• 日々、食事づくりをしていると、献立づくりに悩むことが多いもの。マンネリを打破する、飽きさせない献立づくりのノウハウを松田美智子さんに伺います。
    (『天然生活』2015年12月号掲載)

    飽きさせない献立づくりのコツ[夕食編]

    画像: 飽きさせない献立づくりのコツ[夕食編]

    昔ながらの日本型の食事は、一汁三菜が基本。夕食の献立を考えるときもここからスタートするとよい、と話す松田美智子さん。

    おすすめは、一汁三菜(ごはん、汁もの、主菜一品、副菜二品)に漬物をプラスした三、五菜。

    「野菜が残ったら、ぬか漬けや即席漬けにして冷蔵庫で保存し、まず、さっと食卓に出します。漬物は、ほかのおかずができるまでのつなぎや、食事中の箸休めとして便利。それに、手づくりの漬物は、食卓にあると、ほっとしますよね」

    具体的な献立を決める際は、まず、旬の食材から主菜を決め、冷蔵庫にある食材を見ながら、副菜を決めるとよいといいます。

    「私は主菜には魚や肉を使いますが、いまなら、さんま、ぶり、豆あじ、子持ちガレイ、かきといった食材にすると、自然と季節ごとのメリハリが出ますし、素材そのものがおいしいので、調理法を凝らなくてもすみます。肉には旬はありませんが、たとえば、同じ豚の三枚肉でも、冬なら豚しゃぶなどのお鍋系にして、調理法で旬を感じさせるとよいでしょう」

    副菜二品は、主菜と調理法がかぶらないように、味わいや食感もおかず三品のなかで変化が出るようにチョイス。

    さらに色のバランスを考え、吸い口や薬味などのあしらいにも心を配り、五感で楽しめるように仕上げていきます。

    「料理を見てまず、 “おいしそう” “いい香り” と感じると、食べたいという気持ちが自然とわきます。そして、口に入れて嚙んでいろいろな食感があると、 “これは手がかかっている” と感じて箸が進むのだと思います。ご家族に対してでも、ちょっとしたおもてなしの心をもつとよいですね」

    素材の味を生かす料理を心がける

    味つけの面では、素材本来の味を立たせることが、飽きさせずに、おいしいと感じさせるポイントになるといいます。

    「そのためには、調味料の選択や、使う量が重要です。しょうゆであればしょうゆの、酢なら酢の本来の伝統的なつくりをしたものを選ぶとよいでしょう。調味料そのものの味に、深みがありますから、量を控えられますし、ほかにあれこれ入れなくても十分おいしい。いい意味で手抜きになるんです」

    さらに、何かひとつオリジナルの調味料を持っていると、味つけが楽になるとか。松田さんのマイブームは “余りじょうゆ” なのだとか。

    「きざんだししとうがらしを入れたしょうゆをベースに、余った薬味を加えてつくる発酵調味料です。その際、加えてはいけないのが、くさみの出るねぎと油類。冬であれば、しょうが、かんずり、ゆずこしょうなど、鍋の薬味として使って余ったものを加えていくので、季節感も出ます。野菜や肉をただゆでたものでも、それをかけるだけで味が決まるのがいいんです」

    オリジナルの半調理品がマンネリ打破の決め手に

    毎日、いちから全料理を完璧につくるのは大変だから、素材の使いまわし術も大切と、松田さん。

    「おすすめは、素材を買ってきた日に中途半端に残さずに、半調理品にしてしまうこと。とくに、旬の食材は安くておいしいので多めに購入して、そうするとよいと思います。たとえば、ぶりなら、その日は照り焼きで食べ、残りは塩をして冷凍しておきます。すると、食べたいときに、ソテー、トマトシチュー、から揚げなどにアレンジできます。また、時間をかけて煮込んだものは、一〜二品アレンジしないと、その時間と労力がもったいないですよね。牛すね肉などはゆでて肉とスープを別々に保存しておくと、ビーフシチューやカレーはもちろん、カツや煮込み、ソテーなど、さまざまな料理に使えます。今日がんばって料理をしたら、次の日はアイデアで勝負。そんな具合に上手にやりくりしていくのがよいと思います」

    献立の立て方

     食べたい旬のものなどからメイン料理を決める

    まず決めるのがメイン料理。魚は旬のものを選べば、安くておいしく、季節感も演出できます。肉は、冬なら鍋や煮込みというように、調理法で季節を感じさせるとよいでしょう。また、肉と魚は、続けて出さず、交互に。

     冷蔵庫を確認し、メインとは違う調理法と味つけで副菜二品を考える

    飽きのこない献立づくりのためには、全体のバランスが何より大切。炒めものばかり、蒸しものばかり、といったように調理法が偏らないように、そして味つけや食感も三品のなかで変化がつくように意識しましょう。

     翌日以降のために中途半端に残った材料で半調理品をつくっておく(余った大根を千六本に切り、塩をする、野菜をぬか床に入れるなど)

    魚、肉、野菜、豆腐、果物などは中途半端に残さず、買ってきた日に、ゆでる、揚げる、塩をふる、漬ける、など半調理。冷蔵または冷凍でストックしておくと、手軽に料理でき、アイデア次第で料理の幅が広がります。




    〈料理/松田美智子 撮影/川村 隆 取材・文/野上郁子(オフィスhana) イラスト/松尾ミユキ〉

    松田美智子(まつだ・みちこ)
    料理研究家、テーブルコーディネーター。日本雑穀協会理事。女子美術大学講師。季節感と素材そのものの味、風味を大切にし、理に叶った調理法を提唱している。著書に『季節の仕事』(扶桑社)ほか多数。

    ※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです

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    天然生活の本『季節の仕事』(松田美智子・著)

    天然生活の本
    『季節の仕事』(松田美智子・著)

    天然生活の本『季節の仕事』(松田美智子・著)

    A5判
    定価:本体 1,400円+税
    ISBN978-4-594-08481-3



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