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「おまもり」の語源は “見守る” だそう。私が私らしく、居心地よく生きるための「おまもり」を分けていただきに、大段まちこ(フォトグラファー)&井尾淳子(フリー編集者)のふたりが、心とからだを整える魔法使いのような人々を訪ねます。
おまもりルームより
ふっくらとした愛を込めて。
奈良・初瀬の古民家を訪ねて
みなさん、こんにちは。
いまだ続く大きな社会変化のなかで、私たちが3つめの「おまもり」として選んだのは、
「食養生の知恵」です。
訪ねたのは、1981年から32年間、ヨーロッパの人たちに東洋的な食養法を広めていたことで知られる、オオニシ恭子先生。
現在は奈良・初瀬にある古民家に移り住み、フード*メディスナー©(食を通じて心身のトラブルを改善するエキスパート)として、エネルギッシュに活動を続ける先生。
そのパワーに、私たちは勇気をいただくことができました。
先生との出会いは、1年ほど前。
著書『なにを食べるかは からだが教えてくれる。』(PHP研究所) Amazonで見る の出版を記念して行われた、トークイベントに参加したことがきっかけでした。
そんなご縁もつながって、私たちは念願だった先生のご自宅(兼、料理教室)、長谷寺にほど近い、古民家へと伺うことになったのです。
70代のいまも、「医者いらず」
大段:先生、お久しぶりです。自然に囲まれた素敵な古民家ですね。
井尾:本当~。お伺いすることができて、とってもうれしいです!
オオニシ先生(以下、オオニシ):ようこそ、いらっしゃいました。
大段:出版トークイベントでのお話が興味深くて。ぜひ続きをお聞きしたかったのです。
井尾:先生はいま、オンラインでもリアルでも、さまざまな講習や活動をされているとお伺いしました。とってもエネルギッシュでいらっしゃるのは、やはり、食べもの&食べ方の賜物ですか?
オオニシ:ええ、そうだと思います。もうずっと何年も、医者いらずできていますからね。
ふたり:すごい!
オオニシ:50代の時にね、「いやぁあなた、元気そうだけど、60歳になればそうはいきませんよ」って言われたんです。「そういうものかな」と思って60代になったんですけど、でも私はますます元気になったのね。そうしたら、「いやぁ、70歳になればそうはいきません」って言われてね(笑)。
井尾:そしてまた、ますます元気になられた(笑)。
オオニシ:そうなんです。いま、79歳なので、さすがにどうだろうと、ときどき思うんですけどねぇ。でも……元気ですね、やっぱり(笑)。
「ぜひ、その秘密と先生のルーツを知りたい!」と思った私たち。まずはご自身のこれまでについて、振り返っていただきました。
(その物語については、私たちの合いの手なしで、じっくりとお読みください!)
先生の前身は、「新進気鋭のインテリアデザイナー」
20代の頃は、食とはまったく関係ない、インテリアデザイナーの仕事をしていました。
銀座松屋のグッドデザイン賞といって、デザイナーの登竜門があるんですよ。「優れたデザインが社会へと浸透するように」という主旨なんですけれども、当時、入賞いたしました。
「ユニークな家具のデザインだ」ということで、無名ながらも、新聞や雑誌で取り上げていただいてね。
畳が中心の時代で、日本のインテリアデザインは、まだまだこれから、という時。「将来、日本のインテリアを変えていこう」という志をもって働いていました。
60年代でしたので、ファッションの世界では、三宅一生さんや山本寛斎さん、高田賢三さん。建築家の黒川紀章さんや映画監督の篠田正浩さんなど、あらゆる分野で、新しい時代を担おうという方がたくさん出てきた時代でした。
からだに溜まっていた毒素が「手荒れ」に現れた
ただ、私は手が荒れてひどくて。
当時はコンピュータじゃないですから、使っていたコンパスとか定規、紙もつかめないくらいでした。
人前でも恥ずかしかったので、大学病院に行ったところ、「主婦湿疹ですよ」という診断。
結婚してまもなく、中性洗剤が出てきた頃だったので、「それが原因でしょう」と言われました。
