祈りと共にある、チベットの人々に魅せられて
東京でグラフィックデザイナーとして活躍していたわたなべかおりさんが、7年もの間ネパールで暮らすことになったきっかけは、2000年のチベット旅行でした。
旅行の前半は体調を崩してしまい、回復後に街に出て初めて見た景色は、寺院で祈りを捧げる人々。
お坊さんはもちろん、各地から聖地を目指してきた老若男女がひたすら祈り続けている姿は神々しく、涙があふれて止まらなかったといいます。
「人々の暮らしに祈りが根付いていて、誰もが心温かく、強く、やさしい。感動したと同時に、私もこんなふうに人として大きくなりたいと思いました」
その後、縁あってネパールのチベット文化圏で暮らすことになり、かなりおおらかになったと笑うわたなべさん。
カシミヤ製品を始めとしたオリジナルブランド「ai,」を主宰・運営し、帰国後も現地の豊かな手仕事を活かしたものづくりを展開しています。
ブレない自分をつくるための、毎朝のルーティン
ネパールではホリスティックなチベット医学にも触れ、心と身体のバランスをとることの大切さを実感したというわたなべさんが、毎朝欠かさずに行っていること。
それは、「読経 → お祈り → 呼吸法 → 瞑想」という流れの習慣。
時間があれば、続けてヨガも行います。
「呼吸法や瞑想は日本でもやっていたのですが、ネパール生活を経て、ひとつのルーティンとして完成した感じ。すっきりと1日を始められます」
まずは、チベット語で書かれた短い経典を読み、次に自分の言葉でお祈りを。
実利的な願いごとではなく、チベットの人々が世界平和を願うように、平和につながる自分でいられるように祈ることで、理想の自分の軸を作る のだといいます。
続いて、さまざまなやり方を取り入れた腹式の呼吸法を実践。
身体の上下や左右の軸を通してバランスをとり、丹田を鍛えて上半身をリラックスさせ、下半身をどっしり安定した状態にします。
「私は瞑想モードに入るために、まずはこうやって身体を整えてから、瞑想を深めます」
その後は、自然に瞑想へと移ります。
「瞑想は、私にとって自分の心の一番深いところにある命の泉に触れるひととき。慌ただしい日常では「澱(おり)」が溜まりがちですが、源泉に触れることで心がクリアになる気がします。毎日続けることで軸が確かになり、ブレない自分をつくっていけると思っています」
30分ほどかけて一通りのルーティンが終わると、「気持ちも身体もすっきりして、『おはよう、世界!』という感じになります(笑)」
わたなべさんのお話に何度も出てきた 「軸」 という言葉。
心と身体の両方からアプローチすることで、より確かな軸がつくられていくのでしょう。
自分なりの朝のルーティン、ぜひ工夫してみたいです。
〈写真・文/高瀬由紀子〉
わたなべ かおり
ai, 主宰・デザイナー。東京でフリーグラフィックデザイナーとして活動中に、世界を一人旅してまわる。7年間のヒマラヤ暮らしを経て、2010年に帰国。東京を拠点に活動後、2014年に香川・仏生山へ移住。ネパールの作り手との商品製作を続けながら、極楽仏生山暮らしを満喫中。
http://aistore.jp