• 子どもは、ほとんどの病気を自分で癒す力があるといわれています。普段から自然治癒力を高めておくために大切な脳、腸、腸内細菌の関係性について、小児科医・微生物学者の本間真二郎さんに教えてもらいました。2児の父でもある本間さんが考える、心とからだの元気を生み出す方法とは?
    (『あかちゃんからのかぞくの医学』より)

    腸にいいことをすればいい

    「脳腸相関」ということばがあるように、精神活動を含む脳の状態と腸の状態は、深く関係しています。

    たとえば、ストレスがかかると胃潰瘍になったり、便秘、下痢をするなどの経験があるひとも多いでしょう。ストレスが消化管の状態を悪くしていることは明らかで、その逆もしかり。消化管の状態が精神活動に影響を与えていることもまた、間違いありません。

    わたしは、この「脳腸相関」に、もうひとつ「腸内細菌」を加えたほうがよいと考えています。

    マウスを使った研究でも、腸内細菌は学習能力、記憶力、認知能力などにも影響していることがわかり、腸内細菌が人間の気分や性格までも決めているのでは?という見解も出ているほど。

    人間のあらゆる活動は、「脳」「腸」「腸内細菌」がネットワークを形成して調整していると考えるほうが現実的です。

    また、腸内細菌との関係は分子レベルでも明らかになっています。

    たとえば、イライラを抑えるので「幸福ホルモン」と呼ばれるセロトニン。その95%以上は、腸、つまり腸内細菌がつくっています。

    ほかにも、ストレス反応の中心物質は「コルチゾール」と呼ばれるホルモンですが、これも腸内細菌がコントロールしていることがわかっています。これらのことから、ストレス耐性の強弱も腸内細菌が調整をしているのではないかと考えられています。

    とくに幼少期の腸内環境は重要で、このときの腸内細菌の状態が、ストレス反応や発達障がいと深く関係しているという報告も多く見られます。ストレス対策はいろいろありますが、まずは「腸にいいことをすればいい」と考えれば、シンプルになります。

    画像: 腸にいいことをすればいい

    人体に何らかの負荷がかかると生じる「ストレス反応」。このときからだの状態を一定に保つ働きをするのが、免疫系、自律神経系、内分泌系の3つの系からなる「ホメオスタシス(*)」です。

    たとえば、高熱が出たときに大量の汗をかいて体温を下げようとする、など。この健康維持に重要な働きは、以前は脳がコントロールしているとされてきましたが、近年、脳・腸・腸内細菌が連携して操作していることがわかってきました。

    *homeostasis…生体恒常性。人体に何らかの異変があった際、心身を一定の状態に保とうとする働き。

     

    本記事は『あかちゃんからのかぞくの医学』(クレヨンハウス)からの抜粋です


    画像: 小児科医・微生物学者が教える、心とからだ、脳・腸・腸内細菌の関係|あかちゃんからのかぞくの医学

    本間真二郎(ほんましんじろう)
    小児科医・微生物学者。2児の父。2001年より3年間、アメリカ国立衛生研究所(NIH)にて、ウイルス学、ワクチン学の研究に携わる。札幌医科大学新生児集中治療室(NICU)室長などを経て、栃木県那須烏山市へ移住。同市で医師として地域に密着した医療に携わりながら、農的生活を送っている。『天然生活』2021年6月号より、連載コラムを担当。


    本書は、小児科医であり、ワクチン開発にも詳しい著者による、ホームケア事典。注目の集まる「免疫」に重点を置いた本書は、従来の医学事典にはなかった、これからの時代の、まったく新しい子どもの医学大全となっています。



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