(『天然生活』2013年6月号掲載)
いわし仕事 | 6月~
手早い調理で長く楽しむ 松田美智子
安くておいしい大衆魚として古くから親しまれてきた、いわし。漢字では鰯。魚偏に弱いと書くのは、読んで字のごとく、足が早く、傷みやすいからです。また、弱い魚ゆえ、群れをなす習性があります。どの国でも古くから、一度に大量に捕れたいわしを、保存するための調理法が工夫されました。
「いわしの旬は5~10月。鎌倉育ちの私には、初夏の日差しとともに、魚屋さんの店先にいわしが山と積まれた光景が懐かしく思い出されます。箱いっぱいのいわしを買った日は、母が大急ぎでおなかを出して、大鍋に竹皮を敷いて煮たものです。今回、紹介する辛煮も、甘さがごちそうだった母の時代に比べて糖分を控えて仕上げていますが、驚くほどたっぷりのしょうがと梅干しを加えるレシピは母譲り。ぴりっと効いたしょうがの辛味と梅干しの酸味がさっぱりとして大好きです」と松田さん。
大切なことは、目の濁っていない、身のしっかりと硬い、鮮度のいいいわしを選んで買って、手早く調理することです。
いわしは数十年周期で豊漁・不漁を繰り返す傾向のある魚だそうです。不漁期にあるいまは、ときに高級魚並みの値段になることもありますが、ぜひ、旬のいまこそ、新鮮な安いいわしを見つけて、存分に料理をしてみてください。
いわしの辛煮のつくり方
気になるくさみをたっぷりのしょうがと梅干しで消し、うま味だけを引き出しながらじっくり煮込む辛煮。海の幸に恵まれた日本人の知恵が生きた、ごはんのおかずです。
材料(つくりやすい分量)
● 真いわし(頭と尾を取り、内臓を出す) | 8尾 |
● しょうが(せん切り) | 1/3カップ |
● 梅干し(大) | 2個 |
● 酒 | 2カップ |
● 三温糖 | 大さじ2 |
● しょうゆ | 1/2カップ |
● 竹皮(ぬらしておく) | 2枚 |
つくり方
1 土鍋または厚手のホウロウの鍋に竹皮を敷き、下処理したいわしを並べる。しょうがと梅干しをのせ、酒を加える。
2 味が入るようペーパータオルで紙ぶたをし、鍋のふたをし、中火にかける。ふつふつ沸いてきたら火を弱める。
3 三温糖を加え、30~40分煮、次にしょうゆを加え、汁がひたひたまで煮、火を止め、そのまま冷ます。
4 竹皮ごと取り出す。竹皮を敷くといわしの皮がはがれず身くずれしない。密閉容器に移し冷蔵庫で10日間保存可能。
<料理/松田美智子 撮影/川村 隆 取材・文/小松宏子>
松田美智子(まつだ・みちこ)
日本料理をベースにした家庭料理の教室を主宰。鎌倉で育った子ども時代から身近だった四季の保存食づくりをベースに、現代の生活でも無理なくできる、季節の食の楽しみを提案。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
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