(『バスクの修道女 日々の献立』より)
Dos platos y postre
パンと二皿料理、そしてデザート。シンプルな修道院の食事
修道院の食事には習慣に沿った流れがあり、一皿目、二皿目、デザートの順番に食べます。
レストランですと、前菜からスタートして一皿目が始まりますが、家庭や修道院では一皿目から始めます。一度にサーブされることも多く、日本の一汁二菜に通ずると思っていただくと分かりやすいかもしれません。
修道院ではこの流れに従って、主食であるパンを中心に料理のバランスを考え、料理内容を決めていきます。メニューを決めるのが楽になり、栄養バランスも考えやすくなる利点もあります。
primer plato
一皿目
野菜料理、豆料理が中心です。サラダやスープ、ポタージュは頻繁に作られる一皿目のひとつ。また米料理、パスタなどの炭水化物も一皿目に含まれます。重めな料理のときは二皿目にすることもあります。
segundo plato
二皿目
魚料理、肉料理、卵料理が中心です。魚、肉を焼いただけのシンプルなものや、煮込み料理など。卵料理はトルティージャやオムレツ、茹で卵料理など。いずれも一皿目で野菜が不足している場合はつけ合わせを添えることもあります。
聖クララ修道院では水曜日と金曜日が魚介料理、あとは肉料理2回、残りは豆料理、卵料理とおおまかに暗黙のルールがあるそうです。肉を食べないカルメル会では魚介料理と卵料理が中心です。
postre
デザート
果物が基本です。食卓の大きな果物皿に常時置かれた季節の果物から、好みのものを好きな量だけいただきます。栄養バランス的にも旬の果物からビタミンを摂ることは理にかなっていると感心するところです。ヨーグルトやチーズが加わることもあります。そしてそんなときにははちみつも欠かせません。
ときには手間のかからないプリンやクリーム、果物のマセドニアを作る修道女も。ちょっと手のかかったお菓子は私たちと同じで、時間のある日曜日や特別な日に作ります。
pan y bebida
パンと飲み物
パンは主食。毎日の3食に必ず食べるもので、バゲットとバタールの中間のような太さをしたフランスパンタイプのものが一般的です。お水はガラスやホーローの水さしに入れて食卓の上に。ミルクを飲む修道女や、夜にはインスタントココアを飲む修道女もいるそうです。ココアよりもう少し濃いホットチョコレートを冬の夕食後に飲むことも。夏にはレモネードや果物のジュースをいつでも飲めるようにして、水分補給をします。
PRIMER PLATO 一皿目
にんじんのサラダ
INGREDIENTES
材料(4人分)
● にんじん | 2本 |
● 松の実 | 20g |
● レーズン | 25g |
● レモン果汁 | 大さじ1 |
● ディジョンマスタード | 小さじ1 |
● はちみつ | 小さじ1 |
● オリーブオイル | 小さじ1 |
● 塩 | 小さじ1/4 |
PREPARACIÓN
作り方
1 にんじんはせん切りにする。
2 ボウルに入れ、残りの材料を加えて混ぜ、冷蔵庫で30分ほど味を馴染ませる。
CONSEJOS
ひとこと
採れ立ての、やわらかく瑞々しい春にんじんを生で楽しみます。体内でビタミンAに変わるβ-カロテンを多く含み、オリーブオイルを加えることでさらに吸収率を高めます。混ぜて時間を置くとレーズンがやわらかくなり、全体に味が馴染んで美味しくなります。
SEGUNDO PLATO 二皿目
鶏手羽元とそら豆のハーブ風味
INGREDIENTES
材料(4人分)
● 鶏手羽元(または鶏もも肉) | 8本 |
● そら豆 | 140g(正味) |
● トマト(完熟) | 大1個 |
● 小ねぎ | 2本 |
● にんにく | 1片 |
● ローズマリー | 1~2本 |
● オリーブオイル | 大さじ1 |
● 塩、こしょう | 各適量 |
PREPARACIÓN
作り方
1 鶏手羽元は塩、こしょうをふる。
2 そら豆は薄皮をむく。トマトは皮をむき、粗みじん切りにする。小ねぎは3~4等分に切る。にんにくは包丁の背で潰す。
3 フライパンを強火で熱する。オリーブオイルを入れて中火に落とし、鶏手羽元の全体をこんがり焼く。脂が出たら、その都度ぺーパータオルでふき取る。
4 2を加えて塩、こしょうをふる。軽く混ぜ、ローズマリーをのせて蓋をし、弱火で20~30分蒸し焼きにする。途中、水分が足りないようなら適宜足す。
CONSEJOS
