• コロナ禍において、少なからず影響を受けている飲食店業界。少しでも応援の気持ちを込めて、世界を旅する写真家・在本彌生さんが、自身の尊敬する名店を訪ねます。在本さんが、コロナ禍での新しい飲食店の可能性を感じた出来事がありました。イタリアンの名店「ACQUA PAZZA」に、新しいお客さんが押し寄せているのです。きっかけとなったのは、なんとYouTube。日髙良実シェフ、御年63歳からの挑戦です。絶品の看板料理「アクアパッツァ」をご紹介します。

    言わずと知れた魚イタリアンの老舗「ACQUA PAZZA」

    画像: あいなめのアクアパッツァ

    あいなめのアクアパッツァ

    アクアパッツァといえば、日本ではイタリアンの魚料理で真っ先に思い出される一品だろう。

    そこそこ新鮮な素材を手に入れることができたら、なんとなくこんな感じかなー、と作り方を想像して作ってしまってもまあまあの味に仕上がるし、豪華なルックスのわりに時間も手間もあまりかからない料理、誠に軽率ながら、私はそんな風に思っていたのだ、「ACQUA PAZZA」の日髙良実シェフのYouTubeチャンネルを見るまでは......。

    画像: アクアパッツァをつくる日髙良実シェフ(左)

    アクアパッツァをつくる日髙良実シェフ(左)

    「ACQUA PAZZA」、魚料理の名前をそのまま店名に掲げるなんてとことん潔く、わかりやすい。看板料理はアクアパッツァをはじめとする魚料理、今年開業30年を迎える言わずと知れた老舗イタリア料理店だ。

    店を構えて以来、苦楽共に経験しつくされた日髙良実シェフだが、万人にとって困しい時となった「コロナ時代」に、あるきっかけからいちるの活路を見出した。

    自粛休業期の1カ月ほど前に出演した番組で料理を披露しレシピを公開したところ、予想外の大きな反響に驚いた。

    レストランの再開後「自粛期間にYouTubeを見ていつもはしない料理を試したんです、お店で正真正銘のアクアパッツァが食べてみたくて来ました」という新規のお客様があとを絶たなかったという。

    画像: 変遷を経てたどり着いた現在のアクアパッツァでのレシピは、素材の数は少なく厳選されている

    変遷を経てたどり着いた現在のアクアパッツァでのレシピは、素材の数は少なく厳選されている

    YouTubeを見たら味を体験しに行きたくなった

    かくいう私もその視聴者の一人で、有名店である「ACQUA PAZZA」の存在はもちろん知っていたものの、一度も行ったことはなかったのだ。日髙シェフは、YouTube出演によって新しいお客様が店に足を運んで下さってダイレクトな反応を伝えてくれることに心底感激した、という。

    YouTubeゲスト出演後の反響を受け、自分でもチャンネルを持つことにした(新たな挑戦!)日髙シェフ、番組での無駄のない解説や手順の軽快さが非常に分かり易くて、料理の合間に溢れる修行時代の体験話も楽しい。生の体験が料理に活かされていることも、暖かいお人柄も伝わってくる。

    画像: アクアパッツァが手際よく取り分けられる

    アクアパッツァが手際よく取り分けられる

    実際に作ってみるとどのレシピも間違いなく美味しく出来上がる。一度手順を見せてもらっているからだろうか、実際に料理する時の手際が良くなるから嬉しい。実体験から言うと、特に「アクアパッツァ」は、本当に今まで自分が作っていたものとは別格の旨さに変身した。

    日髙式の作り方では、魚を皮目からかなりしっかりと焼き目がつくまで焼いたり、セミドライトマトを作って加えたり。私が今までしていなかった小さなプロセスの積み重ねで、これほど洗練された味、旨さに昇華できるのだと心底驚いた。

    画像: 自分がつくっていたものとは別格、これぞ日髙シェフのアクアパッツァ、私はこの一品を人類の幸せと呼びたい

    自分がつくっていたものとは別格、これぞ日髙シェフのアクアパッツァ、私はこの一品を人類の幸せと呼びたい

    もう今までの我流の作り方には戻れないとさえ思っている。日髙式アクアパッツァは30年の歴史を経た超進化系なのだから、そりゃ何かが、いや、何もかも違うのだ。

    日髙シェフから伺ったところ、この料理のレシピは変化と進化を繰り返して今に至っているそうだ。一般的なアクアパッツァのレシピとおなじく、ケッパーやオリーブを入れていたこともあるという。あらゆるものを削ぎ落として、今はこの味に着地しているのだそうだ。

