• ものや服が大好きで、楽しみながら買い物をしている引田かおりさんですが、住まいの収納には余白があり、訪ねた友人が驚くほど。その秘訣は、込み合ったら見直しの時間を持ち、いつの間にか増え続けたものの取捨選択を教えてもらいました。
    (『「どっちでもいい」をやめてみる』より)

    ものの手放し方、余白のつくり方

    画像1: 収納には余白を、込み合ってきたら見直しの時間|引田かおりさん「どっちでもいい」をやめてみる
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    収納には余白を。

    収納を考えるとき、いつも大切にしているのは「余白を持たせること」です。キッチンの横には扉つきの食器棚がありますが、器も重ねすぎないことで取り出しやすく。奥まで手を伸ばせるように配置し、すべての器がスタンバイ状態に。

    これから新生活を始める人には、一体何が必要でしょうか? 

    ごはんを食べるテーブルと椅子。中くらいのお鍋とフライパン。やかんは気に入ったものが見つかるまで、お鍋でお湯を沸かすとしましょう。

    まな板と包丁、小皿と大きめのお皿、ごはんにもスープにも使えるからボウルをひとつ。紅茶もボウルで飲むことにします。そんな風に「私には何が必要か」、空想するだけでワクワクします。

    でもこれは、今までの暮らしがあったから分かる最小限ですね。家の中を見渡すと、なければないで何とかなるものばかり。どれも決して最低限ではありません。

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    使用頻度の高い白い器たちは、取り出しやすい位置に。好きな器は、重ねたときの佇まいも美しい。季節によってしょっちゅう場所を入れ替え、より使いやすい配置を考えます。

    30代の後半だったと思います。「私はものを持ちすぎているから、これ以上買い物をしないで生きていこう」と決心したのです。

    今思えば、体も心も弱っている時期でした。そうしたら、ますます毎日がつまらない。楽しいことやウキウキすることさえも、地球のどこかの食べられない人や困っている人のことを考えて、罪悪感を持ってしまっていました。

    そんな経験から、「もしかすると買い物って、生きる力になっているんじゃないか」「生きているからこそ、あれが欲しい、これが食べたいと思うんだ」と気がつきました。

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    食器棚の対面の棚には、食材類のストックを収納。鈴竹の合わせかごの身とふたを分けて使い、中まで見渡せるように。

    20歳で結婚してすぐに子どもができたこともあり、何はなくても食べること、食べ物が最優先の暮らしでした。

    今こうしてものや服が大好きで、楽しみながら買い物をしている私に、夫がとても驚いています。我慢しているわけではなかったけど、今日の魚、今日のくだもののほうが大事な買い物だったのです。

    当時の私は専業主婦で、家庭を支えている自負はありましたが、やはり自分で自由になるお金はあったほうがいいと思いました。「それがなくても生きていけるもの」を買う自由は、どんな人にも必要なのです。

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    家を訪れた友人たちが、開くと驚くキッチンの収納。なぜなら写真に写っている部分はそれなりに詰まっていますが、その他は余白ばかりだから。定期的にチェックし、常に使うものだけを置くようにしておけば、掃除も取り出すのもラクチンです。

    楽しい買い物で、当然ものは増えていきます。コレクションする気も、執着もないと言っておきながら、私もかごやガラスの器があの量です。多すぎるものは、譲ったら喜びそうな人、大切にしてくれそうな人に使ってもらうのがいちばんですね。

    それにはボロボロクタクタになる前に、まだ使えるものをもらってもらうのが気持ちいい。普段は段ボールに器や服をまとめておいて、パン屋のスタッフたちが気ままに選べるように渡しています。それでも残ったら、寄付を受け付けてくれているところへ発送。それが私の、ものの循環法です。

    たくさんものを持つには、体力や気力が必要です。主人公はあくまでも「私」。ものに圧倒されたり、支配されたりする暮らしは、くたびれます。

    雲ひとつない空を見上げて、のびのびと深呼吸するような、いい空気が流れる家にするために、ぎゅうぎゅう詰めはやめたいもの。混み合ってきたら、見直しの時間。いつの間にか増え続けたものの、取捨選択の時間です。

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    寝室のウォークインクローゼットは、ふたりのオンシーズンの服とベッドまわりのリネン類を収めています。こちらも整理しやすいように、適度な余白を持たせて。オフシーズンの服は奥のフリールームのクローゼットに保管しています。

    「あなたの家を思い浮かべてください、それがあなたの頭の中です」と恐ろしいことを言った人がいましたが、あながち間違いではないと思います。ものに執着せず手放すと、新しいものが入ってくるから不思議です。

    スケジュールが真っ黒だと、どんなにやりたい仕事でも他の誰かに譲ることになりますよね。余白は余裕です。手放したスペースに何がピッタリはまるのか、ワクワクして待ってみることにいたしましょう。

    <撮影/濱津和貴>

     

    本記事は『「どっちでもいい」をやめてみる』(ポプラ社刊)からの抜粋です



    引田かおり(ひきた・かおり)

    夫の引田ターセンと共に、2003年より東京・吉祥寺にある「ギャラリーfève」とパン屋「ダンディゾン」を営む。さまざまなジャンルの作り手と交流を深め、新しい魅力を引き出し、世に提案していくことを大きな喜びとしている。著書に『私がずっと好きなもの』(マイナビ)、ターセンとの共著に『しあわせな二人』『二人のおうち』『しあわせのつくり方』(すべてKADOKAWA)がある。

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    『「どっちでもいい」をやめてみる』
    (引田かおり=著 ポプラ社=刊)

    『「どっちでもいい」をやめてみる』(引田かおり=著 ポプラ社=刊)|amazon.co.jp

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    「どっちでもいい」をやめて、人まかせにせず、自分の「好き」を優先させると、人生を気持ちよく歩けます。本書では、正直な気持ちを表現できるようになれるヒントを、文章と写真で紹介。引田かおりさんが選び抜いた器や洋服、長年集めたかご、ガラス、暮らしの工夫も必見です。



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