お菓子はほとんど手づくりするという、はなさん。何度もつくっている、とっておきのレシピを教えてもらいます。毎月30日更新。
hana’s memo
20年以上前に、パリのヴォージュ広場の一角に佇むカフェで、名物の「タルトタタン」を注文しました。
りんごの食感、酸味と甘み、生クリームとのバランスが絶妙 で、ひと口食べた瞬間、ヴォージュ広場からパリ郊外のりんご畑に飛んで行ったような気持ちにさせられました。
あの衝撃的な出会いから、タルトタタンは「パリのカフェ」で食べるものと思い込んでしまい、家でつくるようになったのは、ここ数年のことです。
一説によると、タタン姉妹がアップルパイを焼いている途中、パイ生地を型の底に敷くのを忘れたことに気付き、最後にパイ生地を乗せたという、うっかりさんの失敗から生まれたお菓子なのです(笑)。
だったら私も家でつくってみよう!と、いまでは 紅玉りんご=タルトタタン に変換されるほどで、タルトタタンづくりはこの時期の風物詩にもなりました。
今回はりんごを煮込む際に、グラニュー糖と三温糖で味を比較してみましたが、私の軍配は「三温糖」に上がりました。
グラニュー糖の方がすっきりとした味わい、最初からキャラメルの風味がある三温糖の方がコクが出ます。
ただ、フライパンで砂糖がキャラメル色に変わる瞬間を見極めるには、グラニュー糖の方が簡単です。
さらに、りんごの食感を楽しみたい方は、新鮮なりんごを 使用すること。
時間が経ったりんごは「シャリシャリ感」が減りますが、それはそれで最終的にりんごジャムのようなねっとりしたタルトに仕上がるので、好みにもよると思います。
失敗から生まれたお菓子だからこそ、自分の味を追求したくなる。
タタン姉妹がうっかりパイ生地を敷き忘れたストーリーも盛り込んで、日本のりんご、日本の素材でおいしいタルトタタンのレシピを完成しました。
紅玉りんごを見かけたら、ぜひつくってみてくださいね!
タルトタタンのつくり方
材料(直径15cmの底が抜けないケーキ型1台分)
〈パイ生地〉 | |
● 薄力粉 | 80g |
● きび砂糖(もしくは三温糖) | 10g |
● バター(食塩不使用) | 50g |
● 卵黄 | 1個分 |
● 牛乳 | 小さじ1 |
〈りんごのフィリング〉 | |
● 紅玉りんご | 6個(約1kg)(皮をむき、芯を取り除いて、正味770g) |
● 三温糖 | 皮と芯を取り除いた後のりんごの重さの10%(今回は77g) |
● バター(食塩不使用) | 50g |
● 水 | 大さじ1 |
下準備
*パイ生地用のバターは1cm角に切り、冷蔵庫で冷やしておく。
*パイ生地用の牛乳も、冷蔵庫で冷やしておく。
*荒めの砂糖はあらかじめミルで細かく砕いておく。そうすることでお菓子の生地に細かい「点」が浮き出ない。
*りんごを4等分に切って皮をむき、芯を切り落としたら、水が入ったボウルにさらしておく。
*直径15cmのケーキ型(底が抜けない型)にクッキングシートを敷く。
*オーブンを180度に予熱する。
つくり方
1 パイ生地をつくる。フードプロセッサーに小麦粉、砂糖、バター、卵黄を入れ、混ぜ合わせる。
2 牛乳を加え、生地が軽くまとまるまで混ぜる。
3 フードプロセッサーから生地を取り出し、少し平らにした状態にしてからラップする。冷蔵庫で1時間以上、寝かせる。
4 りんごのフィリングをつくる。砂糖をフライパンに入れ、水を加える。
5 フライパンを中弱火にかけ、木べらでたまに混ぜながら砂糖を焦がし、色が変わるまで煮込む。
6 砂糖が焦げた香りがしてきて、キャラメル色になったらバターを加え、もう少し色が付くまで煮込む。
7 火を止め、下準備しておいたりんごを並べる。
8 再び中弱火にかけ、計14~15分ほど煮込む。5分おきくらいにひっくり返し、透明感が出てきて、りんごが全体的に薄茶色になるまで煮込む。
[はなよりひと言]
煮くずれに気をつけながら、たまに鍋を揺らし、水分をからめます。
9 直径15cmのケーキ型にりんごを詰める。
[はなよりひと言]
背中がなるべく外に向くように敷き詰め、煮くずれたりんごは中に詰めます。隙間をつくらない方が仕上がりがきれいです。
10 180度に予熱したオーブンに9を入れ、35~40分ほど焼く。
[はなよりひと言]
りんごの状態によって焼き時間が変わります。新鮮なりんごは40分ほど焼いても大丈夫ですが、収穫から1週間以上経ったりんごは35分ほどで大丈夫です。
11 オーブンから出したらスプーンで隙間を埋める 。
[はなよりひと言]
クッキングシートに焦げたキャラメルが付いたら、取り出すタイミングです。あまり焼きすぎると、りんごの食感がなくなります。
12 網に乗せて、型ごと冷やす。
[はなよりひと言]
いまの時期は外に出して冷やすと、早く熱が取れます。
13 3のパイ生地を冷蔵庫から取り出し、3mmほどの厚さに伸ばしたら、15cmの型を生地にのせ、丸くくり抜く。型がなければ、クッキングシートなどに15cmの円を描き、それに合わせて生地を丸く切る。生地は使うまで冷蔵庫で冷やしておく。
14 焼く10分ほど前に、13のパイ生地を冷蔵庫から取り出し、フォークで穴を刺す。
[はなよりひと言]
生地に穴がちゃんと空いているかチェックして。フォークで刺して、貫通させます。
15 生地を、冷ましたりんごの上にのせ、指で生地が縁に届くまできっちり伸ばす。
16 180度に予熱したオーブンで35分ほど焼く。
17 粗熱を取ったら冷蔵庫に入れ、8時間以上(ひと晩)冷やしてでき上がり。型を逆さにしてタルトタタンを皿に取り出し、好みの大きさに切り分けていただく。
[はなよりひと言]
生クリーム100mlと三温糖大さじ1と1/2を合わせて泡立てて、タルトと一緒に食べると酸味がやわらいで、おいしいです!
◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇
*13で余ったパイ生地は冷凍保存可能。3mm厚さくらいに伸ばしてから型抜きし、シナモンパウダーとグラニュー糖をまぶして、180度のオーブンで12~15分ほど焼くとおいしい焼き菓子に。
はな
モデル・タレント。神奈川県横浜市出身。17才からモデル活動を始める。現在は、ファッション誌で活躍するかたわら、FMヨコハマ「Lovely Day♡〜hana金〜」のナビゲーターや、日本テレビ「夢の通り道」のナレーションも務めるなど、幅広く活躍している。趣味はお菓子づくりや茶道、仏像鑑賞。著書に『はな、茶の湯に出会う』(淡交社)、『hana’s style book』(宝島社)、『ちいさいぶつぞう おおきいぶつぞう』(幻冬舎)、『おくるおかし』(集英社)など。朝日新聞デジタル&TRAVEL「はなのたびたび旅日記」連載中。
Instagram https://www.instagram.com/hanalovestaco/
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天然生活webの連載「はなのお菓子」で人気のレシピを集めて、1冊にまとめました。「いちごショートケーキ」「タルトタタン」「台湾カステラ」「バスクチーズケーキ」など、はなさんが試作を重ねてできた32のレシピ。ぜひお家でつくってみてください。お菓子づくりに目覚めたきっかけなどについてのインタビューも掲載しています。