手間や時間を惜しまず、風味を優先に
有名寺院が立ち並ぶ観光の名所、北鎌倉。駅からの道沿いには、古民家をリノベーションした飲食店やアンティークショップが立ち並び、観光客がそぞろ歩く姿が多く見られます。
そうして、3分ほど歩いた先に佇むのが、レトロな店構えが印象的な「にちりん製パン」。店を営む津野さんご夫妻が、やさしい笑顔で出迎えてくれました。
都内の有名店「メゾンカイザー」で数年働いた大吾郎さん。フランスの伝統的なパンの製法をしっかりと身につけた後、鎌倉屈指の人気店「KIBIYAベーカリー」で働くことになります。自家製粉を使い、自家製の天然酵母で焼き上げるその製法に衝撃を受けた大吾郎さんは、独立後もそのやり方を踏襲します。
「どのパンにも湘南小麦の全粒粉を配合し、自家製酵母で焼き上げています。全粒粉は、店の小型の電動石臼で挽いたものと、製粉所にお願いして電動石臼で挽いてもらったものの両方を混ぜて使っていますね」
製粉所の電動石臼はサイズが大きく、そのぶんゆっくりしたスピードで粉を挽くことができるから、より風味が残せる。一方、店の電動石臼なら挽きたての鮮度がいい粉を使えるというメリットがあるといいます。
「挽いた翌日に使ったり、そうじゃなくても一週間以内には使うようにしています。鮮度がいいと風味がいいし、全粒粉のパンにありがちなエグ味もでなくて。ただ、パンの場合、挽いてすぐの粉は扱いづらいから、ほんとはエイジングといってわざと粉を寝かせて扱いやすくするんです。でも、こね方だったりつくり方で、扱いにくさは対処できるので、風味を優先しています」
そこで、全粒粉パンのおいしい食べ方を教えていただくことに。
「全粒粉の旨みがチーズと合うのかなと。エメンタールやラクレットなど、加熱するととけるハードタイプのチーズをのせて焼くとおいしいです」
自家でつくる酵母はレーズンから起こしたレーズン種と、小麦から起こしたルヴァンの2種類で、パンによって使いわけ。一次発酵に、レーズン種は12~24時間、ルヴァン種は4~5時間もかけているのだとか。
「店のオープン当初よりどんどん長くなっていっちゃって(笑)。最近はこれぐらいの時間で落ち着いています」という大吾郎さん。
自家製粉した全粒粉を使い、発酵はゆっくりと。手間を惜しまず、時間をかけて、小麦本来の甘味や旨味をできる限り引き出す「にちりん製パン」。だからたくさん焼くことはできないけれど、ひとつひとつに誠心誠意が込められたパンが、今日もあなたを出迎えてくれます。
<撮影/山川修一 取材・文/諸根文奈>
にちりん製パン
0467-67-3187
10:30~17:00
木・金休み
神奈川県鎌倉市山ノ内1388
最寄り駅:JR横須賀線「北鎌倉」
https://www.facebook.com/pages/category/Wholesale-Bakery/にちりん製パン-928442977167389/
※臨時休業などはfacebookにてお知らせしています。