(『天然生活』2017年3月号掲載)
本当に必要なものって何だろう?
風通しがいい台所。
扉は見事にひとつもなく、かといって、遊び心を忘れてシステマチックに組み立てられているわけでもなく。
「必要なものを、必要な場所に置いただけ」といいますが、この “必要なもの” の見極めが大切です。
実は 片づけられなかった過去をもつ 不動さん。
この家を建てたのは、10年前。すっきり暮らすきっかけは、ある友人宅を訪れたこと。
「きれいに片づいたその家を見て、衝撃を受けたんです。そこから、『本当に必要なものって何だろう?』と自分に問いかけたら、結局、そんなになかったんです」
カラフルでかわいいけれど重かった鋳物の鍋も、ちょっと洒落ている雑貨も、潔く、さようなら。
台所には使うものだけを収納できればいい、と割り切ったら、既存の収納スペースは、不動さんにとっては、オーバースペックでした。
それどころか、扉さえもいらないような気までしてきたのです。
「面倒くさがりなんですよ。扉を付けると、物を取り出すときに、 “扉を開けて閉める” の動作がどうしても必要でしょう。それが、どうも苦手だっただけなんです」
隠せない、丸見え。
だからこそ、片づいていないと落ち着けない。
少々、荒療治なようですが、実際に不動さんの台所は、10年間、散らかったことがないのです。
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不動家の台所
〈撮影/柳原久子(https://water-fish.co.jp/) 取材・文/福山雅美〉
不動美穂(ふどう・みほ)
長女、長男、夫と暮らす。障がい者支援事務所に勤務。利用者とともに布小物や陶器の小物を制作し、販売している。
インスタグラム@koinonia8man
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです