• 東京郊外に生まれ、南信州に暮らすライター・玉木美企子の日々を綴る連載コラム。村での季節のしごとや、街で出会えたひとやできごと、旅のことなど気ままにお伝えします。今回は、キャンドルの灯りですごしたある夜のできごとをお伝えします。
    画像: 畑で咲いたじゃがいもの花

    畑で咲いたじゃがいもの花

    雨の多いこの頃ですね。梅雨らしい、を通り越して、多すぎるほど、振りすぎるほどの雨。みなさまお住いの地域はご無事でしょうか。

    仕事柄、全国の畑や田んぼをめぐり、生産者さんにお話を聞くことが多いので、どこで起きる天災も、まず地図を見て「あの方の住まいは、農地はどうだろう」とお顔が浮かび、気がかりになります。被災されたみなさまに、お見舞い申し上げるとともに、最小限の被害にとどまることを、今は心よりお祈りします。

    すぎてしまえば小さなことが原因なのですが、先日、子育てのイライラが爆発してしまった夜がありました。

    いつもは親子並んで、川の字どころか一本の丸太みたいにくっついて眠っている私たち。けれどその日ばかりは「今日は二人で寝なさい」と言い渡し、私は一人、別室へ。

    彼らがしょんぼりと寝静まってもなんだか、私はもやもやして眠れそうにありません。

    さあ、どうしよう。考えて、小さなキャンドルを手に、お風呂に入ることにしました。

    画像: これは、別の日に蜜蝋キャンドルを灯したときのもの

    これは、別の日に蜜蝋キャンドルを灯したときのもの

    これがとてもよかった。キャンドルの灯りだけですごすと、湯船に垂らしたバスオイルの香りも、より一層匂い立つようです。

    目から入る情報が少ないからでしょうか、しぜんと意識は自分の内へと向いていき、「イライラを爆発させる前に、私にはこんな声かけもできたかな」と早速、反省も。

    心の波立ちがゆっくりとやわらいでいき、短いながらも静かで豊かな時間をすごすことができました。

    明るくもない、真っ暗闇でもない。小さな光が運んできてくれた、たくさんのメッセージ。

    ただでさえ「非常事態」が心の中で常態化してしまい、ストレスを抱えやすい今。こんなひとときを大切にしたいなと感じた、(反省含みの)できごとです。

    次の日の朝は、子どもたちの好物のクレープを焼きました。


    画像: 村暮らし、まちあるき。
第13回 キャンドルの灯りに|玉木美企子

    玉木美企子(たまき・みきこ)
    農、食、暮らし、子どもを主なテーマに活動するフリーライター。現在の暮らしの拠点である南信州で、日本ミツバチの養蜂を行う「養蜂女子部」の一面も

    <撮影/佐々木健太(プロフィール写真)>


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