ゴム手袋をすれば治るというのでそのとおりにしたら、蒸れてしまって、よけいひどくなってね。
漢方薬を飲んでも治らないし、皮膚科の薬を塗っても、一時的に良くなるだけ。
手のひらだけではなく甲まで紫色に腫れて、「私のからだ、どうなってしまうんだろう」と、不安でたまりませんでした。
そんなある日、日本のマクロビオティックの提唱者で知られる桜沢如一(ゆきかず)先生の本に出会いました。
「食べものですべての病は治り、運命も変わる」という本の一節を読んで、ピンときたのでしょうね。
この手荒れも、これまでの食生活で溜まった毒素の現れなんじゃないかな、と。
それが、私と「食養生」との出逢いでした。
「やってみよう!」とすぐに思って、いままで使っていた砂糖や醤油など、調味料はすべて、添加物のないオーガニックのものに替えました。
肉中心の西洋式の食生活もやめたところ、1週間くらいで手荒れがどんどん改善して、すっかり治ったんです。
びっくりしましたね。「何? これは」と。
もっと勉強したくなって、本業そっちのけで、桜沢先生の奥様・桜沢リマ先生の料理教室に通い始めました。
食養生という考え方が、もう面白くて面白くてね。
リマ先生の教室以外にも、如一先生に影響を受けて、食べ物でどこまで不調を治せるのかを徹底研究している先生がいらして。
大森英櫻(ひでお)先生という、仙人みたいな方だったんですけどね。
もうひと言も聞き漏らしたくない!と、その先生のところにも、本当によく通いました。
食を変えて、からだに起こった変化
「これが解毒か」と驚きました。
それまでの私は、何の疑問も持たずに食べたいものを食べていて、それが不調を引き起こしていたことを知りました。
夢中で学んで食べ物を変えていくうちに、私のからだに、いろいろなことがたくさん起こったのです。
たとえば、髪の毛がすぐ抜ける、極端に体重が落ちる、目が充血する、爪がぐにゃぐにゃする、咳が止まらない……など。
周囲からは、「あなた大丈夫? そんなことするからよ。早く病院に行きなさい」と言われましたが、私自身は出てくる症状とは裏腹に、体が軽くなるような感じがして、不思議と気分が良かったんです。
どんどん良くなる感じがあったので、「大丈夫」と信じることができました。
あまり心配せずに観察しているうち、体重も戻ったし、髪の毛もふさふさしてきたし。まさに細胞が入れ替わったような感じ。
それ以来、大病もせず、ちょっとした風邪をひく程度で、病院に行ったことはありません。
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ふたり:…へえ~~~~!(聞き入っている)
井尾:前職のお話から、まるで朝ドラのようなストーリーですねぇ。
大段:本当に。続きも気になります~。
その後、先生の運命は、師匠の桜沢リマ先生によって、さらにダイナミックになっていきます。
次回は先生のその後と「食養生の基本」についてお伝えします。お楽しみに!
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オオニシ恭子(おおにし・きょうこ)
フード*メディスナー©。食養料理研究家の桜沢リマ氏に学ぶ。1981年渡欧。以来32年にわたり、東洋的食養法を基本としながらも欧州における素材と環境を取り入れた食養法「ヨーロッパ薬膳」の普及に努める。2013年1月より、奈良・初瀬の地に移住。女性のための食養生を考え、提案する「やまと薬膳」を主宰。それぞれのライフスタイルや体調を見ながら、その環境に適応した食事法を指導する。料理教室や各種オンライン講座等の詳細は、
https://yamatoyakuzen.com/
大段まちこ(おおだん・まちこ)
フォトグラファー。かわいいもの、雑貨、ファッションなどをテーマに女性誌やライフスタイル誌で活躍。共著に『花と料理』(リトル・モア)などがある。
http://odanmachiko.com/
井尾淳子(いお・じゅんこ)
フリーライター&編集。子育て雑誌の編集経験を経て、現在は書籍、Webコンテンツなどの編集、執筆を中心に活動。