ひとこと
兎肉で作る料理ですが、ここでは鶏肉を使います。そら豆は崩れる程度にやわらかく、ほっくりとした食感を楽しみたいので、面倒でも薄皮はむきましょう。
POSTRE デザート
ベリーのマセドニア
INGREDIENTES
材料(4人分)
● いちご | 8個 |
● ラズベリー | 16個 |
● ミントの葉 | 5~6枚 |
● レモン果汁 | 1/4個分 |
● はちみつ | 適宜 |
PREPARACIÓN
作り方
1 いちごはヘタを切り落とし、4等分に切る。ボウルに入れ、ラズベリー、ミントの葉、レモン果汁を加えて混ぜる。
2 器に盛り、好みではちみつをかける。
そら豆のこと
4月になると待ちに待ったそら豆の収穫です。鳥に狙われてしまうので、網を被せたりして大事に育てます。ぷっくりと育ったそら豆は茹でてオリーブオイルを垂らすだけでも美味しく、思わず笑みがこぼれます。
また、若いそら豆は皮がやわらかく、香りも高いので、さやが小さいうちに採り、やわらかいさやごと食べたり、炒めたり、スープにして楽しむこともあります。
さやごとそら豆の生ハム炒め
INGREDIENTES
材料(4人分)
● そら豆(さやつき) | 小15本 |
● 玉ねぎ | 1/2個 |
● 生ハム | 40g |
● オリーブオイル | 大さじ1 |
● 塩 | 適量 |
PREPARACIÓN
作り方
1 そら豆はさやのヘタを切り落とし、筋を取る。玉ねぎはみじん切りにする。生ハムは食べやすい大きさに切る。
2 塩少々を入れた熱湯でそら豆をさやごと茹でる。筋がかたいようなら半分に開き割ってから茹でる。
3 フライパンにオリーブオイルを中火で温め、玉ねぎを炒める。しんなりとしたら水気をきったそら豆と生ハムを加えて炒め、塩で味を調える。
修道女の毎日のご飯には、ヒントがいっぱい
修道院の料理には、私たちが今必要としているヒントがたくさん詰まっていると思います。
キーワードを挙げれば、簡単、短時間で作れる、経済的、残さないで使い切る工夫、保存食、旬の食材、特別な日のうれしいお菓子など。
そして何よりも、誰もが「美味しい!」と喜んでくれることが基本になっているのは、私たちと変わりません。
バスクでお会いした修道女のレシピを中心に、今まで訪れた修道院や文献からの料理も交え、日々の献立をご紹介しています。
食材が手に入りにくいものは、本来の味を損なわず、日本の食材で作れるようなアレンジを心がけました。献立に困ったとき、気軽に活用していただけたら幸いです。
バスクの修道女の料理 10のポイント
1 慎ましやか、経済的、あるもの、予算内で作る
2 簡単、時間のかからない料理
3 軽くて体に優しい
4 旬の食材、栄養バランス、野菜たっぷりを意識する
5 一皿目、二皿目、デザート(おもに果物)の献立を基準にする
6 時間のあるときはデザートを手作りする
7 季節の保存食を仕込み、残り物を工夫する
8 洋食のお手本であり、スペイン・バスクの家庭料理のお手本
9 代々伝わってきた知恵を取り入れる
10 愛情を込めて作る
本記事は『バスクの修道女 日々の献立』(グラフィック社)からの抜粋です
〈料理・著/丸山久美 撮影/原田教正〉
丸山久美(まるやま・くみ)
料理家。スペイン家庭料理教室「mi mesa」主催。アメリカへ留学後、ツアーコンダクターとして世界各国を廻る。1986年からスペイン・マドリードに14年在住。家庭料理をベースにしたスペイン料理を習得しながら修道院を巡り、修道女たちから料理を学ぶ。『修道院のお菓子 スペイン修道女のレシピ』(扶桑社)、『家庭で作れるスペイン料理 パエリャ、タパスから地方料理まで』(河出書房新社)など多数。
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山と海の幸、春夏秋冬の気候に恵まれ、独自の食文化が受け継がれ、発展を遂げてきたバスクの料理。この本は、丸山久美さんがバスクの修道女たから教えてもらった料理に文献からの料理も交え、日本の食材でも美味しく作れるレシピにアレンジして紹介。旬の野菜を使った体に優しい献立を、380頁超のボリュームで収録しています。
簡単、時短、経済的、残さないで使い切る工夫、保存食。また、幸せな気持ちにしてくれるデザートなど、日本でも再現しやすいレシピが豊富に掲載。読み物として修道院やバスク地方の文化や行事についても知りながら、気軽に料理を楽しめる一冊です。