新米母時代を思い出す〈ぷくぷくたい エアインチョコ〉のやさしい味わい
いつ食べても変わらぬ “パリッ” 。
「パリッ」と「サクッ」の中間のような、やさしい歯応えのウエハースに、嘘みたいにほろほろと口の中で溶けていくチョコレート。平成元年に発売されてから、何度も食感の改良を重ねてきたという〈ぷくぷくたい エアインチョコ〉。
大平一枝さんは、通い慣れた駄菓子屋さんに立ち寄るたびに買っていたほど、〈ぷくぷくたい〉好き。駄菓子のメインディッシュと呼ぶほどに好きな理由を、その思い出とともに伺いました。
「わが子が小さいころのせわしない新米母時代、家事と仕事の両立が本当に大変でした。家事も育児もていねいにできない自分を責めたり、落ち込んだり。そんな時の息抜きは、近所の駄菓子屋で、子どもと一緒におやつを買うこと。その中に必ずあったのが〈ぷくぷくたい〉なんです。あのときは大変だったけど楽しかったなーって、〈ぷくぷくたい〉を見るたびに思い出しますね」(大平さん)
甘すぎず、ふわりと溶けるチョコレートの食感は、駄菓子と呼ぶには忍びない口どけの良さ。そのやさしい味わいに、あのころの大平さんも癒されていたのかも。
「ウエハースの “パリッ” もすごい! あれだけの “パリッ” をあの値段でいつでも味わえるなんてなかなかないことじゃないですか。日本のお菓子に対する技術の高さにびっくりしちゃう。ひとつ60円でこんなにちゃんとしていることに、襟を正す思いで食べています」
鯛は右向き?左向き?
日本人になじみのある形でエアインチョコのお菓子を出そうと、鯛焼き型になったという〈ぷくぷくたい〉。驚くことに、1989年の発売当初は、鯛の向きがいまとは逆でした。
「上司に『魚を皿に出すときは、顔は左向きだろう!』と指摘され、変更になったんです」(名糖食品開発部/北國世理子さん)
当時のパッケージを見てみると、あら本当。いまよりリアルな鯛の表情に気を取られて気が付きませんでしたが、しっかり右を向いています。日本では左側を上位としてとらえるので、お頭つきの魚は左向きが鉄則。お菓子でも日本の伝統をしっかり再現しているだなんて、本当に頭の下がる思いです。
楽しい限定フレーバー。
2009年にバナナ味を発売し、2019年より毎年春と秋の限定商品を店頭に並べるようになったそう。これまでにも「じわる塩スイカ味」や、「ゾンビ はらわたカシス味」(!)など、ユニークな商品が多くありました。
気になる2021年春の限定フレーバーは「クリームソーダ味」。
ちょっとレトロな緑のパッケージが目印です。見つけたら、ぜひご賞味あれ。
ぷくぷくたい エアインチョコ
■ 内容量 1個
■ 価格 60円(税別)
■ メーカー 名糖
名糖公式サイト 公式サイトを見る
〈撮影/山田 耕司 取材・文/山下あい〉
大平一枝(おおだいら・かずえ)
文筆家。長野県生まれ。編集プロダクション勤務を経て、1995年に独立。失われつつあるが失ってはいけない価値観、および大量生産・大量消費の対岸で生きる人々のライフスタイルや人物ルポを中心に各紙誌に執筆。著書は『東京の台所』『男と女の台所』(平凡社)、『届かなかった手紙』(角川書店)、『あの人の宝物』(誠文堂新光社)など多数。
HP:「暮らしの柄」http://kurashi-no-gara.com/
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