先日、ふとプランターを覗きこむと、春先に植え替えたイチゴが赤く実っているのを見つけました。
花の盛りはとうにすぎ、若葉の季節からいよいよ今年最初の実りのときへ。気づけば庭のジューンベリーや、散歩道の途中にある桑の木も、まだ青いながら実がぷっくらとふくらんできています。
そして忘れてはいけないのが、梅の旬。みなさんも、一年一度の梅しごとに追われていらっしゃるでしょうか。
ここ伊那谷では、梅の中でも「竜峡小梅」と呼ばれる、小粒の梅が主流。今では梅農家さんも減り、放置された梅園も目立つようになってしまっているのですが、そのおかげで農薬にもさらされずに実った梅を「取りに来ない?」と、毎年どこかからお誘いの声がかかります。先日、今年初のお声がけを隣町のKさんからいただき、夫や友人たちと勇んで出かけました。
青葉の間でちんまりと実る小梅の実。その景色はじつに美しく愛らしいものです。……が、なぜか今年は毛虫が大繁殖。手袋に帽子、長袖にマスクの重装備でも恐ろしく、みんなできゃーきゃーと言いながらどうにか無事に収穫ができました。
さて、収穫が終わればすぐに仕込みにかかります。わが家では“みやましい”夫(みやましい、とは伊那谷の言葉で、マメな、働き者の、というような意味の褒め言葉です)が、たっぷりとシロップ漬けと梅酒を作ってくれたので、私は梅漬けをすることに。
竜峡小梅はいわゆる「カリカリ梅」として、硬く漬けていただくのが、このあたりの人々にとっての定番。これにならって、私も子どものころ大好きだったカリカリ梅にはじめて挑戦してみることにしました。
どうやってカリカリにするのかな?と疑問だったのですが、まだ硬い青梅を卵の殻といっしょに漬け込むことでカルシウム分が作用し、あの食感が保てるのだそうですね。天然生活7月号には、松田美智子さんによるカリカリ梅漬けのレシピが掲載されています。
焼酎をまぶし、塩を全体になじませたら、卵の殻を袋に入れて容器の底にしのばせ仕込みは完了。誌面レシピではタネを取り除いていましたが、私は小梅のため、丸のまま漬けました。時間がたってみないと、すぐには結果がわからないのが漬けものの醍醐味であり、楽しみ。すでにできあがりが待ち遠しくなっています!
そして同号にて、私が横山タカ子さんに夏支度についてさまざまなお話をうかがうなかで、いちばん勇気付けられたのは、「保存食は一度にたくさん仕込まなくてもいい、負担にならない量で、少しずつ楽しめばいいのよ」との言葉です。
この青梅がもう少し色づいたら、今年は横山先生ご考案の「さしす漬け」もやってみよう! と、いまほんの500gほどがザルの上に広げて完熟になるのを待っています。
梅の、やわらかく甘い香りが部屋じゅうに漂って、なんともいい気分。仕込む前、食べる前から、梅はたくさんのしあわせを運んできてくれますね。
生前は毎年梅酒を漬けて、私に飲ませてくれていた祖母の背中なども思い出しながら、今年もしばらく梅しごとが続きます。
玉木美企子(たまき・みきこ)
農、食、暮らし、子どもを主なテーマに活動するフリーライター。現在の暮らしの拠点である南信州で、日本ミツバチの養蜂を行う「養蜂女子部」の一面も
<撮影/佐々木健太(プロフィール写真)>