(『天然生活』2016年2月号掲載)
箒を楽しむ暮らし
「箒の魅力は、なんといっても手軽なこと。電気も使わず、いつでも、思いついたときに、さっと掃除ができます。大事に正しく扱えば10~20年は使えるところも魅力。経年変化も楽しめますよ」
そう話す柳川さんに、箒との上手なつきあい方を聞いてみました。
「買うときは、実際に手にして、掃いてみて、自分に合ったものを選んでください。うちの箒は手づくりなので、ひとつひとつ違います。身長や手の大きさなどによって、箒との相性がありますから。また、箒の形や長さ、厚みにも、それぞれ意味があります。たとえば厚いものは、溝にたまったごみをかき出すときなどに便利。普通のものは、日常の掃き掃除に。どんな場所で、どのように使いたいか、考えてから買うといいですね」
そして、床を掃くときに気をつけたいのが、とにかくやさしく掃くこと。力を入れてこすると、すぐに穂先が傷んでしまいます。
「中津箒ならではの穂先のしなやかさを生かし、ふわっと床をなでるように、やさしく掃いてください。穂先のさまざまな部分を満遍なく使って掃くのも、長持ちさせる秘訣です」
長年、使ううちに、穂先が短くなってきたら、床ではなくサッシなどの細かい場所用にしてもいいし、払えないほど短くなったら、タワシ代わりに使うことができます。
室内用の箒が古くなってきたら、外の掃除用にするのもよし。最後まで、さまざまな使い方ができるのも、箒の魅力のひとつです。
日本では、昔から、箒は単に家をきれいにする道具としてだけではなく、神様とのつながりという役割も担ってきました。
昔は祭祀の道具であったほか、安産祈願や、「邪気を払う」ということから魔除けとして使われることも。
また、箒には神様が宿っているので、またぐと罰が当たるともいわれています。
箒は、人々の暮らしに、密接に結びついていたのです。
いまの生活スタイルに合った多様な箒を使いこなして
昔と比べ、いまは生活スタイルもだいぶ変化してきました。
けれども、中津箒には、フローリングにも適した箒や、卓上用、パソコンのキーボード用など、いまの暮らしに合ったさまざまな箒があります。
昔は数種類のサイズしかつくっていなかったそうですが、最近は原料をむだにしないためにも、さまざまなサイズや形のものをつくるようになったそうです。
また、きれいな箒は、ただ壁にかけておくだけでも、目を楽しませてくれ、毎日を彩ってくれます。
「昔は、箒といえば汚いものと思われていました。しまうときも、戸棚の中に隠していたものです。でも、いまは、美しい箒が増え、部屋の目立つ場所に飾っている人もたくさんいます。時代は変わったなと思いますし、これからもいろんな広がりがあるんじゃないかという気がします」
吉田さんは楽しそうに話します。
床を掃く。吊るしておく。手入れをしながら、経年変化を楽しむ。
一本の箒が、暮らしを慈しむ喜びを、私たちに教えてくれます。
箒と長くつきあうコツ
ちょっと知っておくと便利なコツを柳川さんに教えていただきました。
必ず吊るしておく
床に直接置くと、穂先が曲がったり傷んだりするので、吊るしておくのが鉄則。
日光に当たりすぎると退色してしまうので、日の当たりすぎない場所に保管する
毛先のお手入れ法
1 毛先が汚れたら
ぬるま湯につけて、軽くふるようにして洗ったあと、陰干しを。
2 癖がついてしまったら
曲がったり広がったりしたら、ぬるま湯につけて柔らかくしたあと、タオルなどで軽く押さえながら手で形を整える。そのあと、吊るして干す。
3 毛先が傷んできたら
古く見えてきたり、不ぞろいになってきたりしたら、普通のはさみで毛先を軽く切ってそろえるとよい。
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10月24日(土)から天然生活 ONLINE SHOPで「中津箒」を限定販売いたします。
シンプルな “白” で編み上げた美しいモデルです。ぜひご覧ください ↓
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〈撮影/村林千賀子 取材・文/嶌 陽子〉
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです