今回は「おばけ」が出てくる絵本を選びました。東京ではもうトンボを見かけますが、まだ暑さが残っていますから、絵本を読んで、涼しさを感じてくださいね。
『ねないこ だれだ』(せな けいこ さく・え 福音館書店)
「とけいが なります
ボン ボン ボン……」
冒頭、何がはじまるのかと、期待が高まります。
「こんな じかんに おきてるのは だれだ?」
真夜中に起きているのは、ふくろう、みみずく、猫にどろぼう。
「いえ いえ よなかは おばけの じかん」
1969年に初版が刊行されたロングセラーのこの絵本、
子どものころに読んだという方も、大勢いらっしゃるのではないでしょうか。
大人になって改めて読むと、けっこう怖い。
だって、おばけの時間になっても寝ない子は、おばけの世界に、連れて行かれてしまうんですよ!
でもこのおばけ、よく見ると、目の角度とか口の曲がり具合とか、いまにもおもしろそうなことを言い出しそう。
子どものころ、怖いけど、何度でも読みたくなったのは、ちょっとユーモラスなおばけと、遊んでみたかったからかもしれません。
『おばけでんしゃだ おとうとうさぎ!』(ヨンナ・ビョルンシェーナ作 ヘレンハルメ美穂訳 クレヨンハウス)
「もくようびは、とってもたのしい、でんしゃクラブのひ。でもきょうは、みみずくさんのようすがヘン。」
「どうしたの?」と、おとうとうさぎが聞くと、
おとぎの森の地下をおばけ電車が走っていると言い出すみみずくさん。
せっかくみみずくさんに教えてもらったのに、
慌てて帰ったおとうとうさぎはおばけ電車に飛び乗ってしまいます。
この電車、ただおばけが乗っているだけならいいのですが、
「おそろしのたに」に、まっしぐらに進んでいるんです。
「ジブリ」作品などにも影響を受けたという作者が描く「おとうとうさぎ」シリーズは、本作で6冊目。
毎回、おとうとうさぎはへっぴり腰で、ピンチを乗り切ってきましたが、今回は、どうなるのでしょう。
おばけ電車をとめることが、できるでしょうか。
知恵を絞り、勇気を出して、みんなの窮地を救うおとうとうさぎの冒険は、子どもだけでなく、大人もわくわくするはずです。
『いるの いないの』(京極夏彦作 町田尚子絵 東雅夫編 岩崎書店)
男の子がしばらく暮らすことになったのは、おばあさんが住む、古い家。
暗くて、木造で、畳で、天井が高くて、太い梁から電灯がぶら下がっています。
梁の上の暗がりが気になって仕方がない男の子。
何度も見上げていたら、
天窓の横に、怒った男の人の顔が……。
「百鬼夜行」シリーズなどで知られる作家、京極夏彦さんの文は淡々としていながら、ぞわーっと恐ろしさをかきたて、町田尚子さんの静かで美しい絵が、追い討ちをかけます。
暗がり、正体の知れないおばあさん、猫の群れ……。
叫びだしたくなる怖さは、ページが進むごとにいや増し、
ラスト……暗いところで読んだら、だめですよ。
長谷川未緒(はせがわ・みお)
東京外国語大学卒。出版社で絵本の編集などを経て、フリーランスに。暮らしまわりの雑誌、書籍、児童書の編集・執筆などを手がける。リトルプレス[UCAUCA]の編集も。ともに暮らす2匹の猫のおなかに、もふっと顔をうずめるのが好き。
<撮影/神ノ川智早(プロフィール写真)>