    イタリアの片田舎のうまいもん屋のように

    画像: 突き出しの、バターナッツかぼちゃのポタージュ、吉田牧場のモッツァレラチーズ、パルマ産生ハム24カ月熟成

    突き出しの、バターナッツかぼちゃのポタージュ、吉田牧場のモッツァレラチーズ、パルマ産生ハム24カ月熟成

    それにしても、こんな素晴らしいレシピを世界中に惜しみなく公開してくれる日髙シェフ、寛大である。そして何より、シェフの料理を見ていると、この店の味を体験しに行きたい、そう思ってしまうのだ。

    画像: 伊勢海老のビーゴリ(手打ち麺のロングパスタ)、にんにくパン粉がけ

    伊勢海老のビーゴリ(手打ち麺のロングパスタ)、にんにくパン粉がけ

    お店に入り、丁寧に席まで案内して頂き、広く清潔に保たれた空間で心配りの行き届いたサービスを受けると、忙しい気持ちが解け、ほかのことはしばし忘れて食事をひたすらに堪能しよう、そう気持ちが切り替わる。

    画像: 静岡産の黒毛和牛ランプ肉

    静岡産の黒毛和牛ランプ肉

    YouTubeでのACQUAPAZZAとの出会い以来、複数回お店を訪れ、その度に違う魚で作られたアクアパッツァを食した。魚が違えば味わいも当然違い、無限に味の可能性を孕んだ料理でもあることを実感できたのは面白い体験だった。

    画像: この日のデザートはモンブラン

    この日のデザートはモンブラン

    自分で作っても美味しいのだけれど、お店で味わうアクアパッツァは格別で、スープを口に運ぶ度、旨味が身体中に行き渡り、強張った筋肉がほぐれ、疲れから解放されていくような感じさえした。

    日髙シェフはお客様の食事のタイミングを見計らって、各テーブルまで挨拶に回ってきてくださるので、その「食の驚きと感激」をシェフに直接お伝えできたのもとても嬉しかった。私の素朴な感想に対して「30年も作り続けていますからねえ」と日髙シェフは微笑まれた。

    皿ごとに選んで頂くワインもピタリと料理に調和して、美味しさの二度目の波、第三目の波が舌に押し寄せる。イケるのはアクアパッツァだけではない。

    画像: 支配人でもあるソムリエの鈴木貴博さんのおすすめは間違いなし

    支配人でもあるソムリエの鈴木貴博さんのおすすめは間違いなし

    口に運ぶたび、思わず「美味しい!」と声を発してしまう鮮魚のカルパッチョ(アサリ出汁のソースが素晴らしい)も猛烈にお勧めしたい一品だし、暖かい前菜もパスタも肉 料理もデザートも、最後のエスプレッソに至るまで、美味しさに身を浸す幸せなひとときを堪能できること間違いなし。

    画像: 千葉県産、金目鯛のカルパッチョ。あさりのだしをかけて


    千葉県産、金目鯛のカルパッチョ。あさりのだしをかけて

    老舗の敷居の高さはどうか意識せずに、一人でも、大事な人と一緒にでも、この店の味とムードを体感してほしい。仮にあなたが心身共に疲れていたとしても、食事が終わる頃には少し元気を取り戻しているだろう、イタリアの片田舎のうまいもん屋に行ったみたいに。次にアクアパッツァに行く日がすでに楽しみだ。

    画像: リストランテ アクアパッツァ(ACQUA PAZZA)

    リストランテ アクアパッツァ(ACQUA PAZZA)

    リストランテ アクアパッツァ(ACQUA PAZZA)

    1990年西麻布で誕生したリストランテアクアパッツァは、田舎のリストランテをイメージし、西麻布で10年、広尾で17年半が過ぎ、2018年4月に南青山に移転。2020年11月20日に、アクアパッツアは30周年を迎えました。

    予約時に、「天然生活ウェブサイトをみた」と、お伝えいただければ、日高シェフがご挨拶に来てくださいます。

    050-5869-3542
    東京都港区南青山2-27-18 青山エムズタワーパサージュ青山 2F
    https://acqua-pazza.jp/about/

    <写真・文/在本彌生>


    This article is a sponsored article by
    ''.