茶、夜はワインバー。知る人ぞ知る、有名店。昼の喫茶の焼き菓子はどれも絶品でひっきりなしにお客さんが訪れます。夜のこだわりのワインラインナップもぜひ。
alpes(アルプ)
富山市総曲輪4−7−18
巣巣 岩崎 朋子(いわさき・ともこ)
世田谷の等々力で「巣巣」という家具と雑貨の店16年営み閉店。現在富山県立山町に移住して新しい店を準備中。バンド「草とten shoes」リーダー。著書に「小さな巣をつくるように暮らすこと」(SBクリエイティブ)。
<撮影/馬場わかな(プロフィール写真)>